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チクホー・ゴースト・ストーリー  作者: Zee-Ⅲ basser
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仲良しになろう大作戦

バレたからにはもうちょい積極的になる!とは決めたものの、なかなかうまいこといかなくて…。

それでも少し近づけたかな?

 相合傘がバレた次の日。

 校区の違う小学校出身者が合流する、中学校近くの交差点。


 目標を確認。

 まだ気付かれてはいない。

 そっと背後から近づき、


「ま~こ~とっ!」


 ポンッと肩を叩くと、


「ぅわッ!!!」


 猛烈に驚きつつ顔を見返す。


「おはよっ!」


 挨拶をすると


「う、うん。お、おはよ。」


 ぎこちないながらも、ちゃんと返してくれる。

 なんとも嬉しいやり取り。



 これまでは遅刻寸前とまではいかないが、結構ギリギリに登校していた。

 しかし、今日からは少しだけ早く家を出ることにする。

 勿論、会いたいがための計画的犯行。


 嬉しくて、変なテンションになってしまいそうだが、おかしな行動にならないよう、注意しながら並んで歩く。

 この時間、なるべく長く味わいたい。

 ゆっくり目に歩くと、その速さに合わせてくれた。

 たまに重なる目線。その瞬間パッと逸らす、の繰り返し。

 意識してくれているのがモロ分かり。


 なんかいい!でったんいい!この時間がずっと続けばいーのに。


 とか思うけど、合流地点から学校までは大した距離じゃない。

 ゆっくり歩いてはみたものの、大した会話すらできずに到着してしまう。


 合流して学校に着くまでの間、知り合いはかなりいて、そのうちの何人かは声をかけてきた。にもかかわらず、誠人とのツーショットについてツッコむ者は誰もいない。

 思った通りである。

 これならしばらくはバレそうにない。


 明日からも毎日やってやろ。


 そう心に決め、一人微笑んだ。



 とまあ、登校時はこんな感じ。

 かなりの確率でツーショットになることができる。

 しかし、下校時は違う。

 互いに友達がいる状態からスタートするため、どうしてもそっちの付き合いを優先する場面が多くなってしまう。寂しいけど、断り続けるのも申し訳ないから、ちょっとだけ我慢する。

 運よく一緒に帰れた時は、飲み物を買って途中の公園でベンチに座ってお喋り。その後、家までついて来てもらうのが定番コース。勝手にデートと思わせてもらっている。




 休日。

 これまでなら確実にお誘いがあっていた。が、相合傘を見られて以来、その日遊ぶ集団に男がいると、最初から声をかけられなくなった。

 どうやら気を遣ってくれているらしい。

 有難いことだ。


 というわけで、やることが完全になくなった。

 なんとなく部屋でゴロゴロしていたけど、なんだか時間がもったいない。


 天気もいいし、こんな時は散歩やね。


 思いついたら即実行。

 外に出てもおかしくないカッコに着替える。

 目的地は、隣の小学校の校区にある、県道にかかる橋。

 以前、誠人と会った場所。


 今日は会えるかな?


 かなり期待しながら家を出た。

 ビックリさせるため、あえて連絡はしない。

 いないかもしれないと言っていたので、目的地までの区間で釣りができそうな場所は意識して見ておく。

 それでもいなかったときは、純粋に散歩だけして帰る。


 しばらく歩くと目的地が見えてくる。


 今日はおるかな?


 橋の下に釣り人発見。さらに近付くと…


 あっ!誠人!


 確認すると同時に跳ねあがる鼓動。

 ゆっくり歩いている場合じゃない!

 自然と小走りになって、


「誠人ぉ~っ!」


 手を大きく振りながら近寄って行くと、こちらに顔を向け驚いた表情になる。

 土手を駆け下り、誠人の元へ。


「釣れた?」


「ううん。」


「釣れたらいーね。」


「うん。」


 これまで何度かこの場所で釣りを見せてもらったのだが、魚の姿は未だ見たことがない。


 今日こそ釣ってくれるかな?


 期待に胸を躍らせながら隣に座る。

 しばらく黙々と投げては巻きを繰り返していたのだが、不意に、


「ねぇ。」


「ん?」


「長谷部さんもやってみる?」


 釣りをしてみないかと提案してくる。

 正直、面白そうだとは思っていたので、「ウチでもできる?」と聞いてみると、


「できるっち思うよ?」


 だそうで。


「んじゃ、やる。」


 教わることにした。


「とりあえずやってみるね。糸に指掛けて、こーやって、ここん時指離したら…飛んでいく。底まで沈めて、こーやってチョンチョンチョンっち。これの繰り返し。」


 一連の流れを見せてもらい、挑戦。

 初めて持つサオ。

 思っていたよりも軽い。

 初めてやるキャスティング。

 説明してもらったとおりにやってみると、飛んで行く感触がなんとも気持ちいい。

 ストレス解消の手段にはすごくよさそう。


 そんなことを考えつつ、黙々と繰り返す。

 無心になれる感じがまたいい、とか思っていると、


「上手いね。あとは釣るだけやん。」


 と言いながら微笑んだ。


 笑顔、いいな。



 それからもかなり粘ってはみたが、釣果の方は…ボーズ。

 最近、いよいよ釣れなくなってきているらしい。


 ま、そのうちどっちかが釣るやろ。


 いつか釣れるその日を夢見つつ、お喋りしながら帰ることにした。




 相合傘がバレたあの日から、こんな感じでアピールを繰り返している。

 お陰様で、だいぶ距離が近くなったように思う。

 が、油断大敵。

 自分だけが張り切って、空回りしているんじゃないかと思うと怖くなる。

 他の人に盗られてしまうのも怖い。

 初めて本気で好きになった人だから、どうしても彼女にしてもらいたいけど、照れがあったりとか勇気がなかったりとかで、イマイチ告白へと持ち込めない。

 なんとももどかしい日々が続く。


 ともあれ。


「仲良しになろう大作戦」は、まあまあ成功だったりする。


毎日暑い。

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