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十話


「元々『髭伯爵』はあの変態の人の魔法です――まぁそれを奪い取ったのは私なんですけどね?……他の魔法は魔法力の関係上奪い取れなかったんですが」

「そう言えば髭伯爵ってスイッチ制だよね?」

「アレは私がつけた機能です」

「……ということは、元は勝手に発動出来てた?」


「えぇ、それだと……ねぇ?やばいじゃないですか、主に私が」


「まぁ自分の実力以上の人間をどう御するのかは悪の組織の命題だもんね……」


「なんですか!?もみじさん!人を悪の手先みたいに!私は正義!アイムジャスティス!ジャスティフィケーションですよ!」

「それは正義じゃない」

「ばれましたか、テヘッ」

「いや、てかそんなことより此処どこ?」

「天界ですよ?」

 天界……どこを見回しても某テーマパーク的な入場門しか見えないが……

「え?僕死んだ!?」

「いやいや、ナニを言ってるんですか?此処は別に魂の循環場所とか天国と地獄みたいな場所ではないですよ?単純に世界を管理している場所です」

「……てことは現実に存在している?」

「まぁ普通は見つけられないですけど?」

「んな馬鹿な!?」

「いいですか?もみじさん……誰だって死んだらそこまでです。そこから戻ったりすることは出来ません。そこから先はまさに別の領域なんです。命は一つ――だからこそ意味があると言えるんです」

「……妙子……」

 妙に真面目な表情につい、思わず彼女の顔をまじまじと見てしまう。

 真面目な顔をすると――ホントに美人で可愛いことが解る。

「だから淫行は手始めにまず私――ほぐわあああああああああああっ!?」

「ちょっと!妙子!なんであたし抜きで口説きにかかってるの!?もみじはシチュエーションに弱い上にドエムなんだからそういうことはあたしと相談してから――ずびっとな!?」

「はいはい、二人とも、落ち着いて?ね?(二人の首に斜め四十五度の手刀をいれてにこやかに笑う成実)じゃ、ますは手続きを……」

「……はぁ……」

 ナニがなんだかよくわからなかったが、連れられて立派な門をくぐる。

 ちなみに妙子と香苗は首もとを掴まれて引き摺られている。


「どう?動いた?」

「……いやぁ、まだ寝ぼけてますよ?ボケボケです。この分なら封印しなくてもダイジョウブかなぁ……と思ったんですけどね?」

「そう……ならいいんだけど?」

『入場受付』と書かれた某テーマ―パークのチケット売り場のような箇所で話し込む成実。……天界……ねぇ?ちょっとイメージと……ずれてるなぁ……。

 でも説明に寄れば……そういうところじゃないんだしなぁ。

「そちらの御仁が例の?」

「そう――妙子の『パートナー』」

「……上手く行くことを願ってますよ、裸で営業はもうごめんです」

 ……そんなに嫌だったんだ……。

「――はっ――あれ?もみじさんと私はこすり続けてうん十分……じゃないですね?オカシイですね?あれ?」

「――はっ――あれ?もみじとあたしは抜き差ししながらうん十分……じゃない?オカシイ!アレは確実に入っていた部類にカテゴライズしてダイジョウブなハズ!」

「……いや、てか……いいから起きた瞬間――狙ったかのように僕に座ってくるのはどういうこと!?香苗に正座させられ妙子に上から押さえ付けられ――どないやねん!?何事!?」

「そんなことより三人とも……そろそろ彰の寝ている箇所に着くんだけど?」

「……それ、気になっていたんですが……まさかあのボロッちぃアパートじゃないですよね?ナニか出そうな……」

「「それ「です」よ、それ」」

「マジか!」


「……なんでこんなアパートに聖人が?いや、変態の人――という表現だとぴったり来る……というのはちと不味い気がしないでもないけれど?」

「いやぁ……何せ此処がお気に入りだったんですよ」

「……まぁ……裸で生活しても文句は言われないような……」

 しかしまさか『エコ』だから『全裸』というわけでもないよなぁ……。

「でもそれってなんかこう……放棄しているような?」

「そんな深い考えは聞いてみるのが一番ですよ、どうせろくな答は返ってきませんよ」

「そうなの?」

「他人の考えなんてそれこそ当人にしてみればどうでも良いことですよ、それは天使であろう人間だろうが一緒です。大事なのは『自分』です。勿論、良い意味でも、悪い意味でも、と付け加えておきますが」

「まぁそうだよなぁ……正論ってあってないようなもんだもんね……」

「だからまぁ気にせず作戦通りにやっつけちゃいましょう!」

「……それもどうかと思うけど……」

 妙子が全裸で生活しなきゃならなくてしかもそれは『あの』『天使』の姿でこの『キャラ』を発揮されたらなんだかもう後戻り出来なくなる気がする。『監獄がお似合いだよ?坊や……』みたいな人間になってしまうに違いない。

 そのためにも封印しなければならない――所詮人間は視覚でしか物事を捉えられない動物なのだ!

「……ちなみにどこに?」

「二〇一号室が彰の部屋」

「……良し――(こんこん)もしもし、自宅に直送天界宅急の方から来たんですが――」

「(ナイス詐欺!)」

「(……なるほど、天使と悪魔は表裏一体……)


「はいー……今行くわ……タマゾンからの荷物届いたのかなぁ……超常戦士タマワルワー……楽しみだったんだよねぇ……」


「(部屋の中から独り言が聞こえるぅううう!そしてその期待を裏切るのが辛――い!)」


「……あ、いや、待てよ?……もしかするとアレか?ぬきぬきアイテムふみおちゃんマークⅡか?いやいや、不味いな、まずいまずい……今日の夜はフィーバーだぜ!」


「(どうしよう……!!!知ってはいけない特殊性癖を知ってしまった気分だ……)」

「(いや、まさにその言葉通りじゃないですか……まぁまぁそんなことより今すぐに私と――ってかなちゃん!?どうして!)」

「(どうしてじゃないでしょ!?やるのはあたしが先!)」

「(てか二人はナニしてるの!?――って来た!)」


「(がちゃっ←玄関が開く音)……あるぇ?」


 拳に溜め込んだ魔力を一気に爆発させる要領で殴る。

 不意打ちである。

 全力の不意打ちである。

 まぁ当然――核爆弾クラスの破壊力を誇るパンチ――それでも――

 ガシッと音を立てて拳は届かない。

「おいおい――俺のぬきぬきアイテムは……?」

 余裕である。流石――全裸魔王――いや、パンツは履いている。

「……ないよなぁ……(がっくりぃいいいいいいいいいいいい←というめり込む感じで座り込む全裸魔王)」

「――うーん……流石ですね、全裸魔王……」

「ていうか僕のパンチまるで効いてないっていうか、止められたというか――!」

 そのままめり込む感じで座り込んだ全裸はもみじのパンチを離し、座っているのだ。

 完全に舐められている――けれど、事実である。

「……てか彰さん?もしかして……」


「あんだよ?俺は今二次元世界の探求で忙しいんだ……現実の天界なんて知ったことか!けっ――……ディスプレイの向こう側に……俺だけの世界が拡がっているのさ……」


「「「「…………………………え?」」」」


 かの変態――彰が目覚めた時――隣人――夛田保仁はゲームの真っ最中だったらしい。

「いやー、ね?これまでどんな騒音でも爆撃でも魔法でも音がしなかったお隣でスゴイ音がしたんだよ」

 恐らく――『髭伯爵』の発動の性だと思われる。個人保有の『魔法』いわゆる『秘術』というものは、その個人から剥がしたとしても『繋がって』いる。とは言え――それだけでは封印が解ける――条件を満たしはしない。故に、なんらかの組織工作があったと推測がたつが、それについて筆者は知らないので書かない。

「それでノックをして開けてみると――まぁ居たんですわ――全裸の男が……これはヤバイと思いましてね、逃げようと思ったんですが……まぁ乗りかかった船です。仕方ないので部屋に招き入れ、ご飯をあげたんですよ――で、その際――僕のPCゲームに目が止まり――」


「……こんな状態になっちゃった、と……」

 部屋に足を踏み入れるとそこはもうオタクの『楽園』!パラダイス!

 美少女フィギュアにゲームソフト――ハードは旧から最新作まで網羅――

「だからさ……悪いんだけど、これから俺はディスプレイの向こう側を救いに行かなきゃならないんだ……悪いな、全裸政策なんてもうやってらんないぜ……あの頃は全裸が全てだったんだ……今はネットの海という広大な世界が……」

「廃人になってしまったと……」

「てかもみじさんのパンチを軽々受け止めてましたよね~……」

「うぅ!?……まるで役に立たなかったという事実が僕の心を抉ってくる!」

「あ――そうだ、真霧――オマエ気をつけろよ?」

「なんです?早速一死しましたけどダイジョウブなんですか?」

「――げぇっ!?……まぁ仕方ない。恐らく俺の封印を解いた奴らは間違いなくオマエの『秘術』を狙ってるぜ?」

「……『殺戮の呪文』……」

「まさにそれ、だ……全く、そんなことをしたら俺の愛しの俺の嫁達が消えるっつうに……これだから思想家ってヤツは……ブツブツ……」

 ある意味理想の平和思想家になってしまった聖人(変態の人)は置いといて。

「……どゆこと?」

「そういう集団が居るんですよ…『ヴァリスタ』っていう」


 ……『ヴァリスタ』?聞き慣れない言葉に僕は思わず首を捻る。



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