表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/41

第29-4話 インドネシア国会 リゾート開発 反論開始-ストーリー戦略

その眼には、諦めではなく——新たな決意が宿っていた。


賢がマイクに手をかけ、静かに、しかし確かな声で言った。


「議長、発言をお許しください」


議長が頷いた。「……どうぞ」


賢が、野党議員たちを真っ直ぐ見つめた。


「野党の皆様、一つ質問させてください」


会場が静まり返った。参考人が、議員に質問する——異例の展開だ。


賢が続けた。


「皆様は、このプロジェクトに反対されています。それは理解しました」


「では——」賢の声が、議場全体に響いた。「どのような条件があれば、賛成していただけるのでしょうか」


会場がざわめいた。


与党議員たちが驚いた表情で顔を見合わせる。「逆質問だと……」「こんな展開は初めてだ」


野党議員たちも、一瞬言葉を失った。


賢が続けた。


「このまま政治的対立を続けても、議論は前に進みません。国民の利益にもなりません」


「皆様が納得できる条件を、具体的に教えてください」


「それを満たすことができれば、このプロジェクトを前に進められるはずです」


ベテラン野党議員が、しばらく沈黙して、考えた。


——この様子は国中でライブ中継されている。そしてこの参考人が誠実且つ的確に我々の質問に回答をし続けているのは国民も分かっている。そしてその参考人が今一つだけ質問を返した。異例ではあるが、この質問に答えない訳にはいかないか——


ベテラン野党議員はゆっくりと口を開いた。


「……条件、か」


ベテラン野党議員が他の野党議員たちと目配せした。そして、賢を見据えて言った。


「では、言おう」


「もし、このプロジェクトが——第三者によって、国際的に認められるのであれば——」


議員が続けた。「その時は、我々も賛成を検討する」


会場が、一瞬で静まり返った。


そして次の瞬間——。


「無茶を言うな!」


「国際的な認定など、どうやって取るんだ!」


「そんなの不可能だろう!」


与党議員たちが、一斉に抗議の声を上げた。


威風が、小声でつぶやいた。「これは……事実上の拒否だ」


鳴子が頷いた。「可能性があるのはダボス会議?でも開催は9ヶ月後。取れる保証もない……」


ベテラン野党議員が、満足そうに微笑んだ。


これで——終わりだ。不可能な条件を突きつけたのだから。


議場全体が、再度、諦めのため息に包まれた。


しかし——。


その時——。


賢は言った「皆さんにお見せしたいものがあります」


議場の大型スクリーンが、突然点灯した。全員の視線が、一斉にそちらを向く。


スクリーンには——国連本部のロゴが映し出されていた。


そして、その下に——。


「LIVE from UN Headquarters, New York」


会場がざわめいた。


「UNって国際連合だぞ」「ニューヨーク?」「何の中継だ?」


議長も、驚いた表情でスクリーンを見つめている。


画面が切り替わった。


そこには——青天澄香が、国連本部の会議室で、カメラに向かって立っていた。


彼女の背後には、国連の旗が掲げられている。


澄香が、落ち着いた声で語り始めた。


「インドネシア国会の皆様、こんにちは。私は、インペリアルスカイグループの青天澄香と申します」


「この数週間、私はニューヨークの国連本部で、ある交渉を続けてきました」


「そして、たった今——」澄香が文書を掲げた。「正式な確約を得ました」


会場が水を打ったように静まり返った。


澄香が宣言した。


「国連経済社会局より——日本政府とインドネシア政府の戦略的パートナーシップに基づくバリ島リゾート開発プロジェクトを、SDGsベストプラクティスとして正式に認定するという確約を得ました」


会場が——爆発した。


「何だと!?」


「国連が認定!?」


「ベストプラクティス!?」


議員たちが一斉に立ち上がり、騒然となる。議長が何度も木槌を叩くが、誰も座ろうとしない。


傍聴席の威風が、驚愕の表情で画面を見つめた。「澄香さん……まさか、ずっとこれを……」


鳴子が頷いた。「だから、ニューヨークだったんですね……」


澄香が続けた。


「まず、SDGsについて説明します」


「SDGs——Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標とは、2015年に国連で採択された、2030年までに世界が達成すべき17の目標です」


「貧困、飢餓、健康、教育、ジェンダー平等、クリーンエネルギー、経済成長、技術革新、不平等の是正、持続可能な都市、気候変動対策、海洋・陸上資源の保護、そして国際パートナーシップ——」


「これら17のゴールは、全ての国連加盟国が合意した、人類共通の目標です」


澄香が続けた。


「そして、SDG Good Practicesとは、国連が世界中のSDGs実施事例の中から、特に優れた模範事例を選定し、公式に認定する制度です」


「認定されたプロジェクトは、国連の公式プラットフォームに掲載され、世界中の国々が参考にする模範例となります」


澄香が資料を示した。


「このプロジェクトは、SDGsの17のゴールのうち、12のゴールに直接貢献すると評価されました」


「Goal 1(貧困削減)、Goal 4(教育)、Goal 5(ジェンダー平等)、Goal 7(クリーンエネルギー)、Goal 8(経済成長)、Goal 9(技術革新)、Goal 10(不平等是正)、Goal 11(持続可能な都市)、Goal 12(持続可能な消費)、Goal 13(気候変動対策)、Goal 14&15(環境保護)、Goal 17(パートナーシップ)——」


澄香が力強く語った。


「これほど多くのゴールに貢献するプロジェクトは、世界でも極めて稀です」


「だからこそ、国連がベストプラクティスとして認定したのです」


澄香が、カメラを通して議場全体を見渡すように語った。


「この認定は、インドネシア共和国にとって、何を意味するか」


「インドネシアは、国際社会からSDGsのリーダーとして評価されます」


「国連での発言力が増し、G20での存在感も向上します」


「他の国々が、『インドネシアに学べ』と注目します」


「これは、インドネシアの国際的地位の飛躍的向上を意味します」


澄香が深く一礼した。


「以上、ニューヨーク国連本部より、ご報告申し上げます」


画面が暗くなった。


議場は——静まり返っていた。


長い、長い沈黙。


そして——。


ベテラン野党議員が、ゆっくりと立ち上がった。


その表情は、もはや敵対的ではなかった。


重い口調で語り始めた。


「……国連が、認定した」


「SDGsの12のゴールに貢献する、ベストプラクティスだと」


周囲の野党議員たちを見渡した。


「これは——もはや、与党vs野党の問題ではない」


「国連が認めたプロジェクトを、我々インドネシア国会が拒否できるか」


ベテラン野党議員が、賢を真っ直ぐ見つめた。


「参考人、見事だった」


そして一礼をして言った。


「我々野党は——賛成する」


他の野党議員も、次々と立ち上がった。


「これは、国家の名誉だ」


「インドネシアの未来のために、賛成します」


「国連が認めたプロジェクトを、我々が支持します」


議長が、議場全体を見渡し——


静寂の中で、厳かに宣言した。


「それでは、採決を行います」


賢の心臓が、激しく鼓動した。


一瞬の沈黙。


そして——


「賛成」「賛成」「賛成」


次々と挙がる手。


結果——全会一致で、承認。


その瞬間、会場が爆発した。


轟音のような拍手。


議員たちが次々と立ち上がり、スタンディングオベーション。


涙を流す議員もいた。


賢は、込み上げる感情を抑えきれず——


深く、深く一礼した。


そして、インドネシア語で、魂を込めて。


「Terima kasihありがとうございます


「インドネシアの未来のために」


その声は、震えていた。


しかし、力強かった。




——国会承認から、わずか24時間後。


両国間パートナーシップが、正式に効力を発動した。


まず——。


アジア開発銀行(ADB)本部から、正式な通知が届いた。


「融資決定。金額:3000億円」


ADB総裁のコメント:「国連が認定したSDGsベストプラクティスを、ADBが支援できること光栄に思います。インドネシアと日本のパートナーシップを、全面的にバックアップします」


次に——。


東京のJOIN(海外投融資・出資)から、連絡が入った。


「投資保険決定。カバー率:95%」


JOIN担当者のコメント:「政治リスク、為替リスク、全てカバーします。国家プロジェクトですから」


そして——。


日本政府とインドネシア政府から、共同声明が発表された。


「両国間戦略的パートナーシップの旗艦プロジェクトとして、合計1000億円拠出し、全面的に支援する」


これで——全てが揃った。


日本とインドネシア、両国の誇りを懸けた錦の御旗が、今、高々と掲げられた。




——その夜。


ジャカルタのホテル。


賢、威風、鳴子の3人が、一室に集まっていた。


威風が、賢を真っ直ぐ見つめた。


「賢さん、一つ聞きたい」


「なんで、国連の認定のことを、我々に黙っていたんだ?」


賢が、静かに答えた。


「申し訳ありませんでした。しかし——」


賢が続けた。「これは、トップシークレットでした」


賢が説明した。


「高度な機密情報は、誰が盗聴しているか、あるいはハッキングしているか分かりません」


「電話も、メールも、オンライン会議も——全て傍受される可能性がある」


「もし、野党側が事前に国連認定の情報を掴んでいたら——」


「彼らは、別の戦略を立てていたでしょう。最悪の場合、国連への圧力すらあり得た」


鳴子が頷いた。「……それは、そうですね」


そして続けた。「情報戦の基本。切り札は、使う瞬間まで隠す」


「確かに」威風が、納得した表情で言った。


「しかし——」威風が続けた。「野党から条件を引き出してから、映像を流したのは見事だった」


「ライブ中継もされている中、あれで、野党は賛成せざるを得なくなった」


威風が賢を見つめた。「あれは——作戦だったのか?」


賢が、ゆっくりと首を横に振った。


「いいえ。作戦ではありません」


威風と鳴子が、驚いた表情で顔を見合わせた。


「ただ——」賢が静かに微笑んだ。「窮鼠猫を噛むという言葉を、ご存知ですか?」


賢が、遠くを見る目で語った。


「ネズミは、追い詰められて初めて——切り札を出すのです」


威風が続けた。「計算ではなく——本能だった、と」


鳴子が微笑んだ。「計算された作戦よりも——本能の一撃の方が、時には強い」


賢が笑顔で返した。


威風が感心して言う「全くうちのリーダーはさすがだぜ」


鳴子も頷く「大仕事、ばっちり決めましたね、リーダー」


賢は言う「ありがとう」


そして二人に言った。


「威風さんの外交、鳴子さんのスケジューリング、澄香さんの国連交渉——」


「全てが揃って、初めて成功しました」


3人が、静かに頷き笑顔を交わした。


「本当に大きな旗が立ちましたね」賢が言った。


そう言って3人は自然と窓の外に目をやる。


そして3人はしばらく、 窓の外から遠くに見える日本とインドネシアの国旗を眺めていた。


続く

ーーーーー

登場人物紹介


子田賢ねだ・けん - ネズミ。プロジェクトリーダー。

 全体を俯瞰し優れた分析力と観察力を持つ。


牛田継続うしだ・けいぞく - ウシ

 着実に前進する実行力と信念を持つ。


虎山威風とらやま・いふう - トラ

 力強い実行力を持つ戦略家。


兎野理子うさぎの・りこ - ウサギ

 慎重なリスク分析の専門家。


龍雲昇天りゅううん・しょうてん - タツ

 圧倒的なカリスマと人を魅了する力を持つスター。


蛇原静香へびはら・しずか - ヘビ

 人の観察に優れ本質を見抜く洞察力の持ち主。


馬場疾駆ばば・しっく - ウマ

 自由を愛し新しい風を吹き込む風雲児。


羊谷和奏ひつじたに・わかな - ヒツジ

 優しく人々を調和させ、団結させる力を持つ。


猿田新々(さるた・しんしん) - サル

 機転と発想力に優れるがあきっぽい。


鶏鳥鳴子けいちょう・めいこ - トリ

 厳格な管理能力を持ち、組織の秩序を守る。


犬塚潜在いぬづか・せんざい - イヌ

 次期リーダー候補と言われた若手エース。


猪野勇進いの・ゆうしん - イノシシ

 愚直でひたむきで真っ直ぐ突進する。

ーーーーー

お読み頂きありがとうございます。


応援の方、宜しくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ