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28話  作者: マグciel
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ウォードルス王国西端、港町の様子

 「...さて、城に戻りましょうか。」

ヘスティアは白を背負うと、ゼータを連れて城の方へ向かった。

王城に戻り城門に居た兵士に空き部屋へと案内されると、そこには既に他の者たちが帰ってきていた。

白を寝かせた後、各員の情報を交換した。

「なるほど、私たちが向かったゲート以外にはそれぞれモンスターが居たのね。夜陰教団と共にモンスターが現れるなんて...」

ヘスティアは他の者たちの話を聞き、違和感を覚えた。

前に夜陰教団やいんきょうだんとストルム王国で戦った時はあたりにモンスターは居なかった。

奇襲作戦だったからって可能性もあるけど、もしかしたら別の何かが関わっているのかしら。

もしそうだとするならば賢者に対して敵対していてモンスターを使役できる存在...

「...殱誓天せんせいてん。」

「確かに暗黒神の配下である殱誓天が関わっているのだとすれば説明がつくかもしれませんね。」

アルスもヘスティアと同じ考えに至ったようだった。

ディアが言っていた“探し物”はここ、ウォードルス王国や夜陰教団だけでなく、殱誓天にとっても何か意味のある物なのかもしれない。

けどこの国にある物が“探し物”であるかは分からないとも言っていたし、明日王様に心当たりがないか聞いてみた方がよさそうね。

「ねぇ、アルス。」

「エリス、どかした?」

「港町の方にもゲートが出現してるって言ってたけど、なんでなのかな?」

エリスはずっと疑問に思い考えていた。

話を聞いた感じだと、全戦力で王都に攻め入った方が目的を達成する為には最適なんじゃないか。

それにゲートの数がこちらとあちらで違うことも分からないし、王国にある物が“探し物”であるかも不確定であるなら、もっと調査をした後で手を出すか、攻め落として確認するかの二択だと思う。

そんなエリスの疑問に対し、憶測ではあるもののアルスが答えた。

「まだ正確なことは分からないけど、港町にゲートを置いたのは、“探し物”がウォードルス王国領内から出ないようにするためだと思う。こっちのゲートで出た戦力と同程度の戦力が港町のゲートから出現してるって考えると、敵は王都と港町の重要度を同じだと考えている可能性が高い。王都の方のゲートが3つもあったのは、王都の守りが硬くて港町の方にも戦力を割いていると一気に攻め落とせないと考えて、段階的に攻め続けることでこちらの継戦能力を削ろうとしたのかもしれないね。」

「へ~」

アルスの話を聞いたエリスはよくわかっていなさそうな返事をした。

今は事実と憶測が錯綜さくそうしているし、情報がもっと集まった後にまた考えよう。

取り敢えず今日は休んで、明日父さんに港町の方の情報を聞いた方がよさそうだな。

そうアルスが考えていると、それを察したのかヘスティアが区切りをつけた。

「みんなも疲れているでしょうし、今日はもう休みましょうか。」

賢者たちは十分な睡眠を取り翌日、白を除く6人で玉座の間へ来ていた。

玉座にはアルスの父親でありこの国の王でもあるブラウ・レーヴ王が座っていた。

「賢者達よご苦労であった。して、ゲートの方はどうであった?」

「はい。ゲートは私たちが無事対処して参りました。ですが、中には夜陰教団を名乗る者が現れたため、そちらも撃破いたしました。国王様はそのような教団について何かご存知でしょうか。」

ヘスティアが昨夜起きたことを報告しつつ、夜陰教団についてブラウ王に聞いた。

王様が夜陰教団と関わりがあるとは思っていない。

港町の方にも夜陰教団の一員が姿を現したのだろうか、またそれ以前にも夜陰教団を名乗る者と会ったことがあるのか。

そんな意図がありながらヘスティアはブラウ王に質問をしたのだった。

「うむ、夜陰教団...確かにその名は聞いたことがある。この国でも数名関わりがあるであろう者達を捕らえておる。話したいことがあるのならば聞きに行ってみるとよいだろう。それと、港町の方でも夜陰教団を名乗る者が現れたと聞いた。その者はルナ殿によって撃破されたとのことだが、ルナ殿を含め多くの兵たちが負傷しており、ゲートの破壊も済んでいない状況である。再びモンスター共に攻められては港町が壊滅する危険もあるだろう。…王都を救ってくれた矢先、このようなことを頼むのは忍びないが、港町の方に救援に行ってくれぬか?」

「ええ、構いません。私たちも港町の状況を把握し、必要であれば救援に行くつもりでしたので。」

間を空けることなくブラウ王からの頼みを承諾した。

アルスから港町についての情報をブラウ王に聞くように言われてたし、その後の対応に関しては私が勝手に決めていいのかは分からないけど、白が動けない以上私かソイルの判断で動くのが最善。

皆は港町に居る人たちの事を見捨てるような人たちじゃないし、問題ないはず。

「感謝する。おそらく数日は何事も起こらぬとは思うが、もし王都で襲撃があったとしても我々で対応する。それと白殿についてだが、彼女に用事のある者がいるという事で、こちらに残ってもらいたい。」

「そちらの件も了解いたしました。」

「では白殿の目が覚めた後、こちらから事情を説明しておく。港町の事を頼む。」

そうして謁見が終わった賢者たちは王都を出る準備をした。

白が寝ている横で何やらエリスは寂しそうな顔をしていた。

「お姉ちゃん...」

「こいつが心配か?」

「うわぁ!?小夜お姉ちゃん、びっくりした~。」

お姉ちゃん?神である俺に対してお姉ちゃん...

こいつに憑いてるからそのつながりで俺の事もお姉ちゃん呼びしたのか。

突如白から出てきた黒いもやがエリスに話しかけた。

「安心しろエリス、俺がいる限りこいつは死なねぇよ。それより次こいつに会った時、“賢者としてしっかり活動していた”って言えるように頑張れよ。」

「小夜お姉ちゃん、白お姉ちゃんみたいに優しいね。よし、私お姉ちゃんに褒めてもらえるように頑張るね。それじゃあ、行ってきま~す。」

すっかり元に戻ったエリスは、他の4名を追うようにして扉の近くで待っていたアルスと共に、用意された馬車の方へと向かった。

十何年こいつに憑いてるせいか、少し影響を受けてるみたいだな。

俺が影響を受けてるってことは、こいつとのつながりが強まっているという事。

つまりこいつが俺の力に対応し始めてるってことな訳だな。

喜ぶべきところなんだろうが、こいつみたいにはなりたくねぇな。

それにしても、“小夜お姉ちゃん”か...悪くないな。

こうして密かにお姉ちゃん呼びを喜んでいた神は、白の中へと戻っていった。

 馬車に乗った賢者たちは、一日,二日と何事もなく進んでいき、三日目の朝には港町まであと少しの所まで来ていた。

「?あの辺に誰かいるような...」

ヘスティアが目を凝らしてみると、一人の少女がモンスターと戦っていた。

しかし少女はふらついており、なんとか攻撃を回避しながら剣を振るっている状況だった。

あの少女を助けなければいけないけど、魔法では少女に当たってしまう可能性があるし、このまま馬車で行っては間に合わなくなるかもしれない。

だがヘスティアはとある案を思いついた。

「アルス、私とあの子の近くへ一緒に転移して!アルスはあの子をお願い。」

「分りました。テレポート。」

アルスはヘスティアに触れると転移魔法を唱え、少女の近くへと転移した。

その様子を確認した少女はゆっくりと倒れたためアルスが治療にあたり、ヘスティアは近くに居た狼型のモンスター4体と対峙した。

「フラム。エンチャントフレイム。はぁぁぁ!」

ヘスティアは瞬く間にモンスターを切り裂いていき、そこに居たモンスター達を撃破した。

元の状態に戻ったヘスティアはアルスの元へ近づいた。

白と青のグラデーションの髪、全身に血の滲んだ包帯を巻いた上に白いローブを羽織っていた少女はアルスの治療により、表情が和らいでいた。

「アルス、その子大丈夫かしら?」

「回復魔法を使いましたので傷は塞がっていますが、数日は安静にした方がいいかと。馬車に乗せて港町へ行く程度であれば大丈夫ですので、急ぎましょう。」

2人はその少女に心当たりがあった。

先日港町のゲートに現れた夜陰教団を倒したマスターランク冒険者。

ここまで深手を負ってまだ戦っていた所を見るに、彼女が“ルナ”であると。

この子は何でこんなところで戦っていたのだろうか、あのモンスター達はなぜここに居たのかなど、知りたいことは色々あったが、一先ず馬車に乗せて港町へと向かった。

馬車内ではヘスティアがルナの様子を見つつ、港町に着くと出入り口付近ではソイルが兵士に事情を話した。

すると兵士は自身らが駐屯している場所へと賢者達を案内し、ヘスティアはルナを指定の場所に休ませると、そこの兵士たちを取り仕切っている者に事情を聴いた。

「初めまして、私は王国軍第一師団長を務めているフォーグという者だ。今回は救援に来ていただき感謝する。賢者の皆さまの活躍は国王陛下から聞いている。よろしく頼む。」

港町の外北部にあるこの駐屯地には多くのテントが設営されており、案内されたテントに居た銀髪で筋骨隆々の男性、フォーグが挨拶をした。

「よろしくお願いしますフォーグさん。私たちについて知っているという事は、こちらの事情は把握しているという事でよろしいでしょうか。」

「ああ、王都周辺に出現したゲートの破壊に夜陰教団員の撃破を行い、王都を救ってくださったと陛下はおっしゃっていた。」

「ではまずはこちらの状況の説明をお願いできますか?」

「もちろんだ。陛下からも聞いていると思うが、こちらに現れた夜陰教団員“モルセーゴ”という男はルナ殿により撃破された。だがそれまでにこの師団のうち約30名が死亡、100名以上が重軽傷を負い、兵站に従事する者以外で現在動かせる兵は50名程で、ゲートの破棄も済んでいない。我々ではモルセーゴに歯が立たず、ルナ殿が居なければこの街が壊滅していた可能性があると考えると、住民の死者が出なかったのは不幸中の幸いと言える。」

ヘスティアはあたりに充満している血の匂いを感じながら考えていた。

少なくない犠牲に多くの負傷者が出ている。

もし自分たちが早く来ていればこの被害を抑えられたかもしれない。

だが今は彼らの死をいたむよりも先にゲートの対処をし、犠牲が無駄ではなかったと示すことが重要だろう。

「...こちらの状況は分かりました。ゲートの対応は私たちに任せてください。それと、ルナさんが重症でありながら街の外に出ていた理由に関して心当たりはありますか?」

「実はゲートの出現と共に海の魔物が活発化するという事があるため、ルナ殿にはそちらの対応に向かってもらったのだが、モルセーゴが現れてから急遽ルナ殿に助けを求めたのだ。そこでルナ殿は苦戦を強いられながらも勝利した。だがそれにより、ゲートから出現した魔物たちが南の森へと逃げてしまったのだ。おそらくその残党を対処しに向かったのだと思う。」

なるほど、ルナとモンスター達がなぜあの場所に居たのかは分かった。

そしてここに来て新しく得た情報、海の魔物たちにも対応しなければならないという事。

ヘスティアは自分たちがどう立ち回るべきなのかを考えていた時だった。

「失礼します。フォーグ団長、賢者の皆さまを迎えるテントの設営が完了しました。」

「では皆様を案内して差し上げろ。」

「は!」

「現在港町の宿屋は運営できる状況ではないため、簡素なテントになってしまうが、申し訳ない。」

「気にしないでください。物資も少ないであろう中、わざわざ用意していただきありがとうございます。」

そうして賢者たちは周りの様子を見ながら歩き、少し離れた位置にある二つのテントへと案内された。



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