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三話

「最近さ、筋肉痛が治らないんだよね」


ここ最近実戦授業が続いているのだが、実戦だとまた違う筋肉を使うのか筋肉痛の日々が続いていた

功績を多く稼ぐことの出来る実戦授業は大歓迎なので嬉しい悲鳴と言った所だろうか


「あれ、そう言えば今日って合同だっけ」


そう言いつつ自分で時間割を確認する、実戦授業は基本クラス内だけで行うが

切磋琢磨させるという意味でクラス間で合同授業を行うこともあるらしい

隣のクラスを仮想敵にすると言った感じだろうか


「合同授業だな」


確認にもたつく俺を他所にさっさと答えてくれるルーキー


「それじゃ個人功績の他にクラス単位の功績も貰えるってことか」

「まぁ、そうなんじゃないか?」

「くぅ!ルーキーが居るしガンガン稼ぐぞ!」

「人任せか」


そんな他愛ないやり取りをして、合同授業の準備をすることにした











「そういえば、隣のクラスの女子は調べたのか」


合同授業の最中、ストレッチをしていると隣のルーキーから声がかかる

彼女を欲しがっていた俺に対して隣のクラスの女子もちゃんと調べたのかという事だろう


「んー?まぁ一応ね、マシな子はいたよ」

「ほう、良かったじゃないか」


自分のクラスにゴリラ系女子しか居ないことに一通り絶望した後恐る恐る隣のクラスも調べて

いたのだが、一応居ることは居た


「んー……」

「好みじゃなかったのか?」

「ぶっちゃけるとそうなるかな」


残念ながら事はそう上手くは行かない


「そう上手いことは行かないか」

「だな~~……あ」


噂をすればなんとやら、噂の人物のご登場だ


「えーっと、あの子だよ。あそこにいるボーイッシュな日焼け少女」


離れたところでクラスメイトと会話している女子生徒を指差す


「へぇ、べっぴんさんじゃないか」

「んー」

「なんだ、面食いなのか?」

「いや、何ていうか俺の中にある可愛い女の子のイメージと大分違ったと言うか」


改めて日焼け少女をまじまじと見る。ショートの黒髪に健康的な日焼け肌、スラッと伸びた手足

活発な雰囲気を身に纏っているのが離れていても感じられる


「簡単に言うと、野性味溢れすぎてるんだよなぁ」

「何だ、学校の伝統は古い古い言う割には好みは古き良き女なのか」


中々痛いところを突いてくるルーキー


「男の好みなんて大体そんなもんだろ」


半場投げやりに答える


「あれ、こっちに歩いてくる」

「お前の悪口が聞こえたんじゃないのか」


そんな地獄耳なのか、なんて内心少しビビリながら日焼け少女が近づいてくるのを眺める


「あんたが、ルーキーだね」

「隣のクラスにまで定着しているのか……」


どうやら俺がつけたあだ名は隣のクラスにも浸透しているらしい

横目でルーキーを見てみるとお前もかと言いたげな表情をしていた


「アタイは姉山、よろしく頼むよ」


そう言ってルーキーへ手を差し出す姉山さん、見た目通りフランクな性格らしい

久しぶりに近くで見たが、やはり顔は整っている。だがその顔立ちは可愛いというよりは

目鼻立ちがしっかりしていて野性味に溢れている、俺は苦手だ

とはいえ彼女のような女性はこの学校では非常に貴重だ、今後合同授業で一緒になる機会が

多くなりそうだし目の保養をさせてもらう――そんなことを考えていると

ルーキーと握手を終えた姉山さんは挨拶もそこそこに自分のクラスの集団へ戻って行った


「……あれ、もしかして俺気づかれてなかった?」

「どうだろうな」


前言撤回、中々良い性格をされているかもしれない











「それでは全員揃ったところで、今回は2クラス合同で授業を行う」


生徒たちを見回して声を張り上げる教師


「今回はクラス対抗で混戦を行う、混戦チームワークが鍵だぞ。それじゃ各クラス5チームに分かれろ」


教師の合図により、クラス内で急遽会議が行われる


「えーっと、1クラス30人だから1チーム6人か」

「タイマンの人数多い版だっけ」

「これって勝ったチームに功績入るやつだよな?」

「チーム分けはどうするんだ?」


クラスメイトの話し合いに耳を傾けながら考える。5チームに分かれて勝負という事は

3チーム勝てばクラス全員に功績が入る、実戦授業の成績が良くない自分は足を引っ張る

ことになるだろう。ルーキーの居るチームには絶対勝ってもらって、そうなると……


「あの、ちょっと提案なんだけど」


手を挙げてクラスメイトの視線を集めたのを確認してから口を開く


「チーム分けだけど、実戦成績の良くないメンバーを集めて捨てを作るのはどうかな?」


その直球な提案に若干ざわつくクラスメイト


「俺とか特に、実戦授業の成績も良くないからさ。足を引っ張って勝てる戦いを落とす

 なんてことはしたくないし、1チームに集めることで他チームの戦力も自然に上がると思うんだ」


たとえ自分たちのチームが負けたとしても全体で勝利すれば功績は貰える

個人功績が期待できない以上、自分のことよりもクラスが勝つことを優先させたい


「正直今の俺じゃ足を引っ張るのが精々で、個人功績は期待できそうに無いから

チーム功績を目当てにするぜって言う下心なんだけど、どうかな?」


と、提案をしてみるとあっさり俺の案が採用されて実戦勝率の低いメンバーが1つにまとめられた

集まってみると確かに他のチームに比べて雑魚オーラが漂っている

何と言うか意外だ、てっきりクラス最弱は俺かと思っていたが中々どうして

自分と似たようなオーラを放つ仲間が少なくとも1チームはいると思うとなんだか嬉しい

最弱チームに女子が居ないのがあれだが、気にしないことにした


「ま、捨てチームだからって必ず負けるとも限らないからな、下克上してやろうぜ!」


そう気合を入れて出番を待つことにした

そして始まる混戦5番勝負、1番手はルーキー率いる精鋭が勤める

最初の試合は後続の士気にもかかわるから負けられない

具体的なチーム分けもついでに任されてしまったが、我ながらナイスな采配だ


試合が始まるとルーキー率いる精鋭たちは盾を構え敵へと突っ込む

そして相手が避ける為にばらけた所をタイマンに持って行き各個撃破していく

試合が始まって数分もしないうちにルーキーたちが圧勝していた


「俺は軍師タイプかもしれない」


ちなみに作戦担当も俺だ、ついでに任された

以降の試合もルーキーの圧倒的な勝利に奮い立ったのか

いつもよりも気合が入っているように見える


2連勝したところで俺たちの出番が回ってくる、良い雰囲気だ

ここで俺たちが勝てばこっちの勝利が確定する、勝負を決めたとなれば功績も期待できると思うと

俄然やる気がみなぎる


「リーダー、作戦はどうする?」

「リーダー……中々良い響きじゃないか」


普段中々目立つ位置に居ないので、リーダーと言う響きに心が惹かれる


「とりあえず、俺たちはルーキーみたいにガンガン攻められないからまずは守りに徹しよう

 個別撃破されないように固まって様子を見ながらチマチマ攻撃と言った感じかな」


「何かせこい戦い方だけど、分かったぜ!」


セコかろうが勝つことが大切なんだ

試合が始まると同時に盾を正面に構え剣を槍の様に突き出し密集陣形を作ると

突撃しようとしていた敵チーム動きが止まる。よし、出鼻はくじいたみたいだ


「……で、これからどうするんだリーダー?」

「このまま防御に徹して引き分けを狙った方が良いかなって思ってる」


何度も言うが、せこくても勝てばいいんだ

このままにらみ合うようにして時間を消費すれば引き分けに持ち込めるかもしれない

密集陣形を上手く利用してひそひそと作戦会議を展開する

しかし、こちらが方針を決めきる前に相手が動き出した


「お、おいリーダー!敵が突っ込んでくるぞ!?」

「マジかよっ!?」


こちらと同じように密集陣形を作るとそのままこちらへ突撃してくる

敵チームの気迫に怖気づいたのか逃げようとするチームメイトたち


「お、おい!体制を崩したら……」


慌てて止めようとするがもうすぐ目の前まで敵の集団は迫っていた

密集陣形が崩れれば当然耐えられるわけも無く、そのまま俺たちは吹き飛ばされる


「くそっ!」


追い討ちとばかりに振り下ろされる剣を防ぎ、すぐに体勢を立て直す


「へぇ、耐えたかい」

「その声は姉山さんか」


周りを見るとどうやらタイマンに持ち込まれたらしい

このまま長引けば負けるのは確実、早く倒して他の援護に回らないといけない


「女だからって手加減しないぜ!」

「威勢は良いねぇ!」


剣同士がぶつかり合う、力勝負は分がありそうだ


「男だけあって、力だけはあるねッ!」

「そりゃどうもッ!」


いけると踏んで剣をさらに押し込んだ瞬間、感じていた抵抗が無くなる


「なっッ!?」


一瞬剣を引いた姉山さんが俺の剣を受け流し、懐に入ってくる

盾を胸の前へもって行き構えた瞬間、強い衝撃に体がよろめく

盾を足で蹴られたと理解した時には姉山さんの姿を見失っていた


慌てて見回すと姉山さんは他のメンバーの加勢に向っていた

活発そうな雰囲気から猪突猛進なイメージを持っていたが、柔軟性のある戦い方をする

関心したのもつかの間、気がつけば俺以外のメンバーは全員敗北していた


「まだやるかい?」


姉山さんをはじめ、敵メンバーがぞろぞろ集まってくる

その数6人……って誰も倒せなかったのか


「はぁ、さすがに降参だよ」


両手を挙げてアピールすると、教師の判定により俺たちの敗北が決定した

俺のチームはボコボコにやられてしまったがトータルの結果は3対2で俺たちの勝利

何とか功績は稼げたみたいだ


「ま、結果オーライかな」


一人満足して、痛む体をさすりながら教室へ戻ることにした



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