片田舎のおっさん。王都に行ってもおっさんのままなのだが?
「若い弟子が1人もいなくなったぜ」
俺はリヒター36歳、田舎で武術道場を親子代々経営している一族だが、若者は皆都会に出て行った・・・
今は老人達に健康呼吸法を教えている。
「ゆっくり吸って・・・方向転換は魚の群れが向きを変えるがごとく!」
「「「「ほい」」」
老人達だから、型はゆっくりだ。
これは、もう、俺は必要ないな。
「若い弟子がいなければ王都にでも行けばいいじゃーないか?」
と言う事で、お袋と婆やを残して王都に行くことにした。
「リヒターや、生水に気をつけるんだよ」
「はい、母上もお元気で、仕送りをします」
「坊ちゃん。嫁を連れて来て下され・・・」
「婆や、任せろ」
王都に向かった。
俺の一派はゼークト流、徒手格闘が主の流派だ。
この流派を王都で広めるぜ。
王都に着いたらイベントが起こって美少女に慕われる。令嬢のお抱えになったりしないかな。
夢は膨らむぜ。
王都に着いたら掲示板に人だかりだ。
「ちょっと見せてくれ・・・何?王国一武闘会?」
「そうだ。勝てば名をはせるぜ。あのガルド王子もでるってよ」
「あんたも武芸者か?」
「そうだ!」
王都前広場で行われた。
俺は1回戦で・・・
「勝者王宮秘伝流派のガルド殿下!」
その王子に負けた。
「ウグ・・・」
「「「「ア~ハハハ、弱いね!」」」
「おっさんよえー」
結局、ガルド王子が優勝した。
奴は素早い拳の連撃と華麗な蹴りの王宮に伝わる流派だ。洗練されている。
「ガルド王子が王国一の武芸者である」
「ハ~ハハハハハ、我と戦いたい拳士はいつでも挑戦をうけるぞ!」
どうしようか。金はまだある。
道場でも開くか・・・・・しかし、客は来るかな。王国一武闘会1回戦負け・・・
☆☆☆一月後
「はっ」「はっ」「はっ」「はっ」
「そうだ、気合いは腹から!」
俺は下町で小さな庭付きの家を借りて、庭を道場として生徒を募集したらそこそこ集まった。
俺が庭で演武をやったら興味を持って来てくれた。
俺はゼークト流の拳聖だ。
これがコンソメスープの素。あくまでも流派の拳聖だ。まあ、自称だ。
初めに集まったのは主に子供達だ。
「今日はかっこよい蹴り技を教えるよ!」
「「「は~い」」」
見た目重視の流派と思われ人気急上昇だ。
「後ろ回し蹴りだ。頭を下げて行う」
「先生、当たるのですか?」
「さあ?でも格好いいよね」
免状を発行しそれで金を取る。免状も初球、中級、上級、奥義と段階を設けた。審査料が必要だね。
いいね。
大きく上半身を傾けて蹴る。すると威力がでるから・・・
「女性でも亭主の尻をけれるぜ」
老人達に教えた健康呼吸法を美人体操にした。何か健康に良さそうだ。
平民階級の女性もボチボチきた。
簡単に免状を発行するから、貴公子達もやってきた。
「あの、僕でも強くなれますか?」
「なれるとも」
「あの、痛いのもきついのも無理です。それでも強くなれますか?」
「なれるとも。うちは乱取り禁止だから痛くないよ」
実際は汗を軽くかくぐらいの運動だ。
そんなことをしていたら、何か、髪の毛がロールしている令嬢がやってきた。
「あなたがリヒター様ですね」
「はい、どなたですか?」
「メイル公爵家のエリザベーターですわ・・・」
「入門ですか?令嬢でも強く美しくなれますよ」
「いえ・・・今、ガルド殿下が猛威をふるっていますわ」
「へえ、優勝者ですね」
「・・・ガルド殿下は大会後、王都の武術界を統一すると言って道場破りを繰り返していますわ」
「ほお、なら、ゼークト流も合併かな」
「貴方は弱すぎるから一番後回しですわ。いずれこの道場に来ますわ・・・」
「うむ・・・そうですか・・・」
「他人事ではございませんわ」
確かに派手な蹴りに、腰に構えての拳で侮れているそうだ。
「私に何をして欲しいのですか?」
「せめて、一太刀を浴びせて欲しいのですわ・・・私の婚約は既に内定しいますわ・・・グスン」
何でも、令嬢は大公家のご子息と婚約が進んでいたが、王子が横やりを入れて拳で決着つけようとの話しになった。
「剣じゃないのか?」
「ええ、剣では死者がでますわ。それに王子の得意な武術ですわ」
「もう、ガルド殿下にかなう拳士がおりませんわ・・・」
「試合の条件は?」
「何でもあり・・・の超実戦と謳っておりますわ」
「分かった。なら戦おう。『何でもあり』なら得意です」
「えっ?はい?」
拳法か、華麗な蹴り、拳で見世物になれば平和なのに・・・
俺は弟子の中で比較的に強い奴を3人集めた。何故か全員女だ。
「赤毛のアニスに、帳簿係のリリー、メイドのマリー集まれ、聞いたか?王子が結婚を無理強いしようとしているぞ?君らは女として許せるか?」
「「「許せないわ!」」」
「なら、どうする?」
「「「やっつけるわ」」」
「よし、特訓するぜ!」
道場生を巻き込み。いざ天覧試合になった。
陛下がご覧になる試合だ。
当日、王城前広場で大勢の見物客がいた。
王子は派手なマントを身につけて既に武闘台に立ってた嫌みが増したな。
「エリザベーター、こいつをブチ殺したら婚約ヨロ~」
「殿下の仰せのままに、グスン」
「では・・・ルールですが、何でもありですな。ガルド殿」
「そうだ。大公殿、ゼークト流相手にルールはいらない」
立会人は大公か、苦虫をかみしめているような顔をだな。
貴賓席には大公子がいるか・・・これがエリザベーターの結婚したい相手か?拳を握って下を向いている。すぐに顔をあげさせてやるぜ。
武闘台に俺たちは・・・・4人であがった。
ガルド王子は苛立っているな。
「おい、誰が戦うのか?まさか女ではあるまいな」
「それは俺たち4人だ!いけー!」
「「「はい!」」」
4人がかりで殴り蹴った。
「ひ、何だ。これは!ちょっと待て!」
「何でもありでしょう?」
大げさな蹴りも拳も素人が威力を込めて放てるように進化した結果だ。
元々戦いは集団戦だ。乱戦で発展した流派がゼークト流だ。現代の一対一が異端なのだ。
ガルド王子の周りを回りながら後ろから蹴る殴るを繰り返した。
「ひ、卑怯だぞ!」
後ろを向いたら逆の方から俺が殴る。
「い、いて!血が出た・・・不敬罪だ!」
「これ、試合でしょ?」
俺は6歳の頃から修行した。30年の間、巻き藁を殴った拳だ。全く威力がないわけでなない。
「おい、アニス、皆、無理をするな」
「金玉蹴り!」
「ヒィ、やめろ」
アニスは隙あれば金玉を蹴ろうとする。困った娘だ。しかし、鋭いな。
「これ、アニス、金玉蹴りと技名を言ったらダメだぞ」
「うっかりしましたわ。金玉蹴り!」
「ヒィ」
慌ててよけるガルド王子を後ろから蹴った。
決定打はないが・・・30分後・・・・ガルド王子は膝をついて金玉を押さえるように防御するようになった。
「ガルド殿下、戦意喪失、よって、ゼークト流のリヒター殿の勝利!」
「ふ、ふざけるな!こえーよ。金玉狙うなよ!グスン」
陛下の裁定は・・・
「うむ・・・何でもありだからな・・・」
で俺の勝ちは確定した。
めでたくエリザベーターは大公子と婚約を結んだ。
恩に着てもらってエリザベーターに道場のオーナーになってもらおう。
「あの、お礼をさせてください」
「はい、公爵家お抱えの流派にして下さい」
「ヒイ、それは・・・分かりましたわ」
「アニスたちの金的蹴りが決定打です」
どうやら、金的蹴りが一代ブームになった。
後に俺の流派は令嬢マダム界にも進出した。老人の長生き体操だが美人体操にした。
「はい、美人体操です。ゆっくり吸って、方向転換は美しい鳥が飛び立つがごとく」
「「「分かりましてよ」」」
拳術なんて遊びで充分だ。
「リヒター、おっさんなのだから、服に気をつけなさいよね」
「はい、アニスちゃん」
近々、嫁を連れ帰郷する予定だ。
・・・江戸時代、弱いけどそれ故に発展した流派があった。位の桃井と言われた鏡新明智流である。初代は試合を挑まれたが逃げ続け。一番弟子は負け続けた。
それでも弟子が増え続けた。
一説には現代にも通じる竹刀による安全な打撃稽古を早くから取り入れていたからだとも。ほどほどを求める需要にマッチしたからとも云われている。
最後までお読み頂き有難うございました。




