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巫女姫と銀の  作者:
舞台『巫女姫と銀の獅子』
7/9

幕 間:とある神官の記録とキアランの記録

『マルディシオンとシシアに関する記録』 記録者:マルコス


248年 7月28日

五代目シシアが発狂。逃亡を試みたためアレスの心臓にて処理。すぐさま六代目のシシアを作成。


248年 8月10日

鎮めの儀式を終えても、六代目のシシアには何ら影響は出ず。しかも今までのシシアより聞き分けが良い。長く持つことを期待。後世のため、神官長の教育法を記録に残すべし。


中略


259年 9月15日

マルディシオンに異変有。本人の言によると、力がでないとのこと。マルディシオンも代替わりしなければならないのだろうか。しかし力が無ければ意味がない。継承を試みたことはないが、検討しなければ。もしくはそれに代わる力を作り上げることが必要である。


259年 10月9日

マルディシオンの継承が検討された。しかしただの人であってはならない。当代のマルディシオンに匹敵する強さを持った人物が必要である。後日闘技場にて選別を行う。


259年 12月24日

選別は終了。候補者は五名。その中でも有力なのは一名。だが若すぎる。継承は焦る必要もないので、成長を待つべし。



中略


266年 12月21日

五名の候補者の中から、シシアとマルディシオンが次代を選定。やはり有力だったあの若者が選ばれた。出身は北の国。それにより、次代マルディシオン最初の洗礼は北の国と決定された。


266年 12月30日

シシアの様子がおかしい。継承の儀式を前にして、気分が高ぶっているのだろうか。儀式は明日。用心のために張り番を置くこと。




* * *




ラズモアの記録 記録者:キアラン


266年 1月13日 ラズモアの体調:良好


本日から記録を再開する。

半ばシシアとマルディシオンに騙されたような形で呪いを受け継いだものの、ラズモアの意思の強さのお蔭か、彼は力を我が物とすることができたようだ。この力があれば抵抗勢力など恐るるに足らず。我々の土地も取り戻せるだろう。そして世界に安寧をもたらすことが出来ればと願っている。



中略


296年 1月5日 ラズモアの体調:戦を前にして少し気が高ぶっている様子


己の身は戦場で潰えるものだとばかり思っていたが、二人のお蔭でどうにか今日まで生き延びた。

しかし私はもう長くないだろう。そしてラズモアとシシアはあの時のまま、変わりない姿である。

果たしてこのままで良いのだろうかという迷いがある。先代のマルディシオンの最後を思い返すと、ラズモアが心配でならない。きっとシシアも同様に思っているのだろう。

幼子のように無知だった彼女は、ひたすら学び、今では人の上に立ち指導するまでの立場になった。知らなくていいこともたくさん知ってしまったはずだ。そして自らが行ったことの意味も理解したのだろう。戦場で我を失ったラズモアを見る目に、悲しみが宿るようになったのだから。

今思えば、彼女も不憫な娘だった。贄として意思を押さえつけられ、長い時を過ごしてきたのだ。そんな彼女が誰かに縋り、救いを求めたのは無理もないことなのかもしれない。


二人の生には終わりがない。苦痛と苦悩も永遠に続くだろう。だがそれではあまりに哀れだと思う。


しかしラズモアはそれで良いと言う。その決意は昔も今も変わっていない。心臓の在り処はシシアにも、誰にも漏らさず、決して使うなと。


マルディシオンから託された心臓は、どちらか一人しか殺せない。本来ならば完全な状態で使われるべき物。だが代々のシシアを殺すために削られてしまったので、今のラズモアを殺せるかどうかという量なのだ。マルディシオンから聞いただけなので、定かではないが。


シシアが死ねばラズモアを止められる者が居なくなる。そうなればまたこの世は荒れ果ててしまうだろう。

しかしラズモアが死ねば、彼女は一人きりで永遠を生きていくことになる。どちらも酷なことだ。


私は友としてラズモアの意思を尊重する。心臓の隠し場所は決して誰にも漏らさず、秘密にすること。

だが、もしも、万が一にでもシシアが心臓の在り処を突き止め、訪ねてくるようなことがあったら。


その時は心臓を渡してやって欲しい。



私による記録は本日をもって終了とする。


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