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第7話 「色欲の王」

 

 上空で我々を魔王が見下ろしている―


 帝国兵たち全てが上空を見上げる。だが見上げるだけで誰も動こうとはしない。

 いや、動かないのではなく動けないのである。上空にいる圧倒的強者に見下ろされただけで威圧され恐怖により動く事が出来ない。


「さて、消すのは簡単だが主殿ぬしどのの記憶だけではこの世界の事を知るには情報が少なすぎるし、確かあのトカゲ、帝国軍とやらの将軍だったか?よしあいつにするか。」

 そう呟き地上に降り立った。


「周りのゴミ共が邪魔じゃな。「強欲の鎧(ケイオス・グリード)」よ喰らえ」

 すると漆黒の鎧がわなわなと蠢き出し形状を変えて行く。


 ズオオッ!


 漆黒の鎧から幾つもの巨大な影が広がり帝国兵たちに向かっていく。


 バツンッ、バグンッ、バクッ


 異様に大きな音が響いた。

 グアルドの周りにいた兵士たちは消えていた。いや兵士が居たはずの足元には血や手足などの肉片が転がっていた。そして上空には大きな影が広がっている。


 グチャ、グチャ、グチャ―


 嫌な咀嚼音が上空から聞こえる。上を見ると

「ひいぃっ!」

 グアルドは恐怖に顔を歪めるしか無かった。


 上空には「強欲の鎧(ケイオス・グリード)」から伸びて来た十数体の影、いや巨大な化け物達が帝国兵達を喰らっていたのだ。

 生きながら喰われている者も多数いる。阿鼻叫喚の地獄の光景だ。


 十数体の影―

 その全てが漆黒に染まっていた。形はすべて違う。竜であったり骸、魔神、獣等色々な魔物の頭の形をした何かが一瞬の内にグアルドの周りに居た数千人の帝国兵を飲み込み捕食したのだ。

 その影一体で100メートル以上の長さがある。それが13体―


 その鎧の名は「強欲の鎧(ケイオス・グリード)」アスモデウスの親友にして同格のゾディアック連合に所属する12人の魔神王デヴィルロードの一人「強欲の王」から贈られた鎧である。

 自由自在に形を変え、使用者の命令に忠実に従い、また攻撃、防御を自動的に行う。

「強欲」の名を冠するように敵を捕食し、相手の血肉、魂を喰らい力を奪う。そして使用者に力を与える究極の「魔神器」の一つ。

 更にはある物を作り出すことも可能なのである。


 ▼

 咀嚼音が終わり「強欲の鎧(ケイオス・グリード)」の食事が終わる。そして帝国兵達を睨み?威嚇している様にも見える。


 その光景に叫び、逃げ出そうとする者はいない。目の前の非現実的な光景、圧倒的恐怖に身が竦み動く事さえ出来ないのである。


 これは夢か?夢なのか?夢なら覚めてくれ!!


 この場にいるすべての帝国兵が同じようなことを願っていた。


「さて、これで邪魔なゴミは片付いたの。」

 アスモデウスがそう言ってグアルドを指さし

「おい、そこのトカゲ、ちょっと前に出ろ。」

 グアルドは狼狽していた。


 究極魔法―

 最高位魔法ですら到達する事が難しい。究極魔法はまさに神の領域の魔法。人間界では神や魔王クラスであれば使用可能である。だが発動には詠唱が必ず必要になるのだ。それを魔法名を唱えるだけで発動させる存在‥


 上空の存在は圧倒的すぎる。自分のレベルは114、帝国でも自分よりも強い存在は2人しかいない。

 第1軍指揮官の同じ階級の大将軍と帝国最強でもありヴェノア帝国皇帝である魔人メイガスグレゴール・エルド・ヴェノア1世のみである。

 自分にとって圧倒的強者である皇帝ですらレベルは172、上空の存在はさらに格が違う。いや最早、生物としての桁が違うとしか言いようがない存在なのである。

 どう低く見積もっても魔王や竜神などと言った他の大陸の最強の存在と同等か‥いや、それ以上なのだ。



 どうする?俺は殺されるのか?いや行かなければ確実に殺される。

「は、はいぃぃ!ただ今参ります!」

 グアルドが駆け足で前に出る。

「お前には教えて欲しい事がある。お前の知る限りのこの世界の情報全てじゃ。」

 アスモデウスが命令する。

「は、はい!何なりとご質問下さい!何でもお答えします!!」

 グアルドが大声で叫ぶ。


 ざわざわ― と帝国兵たちの声が聞こえる。

 司令官でもあり帝国軍の大将軍にして帝国でも5本の指に入る強者のグアルドがまるで命乞いをするように媚を売っているのだ。帝国兵達に動揺が走った。


「―おい、煩いぞ少し黙れ。」

 そう呟いたアスモデウスが騒ぐ帝国兵達に向かって左手を掲げる。そしてその手をぐっと握った。


 バグン!!!


 凄まじい音と共にその場にいた万を超える帝国兵たちが消えた。いやその中心に1メートルほどの球状の血の塊が浮いていた。消したのではなく、圧縮した。手をかざし握っただけで―

 血の塊がドパッと破裂すると津波のように大量の血液や帝国兵だったものが溢れ出し巨大な血の海を作る。

 血の大海にすり潰された肉片や臓物が浮かぶ。まるで地獄の血の川の様に―


 その光景を見た直後、誰も喋らなくなった。喋れば同じ目に合わされる事が理解出来たからだ。

 更に―


『黙って、大人しくしておれ。』

 そう告げる魔王を中心に波動が広がる。それはグエン平原全域に広がって行く―

 その言葉を聞き全ての者が即座に動きを止め、口を紡ぐ。全ての亜人、魔物、竜種(ドラゴン)ですら。


 いや、動きを止めたのではなく動けなくなったのだ。体どころか口でさえも。

 アスモデウスの言葉が引き金となって発動した最高位魔法「魂の呪縛(ソウル・バインド)」。


色欲の王(アスモデウス)」―

 アスモデウスの持つ唯一無二の職能(スキル)の一つ「色欲ザ・ラスト」この職能(スキル)は全ての精神系、操作系、能力ステータス異常を使用可能であり、その全てを無効に出来る究極の職能(スキル)である。


 ▼

 アスモデウスはグアルドに近付き命じる。

「跪け、今から貴様の記憶を覗く。動くなよ。」

 グアルドは即座に跪いた。そしてアスモデウスはグアルドの頭掴み「記憶閲覧メモリー・リード」を発動させた。

 数分の時間が掛かったが、完了したようだ。


「成程、貴様は色々と知っていたようじゃな。感謝するぞ。」

 この世界の事は大まかだが大体理解した。とりあえずここは北の大陸か。中央大陸には闘神、西には魔王?東には竜神とかも居るのか。これで少しは楽しめそうだな♪

 アスモデウスが嗤う。



「あの、私はお役に立てましたでしょうか?」

 グアルドが怯えながら質問する。

「ああ、十分役に立ったぞ。礼は言っておく。だがお前は妾の主殿ぬしどのを散々弄ってくれたようだし許されると思ったのか?しかし、お前が居なければ妾の召喚もなかったのも事実だしな。」

 アスモデウスは少し考えたが‥


「―だが死ね。」

 そう呟き、グアルドの頭を掴んでいた手に力を入れる。

「え?ぶぺっ!」


 グシャッ!


 アスモデウスはグアルドの頭を握りつぶした。頭が潰れ脳漿を垂れ流しながらグアルドの死体が地面にベチャリと横たわる。


『よし、お前らもう動いてよいぞ。』 

魂の呪縛(ソウル・バインド)」は解除され、帝国兵たちは動けるようになり安堵するが、その直後に絶望の言葉が放たれた―


「さて、今から皆殺しにするから抵抗しろよ。まあ無理だと思うが妾を少しでも楽しませてみよ。」

 アスモデウスが嗤ってそう言い放つ。



 ▼

「「「ひいい!」」」

「「「逃げろ―」」」

「「「邪魔だ!!どけよ!」」」

 恐怖が伝染し10万人を超える帝国兵たちが蜘蛛の子を散らすようにトルキア山脈側に向かって逃げ出す。

 無理だ。全員でかかっても勝てるわけが無い。まして抵抗なんて出来る筈も無い。逃げなければ。いや逃げ切れるのか?帝国兵達は同じようなことを考えていた。


 一緒に逃げ出すヒドラを見て

「おい、お前ら竜種(ドラゴン)なんだろ。竜種(ドラゴン)ならば少しは抵抗でもしてみろよ!!あそこのパイロヒドラを見習え!!」

 帝国兵の怒号が逃げ出すヒドラたちに向けられた。しかしヒドラは必死に逃げる。本能がここに留まる事を拒否しているのだ。逃げなければ死ぬと。

 確かにパイロヒドラは動かなかった。魔法は解除されているが動かない。だが抵抗する気も無く、只死を待つだけのようにその場で微動だにしない―


 ▼

「おいおい、抵抗すらなく逃げるだけだと?しかもあの蛇が竜種(ドラゴン)だと?」

神の眼(プロビデンス)」を発動させる―


「ああ、確かに竜種(ドラゴン)のヒドラか。レベルは大体60台、あの動いてない3ツ首の奴が94か。人間界ではあれが竜種(ドラゴン)ねえ。笑わせる。」

 アスモデウスは呆れていた。


「あっ!良いこと思いついた♪」

 そう言って嗤った。

「妾の呼びかけに応え、出でよ妾の忠実なる従僕よ!」

 アスモデウスが叫び


 パチンッ!


 指を鳴らすと巨大な魔方陣が展開された。


 魔方陣からいかずちが走り、爆発を起こし、巨大な衝撃波を生む。アスモデウスが召喚された時より小規模だが数千人の帝国兵を巻き込み吹き飛ばした。

 魔方陣を巨大な煙や砂塵が包み込んでいた。


 そして煙が晴れてきた。そこには山のように巨大な影がある。山を包み込んでいたものが全て晴れると、そこには蜷局を巻いた巨大な3ツ首のヒドラ?が居た。

 だがサイズが圧倒的に違う。全長1キロを軽く超えるであろう金色の鱗に覆われた3ツ首の蛇竜ナーガがそこに居たのだ。



 名前 アジ・ダハーカ

 種族 竜種(ドラゴン) ゴールデン・タイラント・ナーガ 

 階級 竜王ドラゴンロード

 レベル 684


 アスモデウスは召喚したのだ。魔界の竜王を―

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