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六話

キャンプが終わって季節は秋へ近づく中


「あわわわわわ」


俺は一人あたふたしていた


「いつものことながら今度はどうした?」


呆れ気味にルーキーが声をかけてくる


「実戦授業がそろそろ終わる……」

「ん?あぁ、そういえばそうだな」

「冗談じゃない!」

「……何がだ」


いぶかしげな視線は無視する


「実戦授業が終わればもうポイントは稼げない、ということはそれまでにシルバーランクになる必要があるということになる」

「そうだな」

「俺のランクを言ってみろ」

「ブロンズだな」

「はぁ……」


実戦授業はそれなりの頻度であったが、成績が振るわずいまだにブロンズのままだった

夏のキャンプで少しは稼いだと思ったが足りなかったらしい


「くそーっ、さすがに勝率2割程度じゃシルバーは無理かぁ」


そう、全然勝てないのだ。お陰でポイントがあまりたまらない


「なるほど、リミットか」


納得したような顔のルーキー、胸に輝く銀色のバッジが恨めしい


「何かワンチャンス無いかな……」

「あるじゃないか、秋の総仕上げの新入生大規模演習が」

「あぁ、あれか。そんなにポイント稼げるっけ?」

「ポイントうるさい割には調べてないんだな」


またまた呆れた感じのルーキー


「そりゃ、夏にはおさらばしてるつもりだったからな」


だが、気持ちを切り替えなければいけない。秋の演習が最後のチャンス、逃せば来年も

ここに通うことになってしまう。それだけは回避しなければならない


「よし!これでワンチャンス狙うぞ!こっちには勝率7割強を誇るルーキーがいるからな、負ける気がしない」

「他力本願か」

「協力プレイだよ、協力プレイ」


言いながらルーキーの方に手を置くととても嫌な顔をされた











「と言うわけで、秋の演習までに特訓をしておこうと思うんだ」

「ふぅ……付け焼刃でどうにかなるものなのか?」


至極もっともなことを言われてしまった

時間は昼の休み時間、面倒そうなルーキーを拝み倒し防具をつけて対面する


「やらないよりはマシだろ、てことでルーキー様特訓の手伝いをお願いします」

「何で俺が……」

「いいだろぉ!学年勝率一位のルーキー様ぁ!」

「まったく……少しだけだぞ」

「さすがルーキー様!」


ルーキーは渋りながらも訓練を引き受けてくれた


「それではルーキー先生、特訓をお願いします」

「まぁ、とりあえず走り込みから……」

「そんなん良いからさ、何か必殺技みたいなのないの?」

「あるわけ無いだろう、普段からの積み重ねの結果が今だからな」

「そこを何とか!秋の大規模演習まで時間ないじゃんかよー!」


拝み倒すと、ルーキーは何度目になるか分からない呆れ顔をする


「そうだな、体当たりとかどうだ?」

「あの、さすがにそんな適当なのは……」

「大真面目だ、隣のクラスとの合同授業で何度か体感した覚えがあると思うんだが」

「あー……」


言われて記憶を掘り起こしてみると、確かにそんなこともあった気がする

俺の鉄壁フォーメーションが姉山さん率いる突撃部隊に破壊されたりとかな


「特に混戦になりやすい状況だと隙が出来やすいからな、盾を構えて体当たりをして

 地面に倒してしまえばこっちのものだろう」

「なるほど、地味だけど確かに有効そうだ」


ということで早速タックルの練習を開始する。盾を構えたルーキーに向かって

同じく盾を構えて文字通りタックルをしていく

こちらは助走をつけてタックルをしているというのに、ルーキーはタックルのすべてを

しっかりと受け止めて倒れることは無い


「あの、タックルが有効とは思えなくなってきたんだけど」

「タックルが来るのが分かっているからな、それに体格差だってある

 これは混戦時の切り札みたいなものだと思うといい」

「大丈夫かなぁ……」


若干不安になりながらも、タックルの練習を続けることにした











「うーん……」


あれからルーキーによる訓練はちょいちょいやってきたが、必殺技を習得していないせいか

イマイチ強くなった感じがしない。代わりにタックルの練習ばかりしていたので気分はラガーマンだ

そしてラガーマンになったかと思ったらもう大規模演習は直ぐそこで、今は準備の真っ最中


「はぁ、準備だるいなぁ……お、姉山さんだ」


荷物運びをしていると姉山さんを発見、どうやら向こうも準備をしているらしくなんだか忙しそう

に見えた。体操服を着て動くその姿は相変わらず健康的で眼福だ

なんて、いつものように目の保養をしていたら姉山さんと目が合う

そして薄く笑ったかと思うとこちらへ向って歩いてきた


「よう巾着、そっちも準備かい?」

「そそ、大規模演習の準備」


キャンプの一件以降、向こうからもちょくちょく話しかけてくれる仲にはなったが

それにしても今日は気分が良さそうに見える


「そういやアンタ、まだブロンズなんだっけ」

「そうだけど、大規模演習が終わったらシルバーになってる予定……」

「ほら」


俺が言い終わる前に何かを掲げる、それは……


「え!?シルバーバッジ!?」


俺の驚きに得意げな姉山さん


「まじかよ……って自慢しにきたのか」

「ははっ、正解」


嫌味な奴だ、俺が必死でシルバーランクになりたがっていることを知ってて言ってやがる


「いや、まてよ……」


姉山さんが高ランクになったのなら、倒せば功績がどっさり……


「ふ、ふふふ……」

「急になんだい、気味が悪い」

「いやぁ、演習が楽しみだなぁと」


姉山さん、お前には俺がここから出るための礎になってもらうぜ!

そう心に誓いつつ、姉山さんの体操着姿をたくさん拝んだ











「んー!良い演習日和だな」


大規模演習当日、防具片手に空を仰ぐ。今日の勝利を祝福するかのような快晴の青空

いつもよりも気合を入れて防具を装着していく

今日ですべてが決まると思うと緊張がこみ上げてくるが、何度か深呼吸をして気持ちを落ち着かせる

大丈夫、戦い方は考えてきた。一人で戦うわけじゃないし、合同授業の成績だって

こっちのクラスの方が良い。下手な緊張はするな

自分に言い聞かせ集中していると、演習を担当する教師が近づいてくる


「それでは、今日の演習についてのルール確認を行う」


防具を身に纏った俺たち一年を見渡す、ちなみにここには自分たちのクラスメイトしか居ない

敵となる姉山さんたちのチームは同じ演習エリアの別ポイントにいるはずだ


「一年生のクラス対抗で、敵を全滅させるか敵拠点にあるフラッグを奪取すれば勝利となる

 判定は設置されたカメラやエリアを監視している教師が行う、アナウンスには耳を傾けるように」


事前にあった説明と大差ないそのとおりの確認が行われる


「戦い方は自由だ、クラス内でしっかり話し合うと良い。制限時間は1時間

 時間内に決着がつかない場合は人数が多い方の勝利だ」


説明はあっさりと終わり、教師は少し離れた位置へと移動する。いよいよ始まるのだ

この演習エリアは以前キャンプで使用した場所と同じなのである程度戦いやすいとは思う

まぁ、それは向こうのチームにも言えることだけど


「時間だな……これより、演習を開始する!」


演習会場に声が響き渡り、俺のラストチャンスが始まった


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