八話
どこにでもいるような一般人の中の一般人たる門司間もみじがなにゆえ世界の騒動に巻き込まれたかと言えば、それはバナナの皮の存在なくしては語れない。何故バナナナナバ!と突っ込まれる方も中にはおられるかも知れないので、述べさせて頂くと、いや、聞いて欲しい。
学校帰りに友人が食べていたバナナの皮が落ちてそのバナナの皮を拾おうとすると、後ろからドリルスプラッしゃー(技名)を噛ましてきた幼なじみがいて、つるっと行ったのだ。もみじが通う学校は少し上がったところにあり、坂道がある。その坂道の外側へと回転しながらおりしも類い稀なる運動能力(過剰表現)が発揮され、そのまま崖下の林へと突っ込み――彼女と出会ってしまったのだ。そう――
殺戮魔法少女(自称)真霧妙子と……。
「もみじさん、もみじさん」
「なに?」
「何を朝っぱらから弄ってるんですか?」
「弄ってないよ!?何も弄ってないよ!映像描写がただでさえ手抜きなんだから読んでくれてる方にあらぬ妄想をさせるそういうコメントは僕良くないと思うんだけど!?」
「そんなことよりどうして基本全裸なのに靴下履いているんですか?」
「マニアック!物凄いマニアックだね!?そしてそんな格好はしていない!天地神妙に従って決してしていない!」
「そんなこと言いながら『靴下を脱がしちゃうなんて……間違ってる!』って憤っていたじゃないですか」
「――――何処でそれを……じゃない!そんなことしていない!僕は清らかな身体であり、そんな乱れた精神は――」
「『エロゲーでしか発揮していない!』ですよね?」
「…………………」
「…………………」
「ご飯……出来たよ?」
「おっと!そうはイカのきんたまん!」
「臭そうだな!」
「ナニ臭いってやつですかね?」
「親父だ!親父がいる!中身がおっさんの変態女子高生(?)が居るぅ!」
「ちょっと!もみじさん!聞き捨てならないですね!どこに(?)をつける必要があるんですか!返答によってはちゅーしますよ!吸い取りますよ!」
「どこのおねーちゃんだ!」
「隙有り!(ちゅー!)」
「うわぁ!真面目に!?」
「えぇい!いいから素直に唇を奪わせて下さい!もみじさん!ちゅーっと!ちゅーっと!ガンガン行こうぜ!」
「だから何で!?ていうかなんでこんな朝からこんな激しい運動を――」
「(がっしゃーん←玄関の扉が砕け散る破砕音)ずるい!まだあたしもヤっていないのにぃ!ずるい!ガンガンやるのはあたしぃ!揉ませてぇ!」
「――っでなんでいきなり抱きつき!?なんか違う!てかナニを何処でナニを聞いたの!?お隣の幼なじみさん!?貴方常識って知ってる!?」
「それは愛の力!」
「右手に握ったその受信機はなんだ!」
水守香苗。お隣に住む幼なじみというヤツだ。妙子と並ぶえげつなさを可愛さとともに持ち合わせる稀少な友人である。
「おはし!」
「マジか!」
ヘッドホンを身につけ、怪しげな機械を手に持っていてもそう言い張る彼女。しかしそんな余裕を持って解説している場合じゃない!
「だから脱がさないで!男の裸なんて誰も見たくないよ!だから待って!脱がすのは止めて!そんなことをしても人気は出ない!出ないんだよ!それが現実!だからハーフパンツにかけた手を緩めるんだ!ていうか折角の休日なのに!なんで僕はいきなり脱がされかけてるの!?責任者はどこだ!」
「うぇっへっへっへ……責任なら私がとりましょう!」
「いやそこはあたしが!」
「だーーーーー!ご飯!とりあえずご飯を食べよう!」
「もみじさん、もみじさん」
「ナニ?」
「お茶を所望します!」
「……あいあい」
席を立ち、お湯をかける。
「そう言えばもみじさん、今日はどういったご予定ですか?」
「僕の予定?……特にないわなぁ……」
どちらかと言えば友達が居ないタイプなのだ。門司間もみじは。
というわけで休日と言えばせいぜいが近所の古本屋巡りやら本屋巡り、がメインである。彼女でも居れば別なのだろうが、
「?」「?」
この二人はどうもそういう感覚で僕に付き合ってるわけではない気がする。
一人は居候で人間じゃないし、一人は幼なじみでどこかがオカシイ。いや、彼女の両親が例えば黒魔術のような儀式をしていたり、如何にもな杖を持っていたり、というような人達なのでまぁさもありなんと思って良いような……けれど、そのことについて考え出すと脳みそにもやが罹るような感覚に襲われる。ので、気にしない。君子、危うきに近寄らず。すでに君子とだいぶ離れている気もしないでもないけれど、気にしないことにする。門司間の数少ない美点かも知れない。とりあえず、お茶を入れる。
君子、お茶を入れるべし。
「お待たせ……」
「ごちそうさまです」
「そう言えばもみじ」
「ナニ?」
「あたしの予定は聞かないの?」
「……あぁ、えっと……香苗の予定は?」
「特にない……もみじの行くところについていく感じ……ほら、ティッシュも用意、あとこん――ふぐっ!?」
「……なんか危険な台詞言おうとしなかった?」
なにかこういけない台詞が飛び出てきそうだったのでつい口を塞いでしまった。
「Doom……」
「僕の指を咥えた!?」
「あ、それで申し訳ない話なんですけど、もみじさん――」
ピンポーン
まぁこれが次の話の始まりだった。