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魔法陣は恋の始まり

『た、助けてぇぇ……魔法学園に入学なんてぇ』僕は魔法を習得すると死ぬ体なんだ!

僕の名前は、(コウ) (リュウ)



実は僕は光財閥の御曹司なんだけど、世間では愛人の子供って後ろ指を指されている。



龍と言う文字は父親がつけてくれたんだけど

名前は結構気にいってるんだ。


龍と言う文字は強いと言うイメージがあるからね。



僕は、とろくて泣き虫だから龍のように強くなりたいんだ。



僕には兄が一人いる。

兄はれっきとした本妻の子供。


年齢は15歳。

僕と同じ年齢。

でも彼が僕より早く生まれたので、兄さんと呼んでいる。



名前は(コウ) (テン)


光財閥の跡継ぎとして、3歳の頃から魔力と武道の英才教育を受けている。



僕は跡継ぎじゃないから、ほったらかしだった。



英才教育なんてぞっとするよ。

兄さんに同情する。


僕は自由を満喫していた。


父さんは病気とは縁が無いほど健康体だった。


ところが1年前に会長室で父さんが突然倒れた。



検査の結果は脳腫瘍だった。

父さんはすぐに入院になった。


父さんの会長職は妻の(コウ) (レイ)が引き継いでやっている。



ところが3月1日に突然、父さんが危篤状態になり他界した。


僕は父さんに話したい事が、沢山あったのに、死に目にも会えなかった。



僕は一晩中泣きあかした。



初七日が過ぎた日に兄さんが僕の部屋に来た。


「龍よ。父さんの遺言でお前も僕と一緒に最強魔法学園に入学する事になったからな」



兄さんが意味深な笑みを浮かべた。



「えぇぇぇ……」


僕は絶叫した。


(父さんは生前、入学するもしないもお前に任せるって言ってたのに……)



「ま、魔法学園って何?


僕は魔法の、まの字も知らないよ。


でも、あの最強魔法学園はエリートだけが入学出来る学園だって事だけは知ってる」



「それで……」


「だから僕は入学できない」


(あやうく兄さんの、騙しに引っ掛かるとこだった)



「龍よ。甘い。

学園の創立者は、おじい様だよ。


今は母さんが理事長。


母さんは僕の願いなら何でも聞くよ」



『くっくくっ』

『いゃだあぁぁぁ……』



僕の絶望の声が頭の中で反響した。



「……と言う事で、入学まで1ヶ月。


巧教官に龍の指導を頼んだからな」



兄さんが、さも嬉しそうに言った。



「いゃだぁ。教官に指導受けるなんて。


僕は、のろまだから絶対無理だよ」



「そうか。

龍は学園に入学するのが嫌なのか?」



「うん」



僕は首を縦に振りながら答えた。



「そうか。

それなら、この家から出ていくしかないぞ。


母さんも同じ意見だよ」



「……えっ。

そんなぁ」



僕は一瞬、目の前が真っ暗になった。



僕の母さんは10年前に亡くなった。



父さんは僕には優しかった。



『魔法を習いたかったら特別に指導教官をつけるよ』

と言ってくれたけど。



僕は断った。



『そうか。

龍の好きにしなさい』


頭を撫でてくれた父さんは、もういない。


(……どうしよう?


僕の体は魔法を習得できる身体では無い。


魔法の修行をすると死ぬかも……)



僕の頭はパニック状態になり涙腺が緩んだのか、涙が止めどなく頬を流れた。



「……ったく。龍は、いつまでたっても泣き虫だな!」



「泣いていないってば」



「そうか。それなら今の内に、たくさん泣いて涙を枯らした法が懸命だ。


教官は涙を極端に嫌うからな」


さも嬉しげに兄さんは呟いた。


(僕の体は皆と違うんだ。


教官に1ヶ月、魔法の修行をさせられると、入学前に死んでしまう。


逃げようか?)



いろんな考えが、頭の中で渦を巻いていた。



突然、胸が苦しくなり動悸が激しくなった。



僕は右手で、ドンと胸を叩いた。


唐突に、『鉄壁の不動心』の言葉が頭の中に浮かんだ。



僕は「鉄壁の不動心」と唱えた。



すると平常心にもどり、頭の中が澄んだ湖のように()えてきた。



『魔法の修行をしなければ平穏に暮らせるだろう。


しかし魔法の取捨を選択する時が来たならば、生か死を視野に入れた選択になるだろう』



赤霧師匠の言葉が、僕の頭の中に(よみがえ)ってきた。


僕には秘密がある?

(師匠と僕だけの二人の秘密)



僕は右の足の小指にシルバーのリングを装着している。



リングを外すと僕は、この世界では生きられない。



リングを外さなくても、魔法の修行をしても死に至る。



魔法の修行をしても死なない方法がある。



それはプラチナリングを左の足の小指にも装着することだ。



僕は、出来る事なら左の足には装着したくない。



『いゃだぁぁぁ……』



涙がまた溢れてきた。



「今日一日、考えて明日どうするか結論を出せよ」



兄さんは、そう言って僕の部屋から出ていった。



僕の部屋は10畳ぐらいの広さ。


ベッドと小さな丸いテーブルだけの質素な部屋。



兄さんの部屋は僕の部屋の五倍ぐらいの広さだ。



僕は泣きつかれてベッドに倒れ込んだ。



仰向けになって考えた。


(いつから兄さんは冷たくなったんだろう?


あの事件? いやあの事故からかな……)



そんな事を考えていたら、うとうとして目蓋(まぶた)が閉じてきた。



すると、あの日の事が目蓋(まぶた)に蜃気楼みたいにボーっと浮かんできた。



あれは僕が11歳の誕生日を迎えた2月2日の事だった。



朝から小雪混じりの寒い日。



僕はベッドの中で、うつらうつらしながら微睡(まどろ)みを楽しんでいた。



『アホー……』


壁に設置された木彫りの時計が時を告げている。



「……8時かぁ……寒いし……」



『バーン』



扉が威勢よく開けられた。



「龍よ。何時まで寝てるんだ。

俺は朝5時に起こされ3時間も修練したんだ。

お前は気楽でいいなぁ。


ところで俺との約束忘れていないよな?」



「えっと……」



「……ったく。今日、母さんに内緒で霊山に行く約束だろう?」



「れ、霊山って……危険だから近づいては駄目って。


昔、父さんから聞いたよ」



「だから皆に内緒で行くんだろう」



「……でも。皆に知られたら?」



「し、知られたら……」



兄さんが僕を、じぃーと見つめた。



「その時は、アレだろう。


お前が俺を無理矢理誘った事にするんだろう」


「……そんなぁ。嫌だってば」


「そっかぁ。


じゃあ。お前の枕元にある木彫りの狐。

返せよ!」



「あっ! そうだったね。


行くよ。行くよ」



僕は木彫りの狐を胸に、ぎゅっと抱き締めながら言った。


(そうだった。

すっかり忘れていた。


たしか約束した。


伝説の霊弧(れいこ)を探しに行くのを条件に、木彫りの狐を貰ったのを……)



そうだった。

兄さんと約束したのを、すっかり忘れていた。


あの時は木彫りの狐が、とても欲しくて生半可に返事したかも知れない。



僕も最近、見よう見真似で狐を彫っている。



小刀の使い方が難しく生傷が絶えないんだ。



「龍よ。急いで身支度を。


持って行く物は干し肉と干し葡萄だけ。


あと木剣。


もし見つかった場合は、剣の練習とウサギ狩りと言うのだぞ」


兄さんは何度も僕に念を押した。



僕は行き当たりばったりの性格だけど、兄さんは用意周到だ。


僕は兄さんに隠れて、こっそりと木彫りの狐もリュックの中に忍び込ませた。


「さあ、行くぞ」



兄さんに、(あお)られながら部屋を出た。



僕も霊山に行って霊弧を見たいけど、僕たちだけで大丈夫かな?



途中、迷いの森や黒い沼を通過しなければ霊山へは行けないと聞いている。



「兄さん。霊山って遠くない?」



「近くはないな。

距離にして50キロぐらいと聞いたな」



「はぁ……。む、無理だょ」



僕は兄さんに、そう言うと座り込んでしまった。



「……ったく。龍よ。お前は闘争心が無いし、それに心が弱いから強くなる魔法をかけてあげよう」



「えっ! 本当に!?」



僕は嬉しくなって立ち上がった。



「此処では、まずいから移動しよう」


そう言いながら兄さんは、左手を前に突き出した。



すると左手に、ゆらゆらと透きとおった本が浮かび上がった。


「何!? それ?」


「魔法の書だよ。

魔法使いになると使えるようになるんだ」



「ふぅーん。

じゃあ、僕は持ってないんだ。

ちょっと見せて」



「いいよ」


ぼくは兄さんの左手の上から数センチ浮かび上がっている、透けて見える魔法の書を覗き込んだ。



手のひらより少し大きい魔法の書には、

『火』

『水』

『土』

『風』

『?』

五つの文字が浮かび上がっていた。



「火・水・土・風の四つは基本属性で最初はこの四つを使いこなせるように修練するんだ。


最初は魔法書には何も文字は刻まれていない。

しかし基本属性を習得すると、魔法書に属性の文字が浮かび上がる」



「そうなんだ。兄さんは四つの基本属性を習得したんだね。


基本属性の下の『?』は何なの」



「『?』は基本以外の属性で他人には非表示なんだ。


俺も、幾つかある。


これから使用する魔法もそうだ」


兄さんは、そう言うと右手の人差し指で『?』を軽くタッチした。



兄さんの手の平の上に浮かんでいる魔法の書の文字が変化した。



「あれっ?」



僕は思わず声を出した。



五つの文字が、()らめきながら徐々に消えた。


すると兄さんが人差し指で触れた『?』の文字だけが揺らめきながら左上に現れた。



兄さんが魔法の書の真ん中辺りに人差し指を持っていきながら軽く魔法の書に触れた。


兄さんの左手の空間が蜃気楼のようにゆらゆらと揺らぐ。


左手の回りに幾何学な線と文字で構成された魔法陣が点滅しながら浮かび上がった。






















閲覧ありがとうございます。

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