第3話
一話と二話を足した位の大ボリュームになってしまったorz
まぁ、お楽しみ下さい。
樹海を走り抜けた俺達の目の前に、天を衝く巨躯の大鬼が待ち構える様にして立っていた。しかし、その目には既に正気は無い。
2つの頭に、四本の腕。目測だが体長は50メートル位だろうか。上の2本の腕で弓矢を構え、残りの手にはそれぞれ刀が握り締められている。
──だが、なんだ? この拭いきれねぇ違和感は……?
俺はもう一度リョウメンスクナの伝承を思い返してみる。そして、ふと思い出した。言い伝え通りならリョウメンスクナの手足の合計は八本。しかし、目前の鬼は両手両足を足しても六本にしかならない。
「……あぁ、成程。こいつ"成らず神"か」
"成らず神"
簡単に言えば、中途半端な状態で降臨した神の事を指す。完全な姿で出現したときに比べ、遥かに弱い。それこそ、人の手でも討伐出来る程に。
思わず舌打ちする。久し振りに骨のある相手だと思っていたが、これでは拍子抜けだ。正直、やる気が失せる。
「暴れてる理由は十中八九〈瘴気〉のせいだろうけどな」
〈瘴気〉
1000年以上前から全国各地で発生している謎の怪奇現象。妖怪、神を問わず正気を失わせ暴走させる。最も、産まれたての妖怪や無名の神には初めから理性など無いのだが。
「さっさと片づけるか」
「……GAAAAAAAAAAAA!!」
俺の呟きが癪に障ったのかは定かでないが、スクナが威圧するように咆哮を上げ大気を震わせる。そしてどこからともなく現れた矢を番えて素早く打ち出した。それに対し俺は愛刀を逆袈裟に振って矢の軌道を完全に逸らす。
「へぇ、矢は神力を固めて作ってるのか」
ならば矢が突如出てきたのも頷ける。などと冷静に観察していると、スクナが第二矢を打とうとしてるのが視界に入る。
「やれ、久遠」
無言実行。長年の相棒は俺の指示をパイプを通じて的確に行った。高密度に圧縮された神力の砲弾が矢を打つのよりも早くにスクナの手に命中し、標準があらぬ方向へと向き矢が明後日の方向に飛んでいく。
「GAAAAAAAA!!」
飛び道具では無理だと悟ったのか巨大な身体には似つかぬ速度で接近し、手に持つ刀を叩き付ける様に振り下ろした。
俺は予想以上の俊敏さに少し驚くが、まだ許容範囲内。振り下ろされた刀を避ける事は容易だったが、敢えて受け止めた。それも、片腕で。
「──!?」
流石に防がれるとは思って無かったらしく、驚いている様子だった。俺はそれを意図的に無視して己の中に宿る膨大な量の神力を解き放つ。その量は"成らず神"とはいえスクナの総量を遥かに上回り、後ずらせる程だった。
「さて、俺はお前が"成らず神"だと分かった時点で用はねぇ。次で終わらせる」
俺はここで初めて愛刀を構えた。その構えは、上段。
変化は劇的だった。
俺から溢れ出る神力の量が一段と増し、取り巻いていた風が手の付けようのない暴風と成し辺り木を薙ぎ倒し始めた。刀身に纏わせていた神力は臨界点を超え、青白い光を放っている。
スクナは身の危険を感じたのか、逃げようとしている。が、もう遅い。
「望月一刀流」
壱の太刀
「《剛墜》」
斬ッッッッ!!!
音速を優に超える速度で振り抜かれた愛刀から生じた極大の斬撃はスクナの持つ全ての武器を容易く切り裂き直撃した。
一刀両断。正しくその言葉が似合うであろう一撃は確実にリョウメンスクナを仕留めていた。ズウゥゥン、という音と共に鬼神が崩れ去るのを確認した。地上に降臨するのは分霊の様な存在で、殺されると本体の居る高天原に還っていくのだ。
「……帰るか」
「待て、人の子よ」
呼び止められた。誰に? それは言うまでもなく、正気になったスクナである。
「高天原へ還る前に名を教えてくれぬか?」
「あぁ、いいぜ。高天原で俺の名前を広めてくれるならな」
「約束しよう」
「おいおい、マジかよ」
「鬼は嘘が嫌いだ」
「いや、知ってるけど」
冗談で言ったつもりだったんだけどな、と内心でぼやくが今更撤回すると更にめんどくさい事になるのは目に見えているので素直に名を告げる。
「俺の名前は望月 玲央。周りより少しばかり異常な退魔師だ」
やはり戦闘描写は難しいですねぇ……(汗
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実はですね、頭の中ではここまでしかイメージ出来て無かったんです(爆 だから、次話の投稿がいつになるか分かりません。ですので、コメント欄にて「こんなネタはどうだろうか?」というのも受け付けています。……他力本願な作者で非常に申し訳無いですm(_ _)m