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第24話 重い決断

ーーーーー

登場人物紹介


子田賢ねだ・けん - ネズミ。プロジェクトリーダー。

 全体を俯瞰し優れた分析力と観察力を持つ。


牛田継続うしだ・けいぞく - ウシ

 着実に前進する実行力と信念を持つ。


虎山威風とらやま・いふう - トラ

 力強い実行力を持つ戦略家。


兎野理子うさぎの・りこ - ウサギ

 慎重なリスク分析の専門家。


龍雲昇天りゅううん・しょうてん - タツ

 圧倒的なカリスマと人を魅了する力を持つスター。


蛇原静香へびはら・しずか - ヘビ

 人の観察に優れ本質を見抜く洞察力の持ち主。


馬場疾駆ばば・しっく - ウマ

 自由を愛し新しい風を吹き込む風雲児。


羊谷和奏ひつじたに・わかな - ヒツジ

 優しく人々を調和させ、団結させる力を持つ。


猿田新々(さるた・しんしん) - サル

 機転と発想力に優れるがあきっぽい。


鶏鳥鳴子けいちょう・めいこ - トリ

 厳格な管理能力を持ち、組織の秩序を守る。


犬塚潜在いぬづか・せんざい - イヌ

 次期リーダー候補と言われた若手エース。


猪野勇進いの・ゆうしん - イノシシ

 愚直でひたむきで真っ直ぐ突進する。

ーーーーー

前半

十二支プロジェクトチームはインペリアルスカイグループ本社に向かった——高層ビルの最上階、眼下には東京の街が広がる。


会議室に、雲居社長と鯨岡社長が座っていた。十二支プロジェクトチームの12人は、プレゼンテーションの準備を整えていた。


賢がプロジェクターを起動した。「雲居社長、鯨岡社長、本日はバリ島グランドリゾート開発プロジェクトの提案をさせていただきます」


スクリーンに地図が映し出された。


勇進が説明した。「バリ島東部、カラガッサム。まだ開発されていない、奇跡のような土地です。白い砂浜、透き通った海、背後には緑豊かな丘陵——」


雲居社長の目が輝いた。「カラガッサム……ランプヤン寺院の近くですね」


勇進が驚いた。「はい!ご存知なんですか?」


雲居社長が微笑んだ。「ランプヤン寺院は、私が好きな日の出スポットの一つです。近年はインスタ映えするということで人気が出ていると聞いてます。またその近くということは、水の宮殿やライステラスもあり、絶好のリゾート向きの場所ですね」


賢が続けた。「総予算は5000億円。マリーナベイサンズと同規模の統合型リゾートです」


スクリーンに出資構造が映し出された。


・インペリアルスカイグループ:500億円

・ズートポス:500億円

・JOIN(海外交通・都市開発事業支援機構):500億円

・インドネシア政府:500億円

・融資(アジア開発銀行等):3000億円


潜在が説明した。「ズートポスの500億円出資には、海外投資保険を付保します。損失の9割、450億円がカバーされます。実質的なリスクは50億円です」


雲居社長が頷いた。「あの場所なら5000億円規模であろうな……出資が500億円で済むなら悪くはない」


しかし、鯨岡社長は黙って資料を見つめていた。その表情は、重く、深刻だった。


賢が言った。「この5000億円で、5つ星ホテル、総客室数5000室、20のレストラン、最先端のインフラ——アジア最高水準のリゾートを完成させます」


勇進が続けた。「俺には現地のコネクションがあります。プチャトゥの土地所有者、バリ州政府の観光局長、地元コミュニティのリーダー、ホテル協会の会長——全員、俺の顔を知っています」


雲居社長が興味深そうに聞いた。「素晴らしいコネクションです。わが社でもそうはいきません。これまで勇進さんが取り組んだ成果と拝察します」


勇進が頷いた。「ありがとうございます。はい。失敗してもただでは起きませんでした。その足跡が、今、財産になっています」


——賢がプレゼンを締めくくった。「以上が、バリ島グランドリゾート開発プロジェクトの提案です」


会議室に沈黙が流れた。雲居社長は資料を見つめ、鯨岡社長は腕を組んで深く考え込んでいた。


長い沈黙の後、鯨岡社長が口を開いた。


「500億円——」社長の声は、重く、深刻だった。「これは、我が社にとって過去最大のプロジェクトです」


十二支チーム全員が緊張した。


「我が社の年商は2500億円。純資産は1000億円。500億円の出資は——たとえ投資保険があっても、極めて重い決断です」


鯨岡社長は窓の外を見つめた。東京の街が、夕日に染まっていた。


「もし失敗すれば、会社が傾く。社員の生活、家族の未来——全てが懸かっている」


会議室の空気が、さらに重くなった。


「しかし」鯨岡社長が全員を見渡した。「君たちを見ていると、信じられる気がします」


社長の目に、決意が宿った。


「ズートポス、500億円を出資しましょう」


会議室に静寂が訪れた。鯨岡社長の言葉が、空気を震わせている。


そして——雲居社長が立ち上がった。その眼差しには、揺るぎない決意が宿っていた。


「鯨岡社長の決意、確りと受け止めました。インペリアルスカイグループも、同じく500億円を出資します」雲居社長の声が、力強く響いた。


そして、雲居社長は鯨岡社長と固く握手を交わした。「共に、バリ島に新しい未来を創りましょう」


会議室が、拍手に包まれた。バリ島グランドリゾート開発プロジェクト ——その第一歩が、今、力強く踏み出された。


後半

翌日。同じ会議室。


雲居社長が全員を見渡した。「ではこちら側のプロジェクトメンバーを紹介させて下さい」


そしてスクリーンにインペリアルスカイグループのメンバーが映し出されると共に4名が入室してきた。


・青天澄香(執行役員、海外プロジェクト統括)

・天野翔太(調達部門責任者)

・星野達也(インフラ担当役員)

・空川美咲(マーケティング部長)


雲居社長が紹介した。「特に青天澄香は、海外プロジェクトの経験が豊富です。北米で3件、欧州で1件、最近ではドバイ——国内含めて10件以上の大型プロジェクトを成功させてきました」


澄香が立ち上がった。40代後半の女性、理知的な目つきと落ち着いた雰囲気。


「皆さん、宜しくお願いします。アジアは私も成功事例がなく挑戦となります」


そして澄香はプロジェクターを操作した。スクリーンに12項目のリストが映し出された。


「これだけのプロジェクトとなると、やることが広範囲に広がります」その声に、経験に裏打ちされた重みがあった。「私の方で整理しましたが、以下の12個です」


1. インドネシア政府交渉(500億円出資獲得)

2. JOIN支援獲得(500億円出資獲得)

3. 地元住民理解・雇用創出(地元の合意形成、1000人雇用)

4. アジア開発銀行融資(3000億円融資獲得)

5. 海外投資保険付保(500億円全額カバー、損失9割保証)

6. 環境アセスメント(環境影響評価クリア、許可取得)

7. 広告活動・マーケティング(開業前の認知度向上、予約確保)

8. 航空便増便交渉(日本-バリ直行便増便、週10便確保)

9. ホテル建設(3棟5000室、30か月以内完成)

10. レストラン誘致(20店舗規模)

11. 電力インフラ整備(リゾート全体の電力供給体制構築)

12. 通信環境整備(6G完備、高速Wi-Fi全域展開)


澄香が続けた。「どれもが必要不可欠です。どれか一つ欠けてもプロジェクトは失敗します。これらを全て整えた上で、開業まで漕ぎつける。目標は二年半、30か月です」


澄香の表情が真剣になった。「それ以上の遅延は、コストオーバーランが発生する可能性があります」


会議室に緊張が走った。12人が、改めてプロジェクトの規模を実感した。


疾駆が驚いて言った。「これほどやることがあるのか……」


静香が分析した。「12項目、それぞれが専門性を要求されます。一つ一つが、単独でも大プロジェクトです」


昇天が頷いた。「本当に大プロジェクトですね。マリーナベイサンズ級というのは、伊達じゃない」


和奏が微笑んだ。「でも、やりがいがありますね。30か月で、世界最高水準のリゾートを完成させる」


勇進が力強く言った。「俺の10年間が、やっとここで花開く。3番の地元住民対応は、完璧にやります!」


澄香が補足した。「ズートポスとインペリアル、完全に対等な協業です。こちらも精鋭メンバーで全力で当たります。私は恐縮ながら他のプロジェクトも並行して担当しますが、この3人はこのプロジェクト専任とします」


天野翔太が頷いた。「必要なものはなんなりと。グループのネットワークで必ず調達してみせます」


星野達也が言った。「インフラでの技術面は私に任せてください」


空川美咲が微笑んだ。「マーケティングでは多くの実績があります—このプロジェクトに参加できること光栄です」


そしてお互いが自己紹介をして、しばらく会話をし始めた。和やかに、そして真剣に。この16名でこれから頑張ろうと、お互いが気合を入れ合った。


会話がひと段落した頃、鯨岡社長が立ち上がった。皆が静かに注目する。


そして鯨岡社長が皆の目を見て言った「いよいよ始まりますね。みなさんを見て大変頼もしく思います。30か月後、バリ島に世界最高水準のリゾートを完成させましょう。そして——」


鯨岡社長の目が、一人一人を見つめた。


「インペリアルグループとズートポスの名を、アジアに轟かせましょう」


雲居社長が立ち上がり、静かに語り始めた。


「アジアのリゾート開発——我々インペリアルスカイも、過去に何度か挑戦しましたが、成功を収めることができませんでした」


「だからこそ」雲居社長の目に、強い光が宿った。「今回、十二支チームの皆さんと共に挑戦できることを、大変うれしく思っています」


「不可能を可能にする——それは、一つの企業では実現できません。しかし、貴方たちとなら、きっとそれができると信じています」


雲居社長が全員を見渡した。「共に悲願を叶えましょう、この大規模プロジェクトで」


勇進の目に涙が浮かんだ。10年間、誰も信じてくれなかった挑戦を、今、二つの企業のトップが本気で支援してくれる。


賢が号令をかけた。「全員、立ってください。先ほどお伝えした掛け声を皆でしましょう」


十二支チーム12人とインペリアルチーム4人が、円陣を組んだ。16人の手が、中央で重なる。


賢が力強く宣言した。「One for all」


16人の声が一つになった。「All for beyond! 」


その声は、会議室の壁を越え、東京の空を駆け上がり、遥か5000キロ先のバリ島へと——届くかのように響いた。


5000億円、30か月、16人の挑戦——過去最大のプロジェクトが、今、産声を上げた。


続く



お読みいただきありがとうございました。

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