序章 魔王様喚ばれる
今回が初投稿になります。稚拙な文章かもしれませんが楽しんで頂けます様日々精進していきたいと思いますので宜しくお願いします。
ここは魔界――
人間界では地獄とも言われる魔神や悪魔達が住む世界。
そして人間界とは比べものにもならないとても広大な世界である。
その魔界の4大陸の1つトロメーア。
そこに魔神王アスモデウスの支配するアクゼリュス王国がある。
その王都ダイオスの万魔殿の玉座に魔王アスモデウスは腰を下ろしていた。
深紅に輝く艶やかな長い髪を靡かせ、その金色の大きな瞳は吸い込まれそうになるほど美しく、綺麗でシュッとした鼻筋 、魅惑的な唇、黒曜石の様に美しい2本の角を生やし、背中から生える立派な竜種の翼に、魔神の尻尾、そして抜群のプロポーションを誇る妖艶な体のラインを強調する宝石や宝珠がはめ込まれた妖しい輝きを放つ漆黒の鎧を纏った――まるで完成された芸術品の様な美女がそこに居た。
それがこの物語の主人公である魔神王アスモデウス――
その周りには側近の大臣や将軍、そして世話役の侍女達が控えていた。そして侍女を含む全ての者が強力な力を持つ魔神である。
「なあ、何か良い事ないか?」
ふとアスモデウスがいつものように口を開く。
「我らにとっては陛下にお仕え出来る事が何よりの幸せに御座います。」
宰相にして悪魔王の称号を持つ魔神アガレスがそう答える。そして他の者達もその言葉に賛同するように頷いた。
「いや、お主らに良い事じゃ無くて妾にとってじゃ、妾に!」
アスモデウスがそう言い放ち「ふぅ」とため息をつく。
このやり取りをうんざりするほど続けているのじゃ、毎日、毎日もう数千年も。
口を開けばこの言葉しか出ない。もうこれが口癖になっているのじゃ。
あーもう!妾は暇なのじゃ、とてつもなく暇なのじゃ!
魔神王アスモデウス―
アクゼリュス王国を支配する魔王にしてゾディアック連合が誇る魔神王の一人。
ゾディアック連合とは魔界3大勢力の一つであり、トロメーア大陸の覇権を握る12人の魔神王により統治されている連合国家である。
アスモデウスはその序列3位に位置する魔王である。
現在、ゾディアック連合に戦争を仕掛けてくる国は居ない。同じ3大勢力であるアンテノーラ大陸の「エデン帝国」、カイーナ大陸の7人の災厄の王の連合国家「ヴェンディダード」の2国とは3竦み状態であり、もう1万年以上、膠着状態が続いている。
そしてアスモデウスには優秀な部下が多数居る為、国内の内政、治安に何も問題無く、恐怖で支配する他の魔王達と違って名君として民達から崇められているのである。だから反乱も起こらない。
部下の魔神達の謀反に至ってはアスモデウスの実力を知っている者が起こす事自体あり得ない。魔界でも強さの桁が違うのだ。
連合に参加しているので勝手に戦争を起こす事も出来ず、国内も何も問題無し。…本当に何もする事が無い。まさにため息が出るほど暇であった。
はぁ、勝手にエデンやヴェンディダードの奴らと戦争なんかしたらサタンの奴は絶対キレる。普段は冷静だがキレさせると洒落にならない奴じゃからな。これは無理じゃな。
ストレス発散の「魔王組手」も先月終わったばかりであと5年は先か…つまらん、退屈すぎるのじゃ!
「魔王組手」とは3大国家の膠着状態により大規模な戦争が無くなり、退屈を持て余す魔王たちの為にゾディアック連合の盟主である魔王サタンが考案した模擬戦である。
但し、本気では無く、あくまで「組手」本気で戦う事は禁止されている。
5年に一度「魔王組手」を希望する魔王達がトロメーア大陸中央にあるマカバイ平原に集結し模擬戦を行うのだ。
何故5年に一度なのか?それは「魔王組手」は魔王達にとっては本気では無く、あくまで模擬戦にしか過ぎない。だが、トロメーア大陸に住む民達にとっては只事では無い。
その日には必ず「魔王警報」が発令される。魔王達が戦えば本気ではなくとも戦いにより発生した衝撃波により地震や嵐などの天変地異が発生し、大災害が起こるのだ。
各魔王達の側近により防御結界が張られるが完璧に防ぎきれる訳ではない。死者が出る事はあまりないのだが、その戦いの余波による被害は領民達にはたまったものではないのだ。故に5年に1度しか行われない。
それでも本気で戦えないアスモデウスにとっては一時の退屈しのぎにしかならなかった。
昔は良かったのじゃ、魔神王になるまでの数多の戦い、そして人生の中で唯一の敗北…
敗北はしたが、3万年以上生きてきた中での最強の存在との戦いであった。――あの時は最高に楽しかった。近年?で言えば勝負はつかなかったが1万年以上前のヴェンディダードの「雷帝」との戦い以降、「魔王組手」以外の戦闘行為を行っていないのじゃ、ちっとも楽しい事が無いわ。
ならば国など投げ出し、野に下って放浪の旅でもするか?と思う事もあったが、妾はこれでも一応責任感はあるのじゃ、ゾディアックに所属する各魔王達の統治方法に関しては各自に委任されているため目に余る場合を除いて領民を虐げたり、苦しめる事も自己の判断で行われている。
妾以外の魔王の数人は最悪、凶悪な性格の阿呆もおるからのう。
その魔王達が妾に代わり我が国を統治した場合、部下や領民が危険にさらされてしまう事になると思われるので国を投げ出すことは出来んから困ったものじゃな…
そんな事を考えながら毎日を過ごす事がアスモデウスの日課になっていたのだが、今日はいつもと違った――
「あーあ。本当に何か良い事ないかのぉ?ん?――これは…何とっ!?」
突然、アスモデウスの頭上が輝き、魔法陣が展開された。
「馬鹿な!?城の防御結界は完璧なはずだ!!――まさか、破られたのか?」
アガレスや側近達が驚愕の声を上げる。
「結界は無事です。何も問題ありません!」
側近の1人、上位魔神のエリゴスが即座に確認し報告する。
「ならば何故このような状態になるのだ!――あっ!?」
慌てふためく側近達を尻目に魔法陣の光がアスモデウスを包み込んだ。
「――早く!陛下をお守りするのだ!!」
側近達が魔法陣に近づこうとするが触れる事すら出来ずに弾かれてしまう。竜種すらも凌ぐ、圧倒的な能力を誇る魔神が手も足も出ない程の強力な魔方陣のようだ。
「「陛下!!」」
側近達が混乱しながらも必死に叫ぶ。
「落ち着かんか、お主ら。」
アスモデウスは冷静に答え、そしてとんでもない言葉を側近達に告げた。
「これは攻撃魔法では無く召喚魔法じゃ。どうやら妾は喚ばれたようじゃの♪」
そう言って嬉しそうに笑った。
馬鹿な!?陛下を召喚だと?…魔界から人間界に悪魔や怪物が召喚される事はある。確かに魔神が召喚された例も多数あるが精々、中位クラスまでだ…
それが上位どころか最高位の…神にも等しい存在であらせられる魔神王のアスモデウス陛下を召喚するなど聞いた事すら無いあり得ない話だぞ!
同じような事を考え、側近達の頭の中は大混乱していた。アスモデウスも何かを思案していたが、その様子には混乱など無く、このあり得ない状況を嬉々として楽しんでいるようだった。
アハハハハハハ!やった!やったぞ!これで退屈凌ぎが出来るのじゃ!人間界なら暴れても誰も文句は言うまい。良い暇つぶしになりそうじゃ♪
光りに包まれたアスモデウスが魔法陣に吸い込まれていく。
「お主ら、妾はちょっと人間界まで遊びに行ってくるぞ♪」
アスモデウスはそう嬉しそうに告げて魔法陣と共に消えた。
その場に居た側近達は誰も居ない玉座を見つめて呆然と立ち尽くす事しか出来な無かった――
序盤の方を少しづつ改善していきます。読みづらく申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。