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第8話 竜王アジ・ダハーカ

 

 竜王ドラゴンロード


 それは全ての竜種(ドラゴン)、いや生物の頂点に立ち、天変地異を起こし、自然の摂理さえも捻じ曲げる事が出来ると言われている。そして人間界にもその存在は伝説として言い伝えられている。

 この北の大陸アスガルズのトルキア山脈の山頂付近にも竜王ドラゴンロードが棲んでいると言われている。


 だが、魔王アスモデウスが召喚した竜王ドラゴンロードは桁が違った―

 まずは大きさ。

 上位の竜種(ドラゴン)の大きさは最大で100メートル以上はあると言われている。そして竜王ドラゴンロードの巨体は上位ドラゴンの倍以上を誇ると言われている。

 だが目の前の存在はどう見積っても上位の竜種(ドラゴン)の10倍以上はある。

 そしてレベル。

 上位の竜種(ドラゴン)でレベル200前後。竜王ドラゴンロードはレベル300近くあると言われている。

 目の前の存在はそのようなレベルでは済まない事をその場にいる全ての者が悟った。

 そして何よりもその風格。

 強大な体躯に知性を感じさせる顔つきを持つ3つの頭、神々しく金色に輝く鱗、まさに神というべき存在。


 この光景を目の当たりにした皆がこの世に1頭のみ存在すると言われている竜神が降臨したと思ったのだ。


 それは間違いではない。

 魔神王デヴィルロード悪魔王デーモンロードが違うように魔界と人間界の竜王ドラゴンロードでは格が違うのだ。人間界での竜神に相当する実力がある。



 ▼

 竜王ドラゴンロードアジ・ダハーカ―


 アスモデウスが統治するアクゼリュス王国を守護する4体の竜王ドラゴンロードの1体。

 全長は約1,5キロメートル。「空を塞ぐ者」と言われるゴールデン・タイラント・ナーガの中でも最大級の大きさを誇る巨体を持つ。

 体内に持つ猛毒は凄まじく、吐く息だけで鋼鉄をも溶かす。その竜燐は神の合金(オリハルコン)以上の強度を持ち、魔神器ですら傷つける事は難しい。

 さらには巨体からは想像も付かないほどの俊敏さを持ち、あらゆる属性の竜の息吹(ドラゴンブレス)や最高位魔法、種類によっては究極魔法ですら使いこなす事が出来る。

 まさに竜王ドラゴンロードの名にふさわしき存在。


 そのような力を持つ竜王ドラゴンロードが何故、アスモデウスの従僕として従っているのか?それは―


 ▼

 2万年程前のアジ・ダハーカは既に竜王ドラゴンロードとしてアクゼリュス王国の外れにあるダマヴァド山脈に棲んでいた。そして山脈では絶対王者として君臨していた。

 だが時折、山を下りて領民に被害を加える事があった。その報告を聞いて出向いたアスモデウスに叩きのめされ、その圧倒的な力に永遠の服従を誓ったのだ。

 まあ簡単に言えば暇つぶしにやって来たアスモデウスに一撃で殴り倒されて従僕ペットになったのである。


 アジ・ダハーカのレベルは684。決して弱くなどない。魔界でも竜王ドラゴンロードの称号を持っている上、その気になれば人間界を滅ぼす事さえ可能な存在なのだ。

 ただ単にアスモデウスが強過ぎるだけなのである。



 ▼

「「「相変わらず、見目麗しゅうございます陛下。」」」

 アジ・ダハーカが3つの頭を下げる。

「うむ、よく来たな。」

 アスモデウスが頷く。

「それで今回はどのようなご命令でしょうか?」

 真ん中の頭が質問する。

「あそこの雑魚共があっちに居る蛇共を竜種(ドラゴン)だなどと言いよるのでな。本物の竜種(ドラゴン)を見せてやろうと思ってな。なんじゃ、迷惑だったか?」


「「「いえ、私達は陛下の忠実なる従僕ペットで御座います。陛下の命を聞き、実行する事を何よりの幸福と思っております。何なりとご命じ下さい。」」」

 3つの頭が更に器用に頭を下げ、ひれ伏したような体勢になる。

「それで陛下、ここは何処でしょうか?」

 右の頭が辺りを見回し更に質問する。

「ああ、ここか。人間界じゃ。」


「「「人間界!?」」」

 アジ・ダハーカは驚愕した。


 人間界だと?どういう事だ?別に我らが人間界に召喚された事を驚きはしない。何故なら我らが王であるアスモデウス陛下がお呼びになったのだ。何処へなりとも馳せ参じるのが従僕ペットの務め。

 だが、陛下が人間界に居ること自体が問題なのだ。陛下は魔界から人間界に移動する術を持っていないはずだ。

 地獄の門(アビス・ゲート)が開いたと言う事も考えられない。陛下が通り抜けられるサイズの地獄の門(アビス・ゲート)が開いた事があるなど歴史上聞いた事すら無い。

 それに地獄の門(アビス・ゲート)が開けばその反応は我らでもわかる。

 つまりは不可能なのだ。


 一体どう言う事だ?3つの頭全てが考え込み悩んでいるようだ。



 少しの間、アジ・ダハーカは考えたが、この異常な事態に全く見当がつかない。


「ふふん。考えておるのう。簡単な事じゃ、召喚されたのじゃ。どうじゃ?信じられんじゃろ?」

 アスモデウスが自慢げに話した。

「「「召喚ですと!!!」」」

 3つの頭が叫ぶ。


 召喚?召喚と申されたか?では人間界に陛下と同等の力を持つものが存在すると言う事なのか?

 だが人間界のレベルは低いと聞くが‥第一、陛下の周りにはレベル100以下のゴミしか居ないぞ。

 我らには理解が出来ない状況だ。


 アジ・ダハーカは驚きを隠せない。


「ははは、お前らの反応はおもしろいのう♪よし、もっと驚かせてやろう。あそこの神々の盾(イージス・シルド)の中に居るのが妾の主殿ぬしどのじゃ!」

 そう言ってゼフォンの方を指差した。

「「「あの人間がですか?」」」

 アジ・ダハーカが訝しげにゼフォンを見る。


 おい、どう見ても只の人間。しかもレベルはたったの53しかないぞ。まさか「能力隠蔽ステータス・ハイド」でも使ってるのか?

 いや、それにしては覇気どころか力も魔力も全く感じられん。


 更に理解が出来ない状況になり悩んでいる。


 その状況を見ながらアスモデウスは楽しそうに笑っている。

「予想通りの反応じゃ♪あの図体で真剣に考え込まれると凄い光景じゃな。面白すぎじゃ♪」

 随分と楽しそうである。



 ▼

 その光景をグエン平原にいる全てが呆然と見ている。帝国兵もゼフォンも。

 そして遥か離れた先から各勢力の「眼」が― 


 恐怖により逃げ出していた帝国兵達は足を止め、目の前の光景から目が離せなくなっていた。

 目の前に現れたのは伝説の竜神なのか?

 そのような存在を生贄や儀式も行わず、ただ呼び掛け、指を鳴らすだけで召喚し、その竜神を従える、あの存在は一体何者なのか。

 神を超える存在?ならば創造神という者なのか?疑問は尽きない―



 その光景を見ていた帝国兵達にアスモデウスが思い出したように気づいた。

「おお、忘れとったわ。どうじゃ、これが妾の従僕ペットであり本物の竜種(ドラゴン)じゃ。凄いじゃろ。」


 帝国兵は声も出ない


「何じゃ、つまらん反応じゃの。」

 アスモデウスはその反応が気に食わないようだ。

「お前ら妾が相手では逃げ出す事しかせんからな。じゃからこのアジ・ダハーカに貴様らの相手をさせる事にしたから頑張れよ。なあに妾よりも遥かに弱いから安心しろ。」



 今何て言ったんだ?―

 この竜神が今から俺たちの相手をする?ふざけるな…冗談じゃない!!

 帝国兵たちの頭に同じことが浮かび‥

「「逃げろ―!!殺されるぞー!!!」」

 平原全体に叫泣きや悲鳴が上がり帝国兵が逃げ出した。


「こら、逃げるな逃げんと戦ってみよ!」

 帝国兵はその言葉に耳を傾けずに逃げている。


「阿呆共が逃げられると思ったのか?「暗黒の獄(ダーク・ネビュラ)」」

 アスモデウスが右手をかざし、そう唱える。闇属性の究極魔法を発動させた―


 グエン平原一面を漆黒の闇の結界が包み込む。帝国兵達では結界を傷つける事すら出来ない。退路は断たれた‥


「これでもう誰も逃げられない。さあ命を懸けて戦え。そして妾を楽しませてみよ。」


 魔王がニヤリと嗤った―


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