第三部分
フジタ視点
どういうことだ?
あの紙にかかれていたのが、この世界で信仰されている神の名だって!?
「魔法円に似た紋章? てかこれ、この世界の神様を崇めるための紋章みたいなものだったの?」
「はい。それと同時に、超大規模描陣魔法、ようは陣を描いて発動するタイプの超大規模魔法には必ずこの紋章か、運命神ディスティノの紋章が入ります。発動成功を祈願することを願う意味合いもあるそうですが、他にも、これを入れることで、凄く術式が安定するとか何とか」
運命と奇跡、か……。どちらもあるといえばあるし、ないといえばない。そんな曖昧なものだな……。
しかし、何だってこんなものを俺が持ってるのか?
自分が勝手に書いた落書きが偶然この形と重なっただけなのか?
いや。それこそまさしく『奇跡』だろう。そんな偶然、有り得る方がおかしい。
「どうやらこれには魔法的には何の力もないようですね」
「……そうか……」
「あくまでも魔法的には、ですが」
ん? いやに釘をさすな。
「しかし、神通力が宿っているとなると話は別です。ただ、何しろ、神自体、人の力を凌駕した存在ですので我々には感じ取れないのですが」
なるほど。例え魔法といえど、神の力には敵わないってことなのか?
あ。そういえば。この不可解な力、魔力なのかな。
「なぁ、シアラさんは魔力を感じられるのか?」
「えぇ。魔力感知能力がありますので……わっ、ニシミヤさん、すごい魔力ですね〜。フジタさんは…………一般人並ですね。かなり修行して、やっとほんの微かに感じ取れるくらい微弱な」
え? そうなの!? この変な力って魔力じゃなかったの!? びんびんに力感じているのですが!
「えっと、召喚魔法に強化系の不随効果があったりとかないの?」
「またですか!? コウジさんの時もそうでしたが……。よく、異世界からの召喚魔法には特殊な不随効果もあると思い込んでいらっしゃる方もいるのですよ〜。で、す、が!」
「そもそもそんなのはただそんな非日常的な、非平和的な思い込みでしかありまっせ〜ん♪」
「失礼します……シアラ様、政務の御時間です。本日は急に沢山の書類が届いておりますよ」
「あ、わかりました。覚悟しときます……でも、何ででしょう」
シアラに因れば、最近政務で忙しくなりそうな要因は一切なかったという。
少し疑問を感じながらも、シアラは椅子から立ち、
「ニシミヤ様は確かコウジ様と幼なじみでしたね」
「はい」
「では、いろいろと積もる話もあるでしょうし、先にコウジ様の部屋を御案内しましょうか?」
「……。お願いします!」
予想外の展開だったのか、ニシミヤさんは少し驚きながらも、うれしそうに着いて行った。
一人になってもやることがない。
仕方ないので、城の中を探検しようと意気込んだところで、
不思議な、青白く光る物体があることに気付いた。
――同時刻。
meragvilia視点
重ねて言うが、私の本質は『奇跡』、運命に抗う力。故に、運命を操れなければ元も子もない。
逆に彼の場合は、奇跡によって生まれた歪みは、奇跡を操る必要ないのだが。奇跡について、ある程度知っておかなければ、対処できない。
前に科学が発展し、地球とほぼ同等くらいの技術を持った世界にいって思ったことだが、奇跡と運命は、言ってみればコンピュータウイルスとシステムと近い。
正常なシステムコードを、ウイルスを送り込んで書き換えれば、システムは異常動作を起こす。
彼と私の違いは、彼は、異常な運命を、見付けやすくする力を持っていること。別に、運命をいじるなど、神であれば必死でやろうと思えば誰でもできることだ。むしろ、できない神のほうが多い。だが、とても高度なことなので、私も含めて彼のように上手くはいかないことが多いが。一方で、彼は奇跡というウイルスを運命のコードのどこら辺に埋めればどんな奇跡が起こるのか、という直感は私の足元にも及ばない。
逆に私は、奇跡を起こす際の直感はずば抜けているが、沢山のデータから正常な運命と異常な運命の差異を見分けやすくする能力を持っておらず、異常を察知するのが遅い。
コンピュータと違い、常に微弱に変動する運命。ただでさえか多すぎるのに、さらに揺れ動くその中から、異常コードを察知できる能力がないのは痛い。結局は、非効率的と知りながら、大きい異常になるのを待って、私の力も使って、それでも必死に必死に必死に考えて、やっと維持できていたくらいだった。
結局は、私は……奇跡の神には。奇跡を起こすことしか出来ないんだろうな……。
何となく後ろ向きな気持ちになる自分を、こんなんでは彼を困らせるだけだと叱責し、視点を彼に合わせた際に見えた光景を分析した。
destinoの居場所は、ファルシア国の王城の客間……。
その付近から二つも力を感じると思ったら、一つは本人だったとは……。
とにかく、近くに人がいると邪魔だ。私たちがこれから交わす話は人に聞かれていいものではない。
本当はよくないんだけど、運命を操って、彼を一人にするか………。
あまり得意ではない、けど。これくらいなら、何とかなるかもしれないな。
そう思って、ふと獣臭さを感じると。
「グルルルル……」
ダガーウルフ(ナイフの刃の部分ような形をした牙が特徴的な狼型の魔物だ)が現れた。
無闇な殺生は避けたい。
私は、とりあえずは外部干渉を拒絶、ようは周りからは触れることも見ることも、気配を察知することも出来ないようにした。
「さて、destinoに会いに行きますか!」




