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AIコア『ルテミシカ』との接触


 AIコアとは、異界の地より伝わる人工知能を、(いかずち)の大精霊ヴォルデウスが持つ濃密な魔力で凝縮した状態のものを指す。


 このAIコアというものは、商業施設の様々な用途として利用されている状況であり、魔法文明により力を入れている地域ほどより優秀なAIコアが出揃っているという話もある。

 特に魔法文明について盛んであり、世界に伝わるさぞかし有名な伝承の発端地とも言われているメギラト国ともなれば、AIコアは日常雑貨品を補助するパーツとして取り込まれているくらいには身近にあるものだったりする。


 そして、学園には厳格に保管せねばならない情報を持っていたりする故に、優秀なAIコアが校内に置かれている場合があったりする。

 私が働くことになったメギラト国の首都にある――王立クリーエズ魔法学園にも、AIコアが同じように用意されていた。


『学園内にドロボウは、我が許さないぞ』

「あの、いきなりドロボウ呼ばわりってどういうことですか? 私、新人教師なんですけど」

『ドロボウ、許さない。排除する!』


 AIコアは魔法陣を展開すると、雷撃を放ってきた。


 話、まったく聞かないなぁ……。

 とりあえず、隠し持っていた緑の表紙の魔導書を手のひらの上に用意する。


 これだからAIは、というあざとい思考はすぐに押さえ込んで『何処かへ消し去る』のは当然のこと。

 AIコアなんて普段は冷静沈着、非常時は特に人のような言葉を振る舞うこともあるが、感情の理解なんて一切出来ない。私がそういう認識をしている。


「……どうしよっか。これって魔導書で一発殴れば良いのかな?」


 ひとまず結界を張って、雷撃が当たることを避けた。


『この電撃を、止められた……?』


 AIコアが戸惑いの台詞を吐いたが、なりふり構わず次の行動に出る。


 全力で走って、滑り込むような形でAIコアの背後を取る。

 放ってくる雷撃は、魔法陣の表となる面が敵に向いていないと命中しないタイプのものなので、現在の立ち位置だと私に当てることは絶対に出来ない。

 ここで攻撃に転じれるよう、AIコアとの位置関係を一瞬で把握しなおす意識を持っておく。


 その場で体を捻って振り返りつつ、魔導書で横方向に強く叩こうとした。

 そのまま叩いたところでAIコアはピクリともしないと思ったので、初級クラスの風魔法を乗せて少しでもスピードを上げておく。


「これでどうですかっ」

『グエーっ!』


 私の魔導書が直撃すると、ドアがあった方向にAIコアがぶっ飛んだ。


 そのままAIコアがドアに直撃すると、ドアの外側に凄まじい漏電が発生したような光景が見られた。



「ふぅ……。これで、あっ……」


 叩いた後に気づいたが、私はひょっとしたら、かなりマズイことをやってしまったのかもしれない。

 学園内にあるAIコアはセキュリティーの役目を果たすものだから、これでもし壊れてしまったらと思うと、学園長とかにどう申し出たらよいのか……。


 私が頭の中で困っていると、フラフラと透明な球体が私の顔に近づいてきた。


『馬鹿め。この程度では、雷のコアなんて壊れぬ』

「あっ、無事だった」

『ドロボウよ。貴様に心配される筋合いなんて、全くないってことだ。フハハハハ』

「むっ……」


 AIコア、むしろさっきより口が悪くなったような。


 心配した私が損した気分になった。

 ムキになっても仕方ないと分かっていても、態度はやっぱりムカつくかもしれない。


「というか……どうして私がドロボウ呼ばわりされないといけないのですか?」

『侵入したのだから、ドロボウでは?』

「私はこの学園の新人教師です、ちゃんと顔を覚えて下さい。あと私は鍵忘れて取りに戻っただけであって」

『顔の認証再確認……合致データあり』


「ほらねっ!」


『これは失礼した。現在、我々は緊急を要する事案の解決に手をかけてしまっていて、余計な心配をさせた。猫の手も借りたいといえるのは事実なのだが』

「あれっ……残業の話ですか。それならご遠慮したいと思いま……」


 言動が少し気になってしまい、私の口が無意識に止まっていた。


 AIコアがその手の話をするなんて聞いたことないし、本当に何かあるのかもしれない。

 そのまま静かに待っていると、AIコアから次なる台詞が吐き出されていく。


『新人教師の、ドロボウよ。急に申し訳ないが、我ら学園の手が足りぬ事案に協力することは出来ないか?』

「ドロボウ抜けてないけど、もう良いか……。あの、詳しい説明をお願いします」


『では詳しく伝えるぞ。この街、夜になるとダンジョンが現れるようになったのだ。今から三ヶ月前からだ』

「ここって大きな街ですよね。ダンジョンだなんて……どうして?」


「原因は暴走したAIコアにある。我々と同じ、いや、我が名はルテミシカ。街に異常をもたらす暴走したAIコアには、そもそも名がついていなことが殆どだ」


「AIコアがわざわざダンジョンと定義しているのだから、恐らくモンスターもいるのよね。もしかして、それを放置するとモンスターが夜の街を暴れてしまうってこと? だとしたら相当マズイような……」


『まずは外に出るぞ。ドロボウには、我がルテミシカの化身をお渡しするから変な心配はご不要だ。余計なサービスだと思って、遠慮なく受け取れ』


 そう言われると、小さな水晶のような球体を持たされた。


 私の瞳と同じ色味のアクアマリン。何か特別な意味は、流石になさそうかな。

 本体となるAIは学園内に存在しないといけないみたいなので、この化身を使って私を案内するとのこと。


 早速だが、魔法学園の外に出てみた。



 夜の風がとても気持ち良いはずなのに、どこか気持ちよくなれない私がいる。

 このモヤモヤを消すためには、この目で詳しく確かめる他ないと思う。


「ルテミシカ、私は今からどう動いたら良いですか?」


 私が水晶に問いかけると、返事がすぐさま返ってくる。


『暴走したAIコアは『オタカラ』を持っている。それをダンジョンという住処から探して、盗ってくるのが役目だ』


 ……あの、すみません。

 それって普通にドロボウがやることなのでは。


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