効果あり!
デート(仮)!
「仲良しになろう大作戦」は、只今絶賛継続中。
この作戦のコトは、ごく仲の良い数名しか知らない。
他のクラスメイトには未だ気付かれていない。
だから、もう少し調子にのってみることにした。
これまでは、登下校と休日の釣り、雨天の相合傘が主だったが、それに休日のデート(仮)などの項目も追加した。
流石にここまで追加すると、クラスメイトとの遭遇が多くなるのだけど、それでもなお気付かれていない。
マジで、どーゆーコト?
誠人との組み合わせが、いかに有り得ないのかというコトを思い知る。
努力の甲斐あって、さらに仲良くなることができた。
二学期の定期考査も、放課後ツーショットで勉強した。おかげでいい点数が取れた。あとは冬休みを待つばかり。
冬休みのイベントといえばクリスマス!
これまではワルソ仲間と過ごしていたが、今回からは違う。
とはいえ、どちらかの家に行ってパーティー!なんてことは、できるはずもなく。
そんな勇気があるのならば、もう少し彼氏彼女みたいな感じになっているはずなのだ。
が、どうにもヘタレ力が暴走してしまい、イマイチ思うような展開にはならない。
それでも、どうにかしたい気持ちはある、というか、むしろその思いは強い。
だから、
なにか心に残ることがしてみたい!
ということになり、クリスマスプレゼントを思いついたのだった。
当日。
目的地は隣町のショッピングモール。
無料のシャトルバスが発着する駅での待ち合わせ。
最早これはデートだ。
そう考えると朝も早いうちからお互い目が覚めてしまい、テンション上がりまくりなのである。
あらかじめ決めていた時間が近付き、
今から出るよ。
送信すると、
分かった。
と返ってくる。
そのままバス停へと向かい、バスに乗る。
20分程で待ち合わせの場所に到着。
まだ来ていない。
待つこと数分。
別路線のバスが到着し、ドアが開く。
降りてくる人の群。
その中に
「おまたせ!」
いた。
照れくさそうな笑顔で駆け寄ってくる。
「いこっか?」
「うん。」
これ、なんかいい!
思わず感激。
シャトルバスの乗り場へと歩きはじめる。
その途中、
傍から見たら彼氏彼女に見えるかな?見えたらいいな。
並んで歩いていると、そんなコトが気になってくる。
ヤバい。
ニヤケそうになってしまう。
ひたすら我慢した。
自分だけテンパっているのは何だか悔しい、と思い誠人の方に目を向けると…。
それ以上にヤバそうだった。
もう、こっち見る余裕すらないといった感じ。
目線が完全に泳いでしまっている。
誠人も同じやん。よかった。
と、思わず安心。
ギクシャクしながら歩いてゆく。
バス停到着。
年末も近いため、シャトルバスを利用する人は多く、人混みで溢れかえっていた。
しばらく待つと、バスが到着。
大型バスなので、定員オーバーとまではいかなかったけど、列の最後尾に近かったから、当然の如くシートには座れない。
吊革につかまり、揺られながら到着を待つ。
特に激しい渋滞もなく、ショッピングモールに到着。
バスを降り、並んで歩く。
最初に立ち寄ったのは宝石屋。
ショーケースを見ながら、
「これ可愛いね。」
「うん。っち、高っ!金とかプラチナっち、こげするんやね。欲しいん?」
「ううん。ただ、可愛いなっち思っただけ。」
「ふーん。」
ピアスのコーナーで、足を止める。
値段を見て、
「あ。これならなんとかなりそう。いる?」
「そーやね。欲しいかも。でも、まだ他の店も回ってみよーや?」
ということになり、一通り見てまわることにした。
服や靴、鞄なんかを見てまわったけど、そこまでピンとくるものが無くて、只今雑貨屋で物色中。
そこで見つけた、金でも銀でもない、それでいて金属アレルギーとか起こしにくい素材でできたブレスレット。
現実味ある金額のヤツだ。
なかなかいい感じのデザイン。
手に取り見ていると、
「気に入ったの、あった?」
聞いてくる。
「うん。これ良いね。」
答えると、
「気に入った?」
「うん。」
「じゃ、貸して?」
「へ?」
不意にそれをツマミ上げるとレジへ。そのまま精算を済ませてしまう。
呆気にとられていると、
「ほい。メリークリスマス。」
照れながら、プレゼント用に包装されたソレをわたされる。
「あ…ありがと。」
なんかもぉ!
涙が出るほど嬉しかった。
宝物がまた一つ増えた。
よし!今度はウチの番!
気合を入れて、何がいいのか考える。
確実に喜ぶのは釣具だろうけど、ここにそんなものは売ってない。でも、きっと他に何かいいモノあるはず。
見てまわっていると、
!
ニット帽が目に留まる。
たしか、冬も釣りしよったはず。なら、これ被ったら温いよね?これがいいなら、ネックウォーマーもありやない?
我ながら、なかなかいい考えだ。
サプライズのお返しをしたかったので、ひとまず何事もなかったかのように通り過ぎる。
で、
「ちょー、ここで待っちょって?」
わざとらしくなってしまったけど、そこはご愛嬌。
返事も聞かずに置いてあった場所へと向かう。
似合いそうな色を選んでレジへ。
そして、
「お待たせ!お昼にしようや。」
店を後にし、フードコートへ。
向かい合ってイスに座ると、
「はい!これ。」
恥ずかしさを誤魔化すため、オーバーアクション気味に差し出す。
すると、
「え…何?」
見事なまでに固まってしまう。
数瞬の後、
「あ…ありがと…何これ?」
どうにか立ち直り、受け取って聞いてくる。
「見てみてん。気に入ってくれたら嬉しいけど…」
ドキドキだ。
「どう?」
袋の中を見て、
「うわ!これ、いーね!温そうやん。」
想像していた以上に大喜び。
よかったぁ…喜んでくれた!
プレゼントした本人まで嬉しくなってしまう。
「誠人、今も釣り行きよんやろ?サブかろうっち思って。」
「たしかにサブいね。マジ嬉しい!大事に使う。」
嬉しさが手に取るように伝わってきた。
ひとしきり盛上ったところで昼食。
そういえば、こげなトコで一緒にご飯とか初めてやない?
勝手にテンション上げ上げで、内心はしゃぎまわる。
でも、それはお互いだったりして。
昼食を済ませ、しばらくお喋りした後、午後からの部開始。
やっていることは友達と来ている時とほぼ同じなのだが、相手が違うとこうも楽しいのだろうか?としみじみ思う。
流石、デート(仮)だ。
恐るべし。
このあともいろんな店を探索し、楽しいひと時を過ごす。
そしてボチボチ夕飯の時間。
これまでは、そんなコト気にせずダラダラと日付が変わるまで遊んでいたが、今は違う。
間に合うように帰る。
帰りのシャトルバスの時間はちゃんと調べてある。
同じ町だけど、バスの路線が違うので、二人でいられるのは駅まで。
既にバスは待機している。
ドアは開いていて、乗ってもいいのだけど、どうにも名残惜しくて離れ難い。
無理矢理話題を探し、一緒にいるための口実を作るのだが、ついに発車時間。
名残惜しさを振り切るため、「せーの」で別れ、乗り込んだ。
その瞬間、ちょっと泣きそうになる。
シートに座り、
楽しかったなー…デートっち、こげな感じなんやろーな。
互いにさっきまでのコトをモーレツに思い出していた。
どうにかして彼氏彼女になりたいな。そしたらもっと楽しいぞ!
とは、二人が同時に考えていたこと。
最高に楽しくて、思い出に残る一日となった。
台風です。