草原とお城
鳥の声が聞こえる……。うっすらと私は目を開けた。クレープ食べに行く約束していたことをすっかり忘れていた。みんな待ちくたびれているだろうな、と呑気なことを思いながら体を起こす。
「外……?」
辺りを見渡すとそこは、図書館ではなく草っぱらであった。のどかな景色が広がっている。ピクニックをするのにとても最適な場所で……と、そんなことはどうでもよくて、私が何故ここにいるのかという疑問を誰が答えてくれるだろうか。いや、きっと誰もわからない。さっきまで私は学校の図書館に居たはずである。変な本を開いてそれから……記憶がない。
「姫様!そんなところにいたのですか?!」
誰かが私に向かって“姫様”と言った。スーツを着ている女の子だ。年齢的には私とほぼ同じくらいだろう。この人は人違いをしているに違いない。きっとそうだ。
「王子様との大事な結婚式だと言うのに、突然いなくなるんですもの。さ、早く戻りましょう。みなさんお待ちですよ。」
「いやっあの、人違いだと思います。私は姫様でもなんでもなくて……ただの庶民ですよ。」
「姫様、頭でも打ちましたか?どこからどう見てもあなたは姫様ですよ。冗談をおっしゃっていないで早く行きましょう。」
「ちょっと待って……」
この女の子は私の意見を無視して、へんてこりんな馬車のようなものに乗せられてしまった。
「お城!?」
馬車が到着した場所は、それはまあ立派なお城であった。まるでグリム童話などに出てくるお城のようだ。
「さ、ウェデングドレスに着替えますよ。」
「はあ!?」
「王子様との結婚式なんですから当たり前じゃないですか。」
私は無理やりこの国の王子様と結婚させられるのか。それだけは勘弁してほしい。私はまだ高校生で、彼氏もいない。結婚だなんてまだ早い年頃なのだ。どうにかしてここから逃げ出さないと結婚させられてしまう。