第二部分
フジタ視点
光がおさまった。かと思えば、
「何だってんだ一体?」
そう、本当に何なんだこの珍体験。
あれか? 異世界に転移したってオチか? 俺も末期だなぁ、そんな非現実的なことを考えちまうなんて……悲しい。
そう思った俺は、周囲を見渡してみる。
前方:黒髪に黒眼、巫女服の少女。及びイケメン。因みに俺は巫女さんよりノーマルの方が好きだ。そしてその後方には木の扉がある。
右横:一見ごく普通の現代日本人だ。俺好みかも。
左横:甲冑を着た兵士。ごっつい。
後方:壁。扉があるが、異様に違和感を感じる。なんかこう、何かが込められているような……。
こんなもんでいっか。
状況確認終わり。早速話し掛けてみる。
「「あの、」」
おっと、巫女さんと重なってしまった。とりあえず、譲るか。
「あ、そちらからどうぞ」
「あ、ありがとうございます。それでは、若干予定と異なってしまったのですが、ようこそ勇者様!」
やっぱ来たよこの展開! 魔王を倒してほしいというあれだ!
「……と言いたい所ですが、誤作動です。勇者様、そして誤って呼び出してしまった御二方、申し訳ありません」
「俺は構わないよ? もう魔王は倒したんだし、ゆっくりしてっても大丈夫っしょ?」
勇者!? 魔王を倒した!?
……ようは、完全に間違って召喚されてしまったらしい。
「それでは、誤作動の原因を突き止め次第、調整し、再び勇者様送還の儀を御三方同時に執り行いますので、本日より一ヶ月、ごゆるりとお寛ぎくださいませ!」
そして、向こう側がすべて責任をとってくれるらしい。
よかったよかった……。
――十数分後。
さて。時は進み、今は案内されたばかりの客間に、巫女さんと女性と一緒にいる。
「そうでした。自己紹介がまだでしたね。私は当国第三王女、シアラ=ファルシアです」
「えええええ!?」
「貴女王女だったのですか!?」
「そうですけど……?」
それがどうかしたのかという目つきで見てくる。
「貴方達は?」
「藤多邦仁だ」
「西宮楓(にしみやかえで)です。」
「フジタさんにニシミヤさん。ですね? コウジさんと一緒でファミリーネームが先でいいのでしょうか?」
「お? よくわかったな……って、そうだよな、既に勇者召喚してたんだったよな」
何となく複雑な気分になった。
……。話題が無くなってしまった。
魔法も、元の世界ではあまり大々的には使えそうもないということで、案内中に教わらない方針で決まってしまったし、元の世界の話なら十分コウジってイケメンから聞いたらしい。
何か話すことないかな……。
……………………。
そういえば、さっきから何か体中に違和感感じるんだよな。
妙に力が満ちているというか……。
やっぱあの紙と言葉のせいなのかな?
『わが身に宿りし力を解放す』だったっけ?
確か、あの紙は光の消失が終わっても手元にあったはず……。
何かの手がかりになるかと思って、ポケットに突っ込んどいたけど、シアラさんなら何かわかるのかな?
そう思い、聞いてみた。
「シアラさん、これ、何だと思います? この紙を見た瞬間に、ある言葉が浮かんできて、それを口にだしたら変な光に包まれたのですが……」
「何でしょう……。魔法失敗の手がかりにも成り得るかも知れません。見せてくださいますか?」
「そのつもりで出しました」
そして、シアラさんがその紙を見た。
瞬間。
シアラさんの顔が変わった。
「どうしてこれを!? 貴方方の世界では信仰されていないと聞いたのに!」
「え? 何ですって?」
それから先は、まさに偶然の産物という表現でしか信じられない内容だった。
「この『魔法円に似た紋章』は……この世界で奇跡を司る神として崇められる『ミラヴィリア』の紋章です……」
――ほぼ同時刻。
ヒロイン(miraviglia)視点
思った通り。
彼は復活の直前、無意識に己の力を拒絶したのでしょう……。
さっきから感じた違和感。
複数の場所から感じる、彼の、destinioが持つべき、各方面の微弱な力を感じるこの違和感。
拒絶された力は砕け、いくつものカケラとなって散っていると言える。
数はざっと五つほど。しかし、これだけでは彼の全盛期の五パーセントにも及ばない。
恐らくは別の世界にもそれは及んでいることでしょう。
なるべく早く合流しないといけない。
今の彼では不老不死ではない。彼を守る力は、今は皆無に等しいはず……。
「これ、は……」
この付近に落ちているはずの彼の力のカケラだ。
砕けた神の力は神であれば目視出来る。
しかし、それだけだ。
特に、私の場合、運命を覆す『奇跡』を司る。
運命の管理と補修する彼とは対称をなし、互いに浄化しあうべきとまで言えるほどだ。
だからこそ、このカケラは彼自身でないと拾えない。
今は、場所だけ覚えておくことにしよう。
そう考え、私はdestinioの元へ向かうべく、視点を彼に重ね合わせた。
今のところ展開が早いです。早い展開が苦手な方には、申し訳ありません。




