十一話
帰り道――
「もみじさん、最初に倒した三人覚えています?」
「あぁ……全身タイツ……ってあれはあの組織の制服だっけ?」
「多分あのメンバーが『ヴァリスタ』です。じゃなきゃ――」
「――たえちゃんが苦戦するなんてあり得ない……でしょ?」
「……まぁおかげでもみじさんと出会えましたが?それだけデンジャーな状態だったんですよ、実は」
……そうだったのか。
「えぇ……危うく『殺戮の呪文』を奪い取られて『人類の歴史』が抹消されるところでした」
「えぇ!?僕世界を救ったの!?」
「まぁ結果的にはそんな感じですね」
「マジで!?」
「まぁ奥の手ですからね――もしくは彼らの存在自体を抹消しても良かったんですが」
「怖いよ!?てかそんな事まで出来るの!?」
「ナニを言ってるんです?もみじさん。『殺戮の呪文』ですよ?対象を選べないとでも?」
「……てことは正確に言えば僕が救ったのは彼らの命?」
「まぁ私的な意見を言わせて貰うならあのバカ共のお陰で私は生きる目的を見つけたというか?」
生きる目的?……妙子の口からそんな単語が出てくるとは……。てっきり男子の股間萌え―とかキノコスプラッシュ萌え―とかそんな台詞しか言わないと思っていたが。
「……なんか失礼なこと考えてません?もみじさん……?」
「いや、考えて――ってなんでいきなりズボンから脱がすの!?いきなり!?どうして!?空気が重かった?……いや、明らかにいいじゃん!ラノベに重み、最高じゃん!ガンガン行こうよ!中二病最高!だから脱がさないで!ていうか――天界からの帰り道がなんで電車!?いやてか電車!?」
「痴女は出ますが痴漢は出ない電車なんですよ、残念ながら、ま、私達女の子にとっては嬉しい話ですがね」
「オマエか!オマエが痴女か!?」
「いや、私っていうか?……どちらかと言うと隣のなみちゃんが……」
「なななななナニを言っているのかな!?たえちゃんは!?まさか私が見た目ショタ男子の股間をまさぐるショタフェチだとでも言うのかしら!?そんな馬鹿な!確かにロリった男の子が大好物と言えど――えぇ!そこにウソはつきませんよ!ちゃんと手は洗って――じゃなくて!」
流石妙子の友達。変態だった。しかもショウタロウコンプレックス持ち。……ぱねえな。天界。てかA系しかいないんじゃね?いや、むしろH系?ある意味天国。
「そんなことよりもみじさん……潰しに行きません?『ヴァリスタ』」
「……別にいいけど真面目に?」
「まぁ明日の学校帰りにでもあの辺りの支部を襲撃する感じで」
さらっと言うな、さらっと。
翌日。
教室につき、いつも通り二人つか三人は僕が家を出る時も家にいたけど。
――「でなんで成実までこのクラスに!?」
ついていた。だから、どうして?
「あら?いけない?賄賂をねじ込ませたら案外簡単にだったわよ?」
「そういう事実は聞いてない!」
「まぁまぁもみじさん、そんなことよりどうしてそんなにオシャレなパンツ履いているんです?(ざわっとどよめく教室)」
「履いてないよ!?まるで普通に僕が見せて歩いてるみたいな表現はよして!(どよっとざわめく教室)変態じゃない!いや、ていうか教室の反応はナニ!?僕がまるで脱いでる!みたいな感じのリアクション!オカシイでしょ!?脱いでないよ!僕!ていうかオシャレってナニ!?それにそんなオシャレなパンツなんて履いてないよ!」
「変態」「変態」「変態だから」
「またやるんだ!?ノリノリだね!うちのクラス!」
「誰が露出狂ですって!?紐パンのナニが悪いって――」
「別方向から!てかやっぱりそうなんじゃん!てか自覚症状大ありじゃん!ていうか言ってないしぃ!」
「ていうかこのラノベ会話文で持って行きすぎじゃないですか?やり過ぎな気がしますよ?」
「知らんよ!てか天界の仕事は!?魔界は!?ダイジョウブなの!?」
「「男女両権のおかげで人員は余ってますから」」
「……世界って複雑」
「もう……なんでもいいや……」
香苗の「世界って複雑」という意見に頷きつつもみじは考える。どうやら天界にもそう大して仕事はないらしい。……まぁそりゃ純消費者が少なくなれば当然そうなるわな……。人間にしても『仕事』で『人生』は終わってくれないもんなぁ……。
とかなんとか思ったり。
―――
「さて、恐らく此処だろうという情報が入ったので早速襲撃するとしましょうか」
「……もうこの超展開に慣れてきた自分が怖い」
学校が終わるとすぐに魔法陣を地面に書いた妙子がこっちこっちと手招きをし、またわけのわからない場所に降り立つ。つい先日天界に連れられて行った時もそうだが、唐突である。
「……ていうか普段からこんな感じで襲撃してるの?」
「そりゃもみじ君――何せたえちゃんは『伝説級の工作員』――REDみたいな実力持ちと言って差し支えない天才工作員だからね」
「世界一格好いいハゲ?」
「そんな感じ」
マジかよ……超タフガイじゃん。
「はいはい――行きますよ、いいからいいから、どうせ大した敵じゃないですよ――」
ずどんがががどーん!
ばっきゅーん!ごごごごごん!ずどん!
どがーん!ばごーん!
「なんなの!?この大爆発!?スゴイよ!戦争!?戦争状態!?ていうかなんで僕以外はこんな状況でも寛いでいるの!?香苗に至っては普通に『えー、まだ終わんないのー?』なんて言えてるわけ!?ナニこの超常現象!水やら火やら爆発やら雷やら――魔法!?マジで魔法!?真面目にスゴイ魔法の数々だぉ――!!!」
「ていうか……一応障壁張ってあるからダイジョウブですけど……もみじさん、あまり立ち上がらないでください……充電完了まで待って頂ければすぐですから。てか流石に極大呪文を撃たれたらちょっとキツイです」
「(ていうか極大呪文てナニ?)……狙いは?」
「一〇〇メートル四方の二階建て――地下一階有りですからね――恐らく一階の突き当たりの部屋に封印関係の装置を揃えているハズです」
「まぁ常識よね」
そうなんだ……と思いながら話を聞く。
彼女達の説明に寄れば、殺戮の呪文を使える魔力を所有しているのは変態の人を除いて一人しかおらず――そして、その機能を持つ封印装置も世界に一つしかないらしい。
なんてご都合主義!探偵も解説役も必要ない書籍ってどうなの!?
「……うん……さて、そろそろ仕掛けましょう」
「……なんか状況が好転するような作戦仕掛けてたの!?」
「いやいや、まるで?そんなモノ仕掛ける必要があるラノベですか?」
「最初っから最後までしまらねえ!」
「まぁまぁ……何のためにあの変態の人の話を挟んだと思っているんです?ついでに其処に成実ちゃんが居ると?」
「――え!?実は真面目にそんな伏線を!?」
「私が伝説の工作員――ではここの紐パンロリショタな親友――平木成実の特殊能力は?……どうです?把握しました?成実ちゃん?」
「バッチリ!(ボリボリ)」
「……どう見てもポテチ食いながら寛いでいるようにしか見えないけれど?」
「例の変態の人を封印した時――どうして、弾丸が命中したと思います?どんなに高速で撃ち出せたとしてそれが『超強烈麻酔封印弾』だとわかったら『絶対領域十五センチ』で防がれちゃうじゃないですか?」
「……確かに……」
「それを――可能にしたのが――」
――――「私の『ゲ・ン・カ・ク』ッ!」
「……………『幻覚』?」
「話題にだしたじゃないですか『幻覚』――それこそ、どうして成実ちゃんがお――」
「ストップ!言わなくてダイジョウブ!キノコの話題はもういい!」
「……仕方がないですね、もみじさんは……照れ屋さんなんだから」
「照れ屋じゃないですね!そういうことじゃないんだよね!?いや、てか公序良俗方とかそんなんに触れる気がするんだ!」
「心配しすぎですよ、もみじさん。ぽこちん☆くらいどこにでもあるような話じゃないですか、丸出しの人だってよくいるじゃないですか」
「居ないよ!どう考えても捕まるでしょ!?そんな全裸人間ばかりの世界は嫌だ!」
「まぁそれは冗談として――じゃあ、成実ちゃん、やりますか?もみじさん――頼みますよ?」
「……この状況……………男冥利に尽きると言うか……背中から妙子で右側に香苗が乗って左側に成実……僕両手ふさがってるから戦えないよ?」
「問題ないですよ、全てこの『双狙撃銃』が撃ち抜くんで」
「……あたしは主に撮影メインで」
「……私は主に『幻覚』メインで」
「てか戦う事なんてないくらい多分メロメロになってるはずですよ?」
――そう言えば……魔法が止んだ……?