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ドロボウとしての初仕事


 なんとなく、このワープする感覚というものが苦手なのだ。

 過去に何度かあった。ダンジョンのトラップに巻き込まれて、ワープ先でモンスターに襲われて痛い目に遭う。


 そんな過去は話題にすら持ちたくないのだけど、残念なことに現実は上手くいかないことのほうが多くて……。


「……ここが、今回のダンジョンね」


 頭を切り替えた私は、状況把握をする。

 ワープすると地下水脈ほどの薄暗さで、一本道が続いていた。近くにモンスターの気配は感じない。


 今は手元に水晶があって、ルテミシカがいる。

 魔法戦ならかなりの自信もある。学生時代と違って上位モンスターに恐れることはない。

 ひと呼吸を入れて、ダンジョンの探索としよう。


「ねぇルテミシカ、目当てであるオタカラはどういった形状をしているの?」

『恐らくは、アーティファクトだろうな』

「アーティファクトね……」


 学問で習った事がある。


 アーティファクトは魔道具の一種であり、街の職人が作り出すあらゆる武器の上位互換でもある。

 それをぬす――回収するのが、ルテミシカが私に対して期待している仕事なのだろう。


 とりあえず迷子にならないように、マーキングを始めておくか。


『我から聞いても良いか。モンスターがいないのに、魔法を使う理由はなんだ』


「私にとっては、朝飯前なんだけどなぁ……」


 魔法で地図を作成する。

 それに目印を入れていき、探索状況を理解する。

 実際に行動していく。


 私はそれをダンジョンの探索の基本なのだと思っているのだけど、世間一般とはやり方がちょっと違うのだ。


 世界にある地図なんて、材質が紙であることが殆どだ。

 稀に石版の形になって保存性も良いのだが、追加情報を直接書き出せないので効率が良いとは思えない。


「私は天才だから、ダンジョン攻略の際にはこうやって魔法で地図を書くの」

『なるほど』

「それで、探すべきアーティファクトは、どこにありそうかな?」


 現状、魔法の地図はちっぽけな程度しか描けない。


 少しダンジョン内を歩き回ったほうが良いのは分かっているのだけど、やろうとしていることは実質ドロボウらしいので、どこまで踏み入れても大丈夫かとかの判断は難しい。

 私が手が届かなさそうな細かい判断は、今のところルテミシカに委ねてみようと思う。


『探すべき場所なら、怪しい場所を調べるまで』


 急に熱く語ってきそうな雰囲気の口調を出してきたが、根本的に頼るのを間違っていたことを一瞬で自覚した。


「つまり……。ルミテシカには分からないってことなのよね」

『暴走したAIコアの住処であり、ダンジョンだから仕方ないだろう。我が力を使いすぎているのもあるだろうが……』

「できないことに言及するつもりはないですよ。他の案を考えるまでですから」


 私はルテミシカに弁解の言葉をかけながら、頭を回転させていた。


 現在の場所はダンジョンであり、住処でもある。

 住処ということは、人として見ると過程したら家だ。


 ここでルテミシカが言っていた『盗る』というワードにも、強く引っ掛かりを覚える。

 大切なものとまでいかなくとも、盗られたらいけないようなものは厳重に保管しているのが普通だろう。


 ……だとしたら、通常通りにダンジョンを探索していては、目的のオタカラを発見することが出来ない可能性が高いと判断できる。


 ここにセオリーを合わせるとしたら、隠し通路的な何かを探すべきだろう。


 考えは固まったので、とりあえず動いてみる。


 私は一本道の通路を進みはじめ、通路の突き当りでの大部屋を発見した。



 警戒しながら、ちらっと顔を覗かせてみる。


 ベヒューモスが二匹いる。

 魔力の気配は感じない。


 たしかベヒューモスの性質として、興奮状態にならないと魔力を外に流さない、だったかな。


『アレは倒すのか?』

「うん? いまはそんな仕事じゃないでしょ?」


 少しでも早くアーティファクトを探して、ここから持ち出す。


 そうしないと、新たなベヒューモスが街を襲う。

 私が協力してやろうとしていることは、本当にドロボウなのかどうか。


 ちょっぴり分からなくなった。


「いったん引き返すよ」


 私は大部屋から離れていく。無駄な戦闘は避けたいのもあるけど、通路に違和感が一ヶ所だけあったのを知っていた。


 少し戻って左手側。


 ダンジョンの壁に、ろうそくのマークがひとつだけ入っているところがある。

 明らかに怪しいこの壁、私の手で調べてみる他ないと思う。


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