第27-1話 ファルコングループとの提携(前半)
前半
ストーリー戦略4チームの3人——理子、潜在、星野達也が、東京のファルコングループ本社を訪れていた。
エレベーターの中で、理子が深呼吸をした。「鷹見さんに会うのは1年ぶりです。緊張します」
潜在が優しく言った。「理子さん、あなたなら大丈夫です。システムインフラ、その絶対条件は安定稼働。その安定稼働にはリスク分析が必須。その点においてあなた以上の適任者はいません。信頼して自分らしくいてください」
理子の緊張が少しほぐれた。
高層ビルの最上階。鷹見透が待っていた。ファルコングループCTO(最高技術責任者)に当然のように出世していた 。40代後半、鋭い眼光と穏やかな笑顔を併せ持つ男。
「理子さん、久しぶりだね」鷹見が手を差し出した。「前のプロジェクトでは、君の慎重な分析に何度も助けられた」
理子が笑顔で握手を返した。「鷹見さん、お久しぶりです。今日は、大きなお願いがあって参りました」
鷹見が興味深そうに聞いた。「バリ島のプロジェクト、噂は聞いている。5000億円規模の大型リゾート開発だとか」
潜在が資料を広げた。「鷹見さん、バリ島のリゾート内に世界最先端の通信インフラを構築したいんです。6G網、IoT、スマートグリッド——全てを統合した、未来型リゾートを」
鷹見の目が輝いた。「興味深い……具体的には?」
潜在がプレゼンを始めた。「リゾート内の全ての施設——ホテル、レストラン、インフラ——を6Gで接続し、リアルタイムでデータを管理します」
「電力需要の最適化、交通の自動制御、顧客サービスのパーソナライズ化——全てをAIで実現します」
星野達也が補足した。「システム全体は、ファルコングループの技術を核にした統合型プラットフォームを想定しています。6G基地局、IoTセンサー、スマートグリッド——これらを一つのシステムとして機能させます。インペリアルの技術もサポートさせて頂きます」
鷹見が真剣な表情で聞いていた。彼の目は、プレゼンの一つ一つの詳細を分析していた。鷹の眼力——それは、複雑な情報を瞬時に分析し、本質を見抜く力。
潜在がプレゼンを終えると、鷹見が真剣な表情で言った。
「潜在さん、星野さん、理子さん。お話は大変興味深いです。しかし——」
鷹見が資料を閉じた。「申し訳ありませんが、やはりバリ島という環境は、6G網の構築に適していません。この案件はお受けできません」
3人が驚いた表情を見せた。
潜在が慌てて言った。「鷹見さん、どういうことですか?」
鷹見が説明した。「バリ島の気候——高温多湿、塩害、スコール。通信機器には極めて過酷な環境です。通常の6G基地局では、半年以内に故障率が30%を超えます。さらに、電力供給の不安定さ——これらを考えると、リスクが大きすぎます」
「ファルコングループは、リスクのあるプロジェクトには参加できません。申し訳ありませんが、今回はお断りさせていただきます」
会議室に重い沈黙が流れた。潜在と星野も、言葉を失った。
その時、理子が言った。「鷹見さん、お待ちください」
理子が資料を広げた。「私、バリ島の環境リスクについて、定量的な分析を行いました。まだアイディア段階ですが聞いていただけますか?」
鷹見が興味深そうに頷いた。「どうぞ」
理子が深呼吸をして、説明を始めた。
「確かに、鷹見さんのおっしゃる通り、バリ島の環境は過酷です。しかし——『通常の技術』では困難でも、『特殊な技術』なら対応可能だと考えます」
理子が資料を示した。「ファルコングループの過去のプロジェクトを調べました。中東の砂漠地帯や沖縄、これらの環境は、バリ島と似ている面がある。しかし、ファルコンの通信インフラは安定稼働しています」
鷹見が驚いた表情を見せた。「よく調べていますね……」
理子が続けた。「具体的には、2つの技術の組み合わせを提案します」
理子が資料を示した。「第一に、中東で試験運用中の耐塩害・耐高温技術。砂漠地帯の過酷な環境でテストされています。第二に、沖縄で安定稼働中の台風・高湿度対応技術。この2つを組み合わせれば、バリ島の環境に対応できるはずです」
理子がホワイトボードに数値を書き出した。
【バリ島環境リスクの定量分析】
1. 塩害リスク:通常技術では故障率30% → 沖縄の耐塩害技術で故障率5%以下に低減
2. 高温多湿リスク:通常技術では性能低下40% → 中東の耐高温技術 + 沖縄の高湿度対応技術で性能維持95%以上
理子が鷹見を真っ直ぐ見つめた。「総合的なリスク評価では、中東の技術と沖縄の技術を組み合わせれば、リスクは『管理可能』レベルまで低減できる可能性があります。そうなれば十分にマネージできます」
鷹見が深く息を吸った。「理子さん……よく調べましたね。確かに、中東の試験運用技術と沖縄の安定稼働技術——その2つを組み合わせれば、塩害リスクと高温多湿リスクは管理可能かもしれません」
鷹見が資料を見直した。「しかし——電力供給リスクについては、どうしようもないのではないでしょうか?太陽光パネルでの対応が一般的ですが、バリ島は天候が不安定です。雨季には太陽光発電は十分に機能しません」
理子が冷静に答えた。「その点については、既に対策があります。このプロジェクトでは現在、バリ島北部に地熱発電所を建設予定です。来年の完成を予定しています」
星野達也が補足した。「地熱発電は、天候に左右されない安定的な電力供給が可能です。火山活動が活発なバリ島は、地熱資源が豊富です。この地熱発電所からリゾートへの専用送電線を引くことで、24時間365日の安定供給を保証できます」
鷹見が驚いた表情を見せた。「地熱発電所……それなら、電力供給リスクも解決しますね」
鷹見が考え込んだ。「塩害、高温多湿、そして電力供給——全てのリスクに対策がある。それなら、可能性があるかもしれません。一度社内で検討します」
潜在と星野が驚きと安堵の表情を見せた。理子の提案が、可能性を開いたのだ。
潜在が目を輝かせた。「鷹見さん、ぜひよろしくお願いします」
鷹見が頷いた。「分かりました。1週間ほど時間をください。国際技術部門と協議して、詳細な検討を行います」
1週間後、鷹見から連絡があった。潜在、理子、星野達也は再びファルコングループ本社を訪れた。
鷹見が資料を広げた。「理子さんの提案について検証しました。結論から言うと——可能です」
3人が顔を輝かせた。
鷹見が続けた。「中東の耐塩害・耐高温技術と、沖縄の台風・高湿度対応技術を組み合わせれば、バリ島の環境でも安定稼働できます。幸いにも中東の技術は既に実用レベル段階。技術的な実現可能性は確認できました」
潜在が安堵の表情を見せた。「それは素晴らしい!」
しかし、鷹見の表情が曇った。「ただし——一つだけ、大きな問題があります」
鷹見が資料を示した。「中東の技術と沖縄の技術を組み合わせた特殊環境対応の6G網を構築する場合、コストは通常の倍になります。最低でも600億円必要です」
潜在の顔色が変わった。「600億円……」
理子が慎重に言った。「戦略4の予算は300億円です。300億円不足しています」
鷹見が真剣な表情で言った。「申し訳ありませんが、これ以上の削減は難しいです。リゾート側が600億円を負担できるのであれば、協力させていただきますが——」
星野達也が冷静に分析した。「600億円の初期投資は、リゾート側にとって大きな財務リスクです」
会議室に重い沈黙が流れた。技術的には解決したが、第二の困難——予算——が立ちはだかった。
潜在が深く息を吐いた。「鷹見さん、少し時間をください。検討させてください」
続く
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登場人物紹介
子田賢 - ネズミ。プロジェクトリーダー。
全体を俯瞰し優れた分析力と観察力を持つ。
牛田継続 - ウシ
着実に前進する実行力と信念を持つ。
虎山威風 - トラ
力強い実行力を持つ戦略家。
兎野理子 - ウサギ
慎重なリスク分析の専門家。
龍雲昇天 - タツ
圧倒的なカリスマと人を魅了する力を持つスター。
蛇原静香 - ヘビ
人の観察に優れ本質を見抜く洞察力の持ち主。
馬場疾駆 - ウマ
自由を愛し新しい風を吹き込む風雲児。
羊谷和奏 - ヒツジ
優しく人々を調和させ、団結させる力を持つ。
猿田新々(さるた・しんしん) - サル
機転と発想力に優れるがあきっぽい。
鶏鳥鳴子 - トリ
厳格な管理能力を持ち、組織の秩序を守る。
犬塚潜在 - イヌ
次期リーダー候補と言われた若手エース。
猪野勇進 - イノシシ
愚直でひたむきで真っ直ぐ突進する。
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