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第6話 召喚されし真の魔王

 

 魔法陣が光る。いや光がだんだんと広がって行く。


「何だこれは!?」

 グアルドがまたも驚愕する。光りがだんだんと広がり、巨大な魔方陣が出来上がって行くのだ。


 これは召喚魔法じゃなくて広域攻撃魔法の発動か?見た事も聞いた事も無いぞ。

「やばいな。退がれお前ら!!」

 ヒドラ達に指示を出し後退する。


 魔法陣は広がり300メートルほどの方円を作った。ちょうどゼフォンの魔力が放出された範囲である。

 グアルドを含め帝国兵達は警戒していた。何の魔法が発動したのか分からないからだ。


 ゴゴゴゴゴゴゴ‥


 大地が揺れる。魔法陣が凄まじい光を放ち光が空に放出される。

「「「え?」」」

 帝国兵たちが上空を見た。空が血のように真っ赤に染まっていた。そしてだんだんと暗くなってきたのだ―


「おい、まだ夜どころか夕方にもなってないぞ」

「何だこの空は気味が悪い」

「ヤバいんじゃ無いのか?逃げなくて良いのか?」

 帝国兵たちに動揺が走る。


「お、おい空が!」

「「「!?」」」

 闇がさらに増してきている。上空を見ると太陽が欠けていた。日食が始まったのだ―



 ▼

 太陽が完全に隠れ戦場を闇が支配する。魔法陣が更に光りを増し大地の揺れが大きくなり地面が裂ける。


 コイツはやばい。グアルドは即座に行動に移る。

「そいつを殺せ!!」

 全軍に号令をかけ、ゼフォン目掛けて仕掛けようとした。


 バリイィィィィィィ!!


 魔法陣に全てが弾かれる。グアルドもヒドラも魔法も投擲武器も全てが―


 そして上空にも同じ大きさの魔法陣が現れた。上下の間からいかずちが走り、凄まじいエネルギーを放出する。


 これは広域攻撃魔法か?こんなのある訳が無い。人間の魔法にしては次元が違いすぎるぞ。逃げなければ。

「全軍退避ィィー!!!」

 グアルドが叫び帝国兵の全てが逃げ出した。


 魔法陣に集まった凄まじいエネルギーが収束されて行く。そして魔法が発動された―


 ▼ 

 魔法陣から放たれた光は凄まじい衝撃波を放ち嵐を呼び戦場を駆け巡った。レベルの低い兵士は嵐に巻き込まれ吹き飛ばされて行った。だがレベルが高いグアルドやヒドラ達には問題が無かった。


「損害報告は?」

 グアルドが側近に聞く。

「見た所、近くにいた殆どの者が嵐に巻き込まれましたが損害は数千かと。」

 側近がそう報告する。

 数千か。確かに15万以上いる帝国兵からしたら大した損害では無いが、たった一度の魔法で万近くの兵が巻き込まれ数千の死者が出たのだ。たまったものではない。

「ささやかな抵抗何て可愛い物じゃなかったぞ。流石に肝が冷えたぞ。」

 グアルドは狼狽を隠せなかった。久しぶりに冷や汗をかいた。


 空は先程の闇よりは明るくなった。だが、未だに血のように真っ赤に染まっている。

「空に、何か居るぞ!!」

 帝国兵が叫ぶ。



 それは魔法陣中心の20メートルほど上空に居た。まるで言葉には例えられないほどの存在。

 金色の瞳に風に揺れてなびく深紅の美しく長い髪、黒曜石の様に美しい2本の角、妖艶な体のラインを強調する宝石や宝珠がはめ込まれた妖しい輝きを放つ漆黒の鎧。背中から生える竜種(ドラゴン)の翼に、悪魔の尻尾。まるで完成された芸術品の様な美女がそこに居たのだ。

 その場に居た全員がその女神の様な美しさに見とれ、同じ事を思った。


 あれは危険だと―


 ▼

 瀕死の状態のゼフォンが上空を見て己が召喚した存在を見る。鑑定士アプレイザー職能(スキル)が無くても召喚者には己の喚び出した召喚獣のステータスを確認する事が出来るのだ。


 名前 アスモデウス

 種族 魔神デヴィル  

 階級 魔神王(デヴィルロード)

 レベル 1,552

 職能(スキル)色欲ザ・ラスト」 「???」



 この日世界は震撼する― 





 魔王―


 人間界では世界を恐怖に陥れる強大な力を持つ邪悪な存在。長い歴史の中で魔界より何度も現れ世界に混乱に招いてきた。その度、竜神や闘神、または人間の勇者により討伐された事もある。

 そして現在も西のアルバティア大陸を支配している魔王が存在している。

 人間界での魔王は魔神(デヴィル)ではあるが悪魔王デーモンロードの事を魔王と言う。魔界では中位魔神にあたる存在だが、人間界では圧倒的戦闘力を誇る恐怖の存在。

 魔神(デヴィル)は最低でもレベル150以上はあるのだ。現魔王もレベルは400を超える。


 しかし今回人間界アルガルズ大陸グエン平原に召喚されたのは真の魔王「魔神王デヴィルロード」長い歴史の中で初めて召喚されたのである。




 ▼

 その存在に世界中の力ある者達が気づき驚愕する。


 東の大陸の竜神が

 中央大陸の闘神たちが

 南の大陸の妖精王が

 西の大陸の魔王が



 しかし中央大陸の黒衣の男だけは嗤った…



 ▼

「ここが人間界か。」

 魔王アスモデウスが口を開く。

 そして辺りを見回す。

「ほ~。10万以上はおるか。とりあえず見える範囲の測定をしとくかの」


 最高位魔法の一つ「神の眼(プロビデンス)」を発動する。


 鑑定士アプレイザーの使う鑑定眼(スキャニング)は個別の能力ステータスを知る事が出来る魔法だが(使用者のレベルにより知る事が出来る情報が変わってくる。)、「神の眼(プロビデンス)」この魔法は感知範囲全体の能力ステータス(対象の魔法、属性、弱点を含む全ての情報)を知る事が出来る。

 更に感知出来る範囲は使用者のレベルにもより変わってくる。桁違いのレベルを誇る魔王アスモデウスの場合は半径1万キロでも可能となる。

 相手の能力ステータスを知る事が出来るだけ。では無く、この世界では情報が大事なのだ。誰でも使える訳ではない。

鑑定眼(スキャニング)」や「千里眼クレアボヤンス」を使う事が出来る職能(スキル)鑑定士アプレイザーは貴重な存在なのだ。

 まして「神の眼(プロビデンス)」に至っては最低取得レベルが200を超える。使用出来る存在が人間界では数える程しか居ないのだ。


 ▼

「なんじゃ、この雑魚共は。話にならんぞ。手前のトカゲで114、山の頂上付近の竜種(ドラゴン)で254程度か。ゴミしかおらん。」

 ふう、とため息を吐く。

 そして地上の魔方陣を見下ろす。


「あの者が妾を召喚したのか?信じられんな。レベル53しかないぞ。奇跡でも起きたのか?」


 魔王でありレベルが1,552である自分を召喚した存在なのだ。たとえ召喚時にミューテーションが起こったとしても最低でもレベル700以上は必要になってくるはずだが、どういう事じゃ?

「まあ良い。それよりも早くしないと死んでしまうな。せっかく暇つぶしに来たのじゃ流石に死なれては困るぞ。魔界にとんぼ返りなんぞ絶対嫌じゃ。」

 地上に降りてゼフォンに近づく。


「骨折数十か所、内臓の損傷、破裂にこれは毒か?あと魔力回路に異常があるな。まあこの程度なら何も問題ないな。」

 ゼフォンに向かって手をかざし高位治癒魔法「完全なる治癒パーフェクト・リカバリー」を発動させる。

 ポウッとゼフォンの体が淡い光に包まれた。

 一瞬でゼフォンの傷が治り、骨折どころか損傷した内臓、「魔薬」による毒、そして魔力回路の異常全てを一瞬にして治療してしまった。

 ゼフォンは起き上がり、目の前の魔王を見上げる。


「初めましてじゃの。妾は魔王アスモデウスじゃ。今後とも宜しくな。主殿ぬしどの。」

 そういってゼフォンに微笑みかけた。



 ▼

 ゼフォンは呆然としていた。


 自分が喚び出した存在「魔神王デヴィルロード」。死にかけていた状態でステータスを見た時は夢だと思った。

 しかし、傷が治り完治した状態で目の前の圧倒的な存在を感じた今、それは夢では無かったと確信した。

 だが何故か恐怖は感じない。


「ほう。妾を恐れず真っ直ぐ見つめておるな。肝が据わっている。流石は我が主じゃ。」

 アスモデウスは感心している。

「主?どういう事だ?確かにあんたを召喚したが代償に命を捧げたはずだ。大体、生贄も無しに魔神(デヴィル)は召喚できないはずだ。」

 ゼフォンが質問する。魔力を使えないゼフォンでも、それ位の事は常識として知っている。


「対価に主殿の命を捧げる?うーん、ちょっと頭の中を見せてもらうぞ。」

 そう言ってゼフォンの頭に手を乗せ魔法「記憶閲覧メモリー・リード」を発動させる。

 その間約1分―



「―成程、そういう事だったか。ハハハ。面白いのう♪これで良く妾を召喚できたのう。」

 アスモデウスはゼフォンの記憶を覗き、高らかに笑った。そして

「ん?何じゃボーっとして、主殿ぬしどのも何故か知りたいのか?」

 コクリとゼフォンが頷いた。

「良かろう。まずは今回の召喚の生贄じゃが、すでに支払われておる。対価は10万の魂。この戦場で死んだ者達のな。そしてあとは奇跡としか言いようが無いな。うん奇跡じゃ。」

「奇跡?」

 ゼフォンには納得がいかない答えである。

「そうじゃ、普通に考えたらまず妾を召喚する事など出来ない。それほどの実力者は人間界にはまずおらんじゃろう。確かに下級、中級の魔神(デヴィル)位なら大量の生贄と上位の召喚師(サマナー)が百人近くおれば可能じゃが、妾の場合はたとえ何千何万の召喚師(サマナー)を動員しようが不可能じゃ。多分、主殿ぬしどのは先程放出された己の内に長年貯まっていた魔力の放出が関係あるとか思ってるんじゃろ?残念じゃが、その程度の魔力では下級の魔神デヴィルすら呼び出すことは不可能じゃ。」

 そう言い放った。

「この世に絶対は無い。“ありえない事なんてありえない”という言葉があるしな。まさに奇跡が起きたのじゃ。それで納得しておけば良い。」

 アスモデウスが諭す。


 ―今回の召喚は誰かが仕組んだ跡がある。だがこの事は今は告げない方が良かろう。主殿ぬしどのは魔法には疎いようじゃからな。詳しい事は後で考えるとするかの。



「そうそう、あと契約は成立しとるから今から主殿ぬしどのの願いを叶えるとするか。結界を張っておくから出てはいかんぞ。まあ主殿では破る事すら出来んと思うがのう。「神々の盾(イージス・シルド)」!」

 そう言って一瞬にして究極防御魔法である神々の盾(イージス・シルド)を行使し、ゼフォンを包み込む結界を張った。

そしてアスモデウスは竜の翼を広げ空中に飛び立った。




 上空30メートル地点に停止し、帝国兵たちを見下ろし魔王が嗤う。

「さあて暇つぶしの始まりじゃ♪」


 魔王にとっては只の暇つぶし。だが帝国兵達にとっての地獄が今始まる―






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