第22-1話 インペリアルスカイグループへの挑戦②(前半)
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登場人物紹介
子田賢 - ネズミ。プロジェクトリーダー。
全体を俯瞰し優れた分析力と観察力を持つ。
牛田継続 - ウシ
着実に前進する実行力と信念を持つ。
虎山威風 - トラ
力強い実行力を持つ戦略家。
兎野理子 - ウサギ
慎重なリスク分析の専門家。
龍雲昇天 - タツ
圧倒的なカリスマと人を魅了する力を持つスター。
蛇原静香 - ヘビ
人の観察に優れ本質を見抜く洞察力の持ち主。
馬場疾駆 - ウマ
自由を愛し新しい風を吹き込む風雲児。
羊谷和奏 - ヒツジ
優しく人々を調和させ、団結させる力を持つ。
猿田新々(さるた・しんしん) - サル
機転と発想力に優れるがあきっぽい。
鶏鳥鳴子 - トリ
厳格な管理能力を持ち、組織の秩序を守る。
犬塚潜在 - イヌ
次期リーダー候補と言われた若手エース。
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前半
十二月中旬。街はすっかりクリスマスムードに包まれていた。きらめくイルミネーション、聖なる夜を祝う音楽、幸せそうな人々の笑顔。しかし、十二支チームの雰囲気は違かった。
十二支プロジェクト会議室。賢が電話を終えて戻ると、静寂が支配していた。
賢が全員を見渡した。疲弊した顔、涙を堪える目、握りしめた拳。
「聞いてください」賢の声には、静かな力があった。「今回の提案は残念ながら失敗でした。ですが、先ほど青天様と話をして、もう一度だけプレゼンをする機会を頂きました。一週間後です。期限180日の178日目、最後のチャンスとなります 」
理子が言った。「しかし、あの様子では、再度チャレンジしても全く成功するようには思えません。いまからでも、小口案件の積み上げに注力して、少しでも倒産確率を下げるように奮闘する道もありますが……」
「いいえ」賢が首を振った。「小口案件の積み上げをしても焼け石に水です。もう一度インペリアルスカイにチャレンジします。ただし、今度はもっと魅力的な提案を作ります。諦めてはいけません」
疾駆が聞いた。「魅力的な提案……どうやって?」
賢が全員を見渡した。「今回のプレゼンで足りなかったものは何か——それを、みんなで考えたいんです」
「三日間で、もう一度ゼロから組み立て直しましょう。そのために——」賢が皆に向かっ言った。「まずは、チームごとに分かれて考えてほしいんです。それぞれの視点で、何が必要か、何が足りなかったのか——自由に話し合ってください。一旦解散とします。」
【戦略チーム:威風、新々、疾駆】
別室に集まった三人。最初は沈黙が続いた。
疾駆が深く息を吐いた。「俺たち、データはかなり詰め込んだよな。数字は完璧だったのに、なんで響かなかったんだろう」
新々が窓の外を見つめた。「数字じゃ伝わらないものがあるのかもな……」
威風が静かに言った。「青天さんが最後に言ってたな。『もっと対話したかったですね』と」
疾駆が振り返った。「対話……か。確かに、俺たち一方的に説明してただけだったな」
新々が頷いた。「そうだな。相手が何を求めてるか、何に困ってるか——聞こうともしなかった」
威風がホワイトボードに向かった。「どうすれば、対話できるんだ?プレゼンの場だけじゃ、時間が足りない。といっても対話なんて悠長にしている時間もないぞ」
新々が考え込んだ。「パートナーは対話を求めている。一方でこれは顧客も一緒なんじゃないか。日常的に、顧客と接点を持てればいいんだけどな……」
疾駆が何かを思い出したように言った。「そういえば、俺たちが作った会社紹介動画、結構反響あったよな」
新々が顔を上げた。「ああ、SNSで公開したやつか。コメントも結構来てたな」
威風が目を輝かせた。「そうか……SNS!」
疾駆が前のめりになった。「どういうことだ?」
威風が興奮気味に説明し始めた。「あの動画、ただ見てもらうだけじゃなかったよな。コメントが来て、質問があって——それに答えて。つまり、やり取りができていた」
新々が続けた。「それって、対話じゃないか?オンラインで、顧客と直接やり取りできるってことだろ?」
疾駆が拳を打った。「しかも、タイムリーに反応できる。『こんなサービス、どうですか?』って投げかけて、すぐに反応が返ってくる」
威風が頷いた。「そうだ。それに、顧客の声を直接聞けるから、市場の変化もいち早くキャッチできる。ニーズが変わったら、すぐに気づける」
新々がホワイトボードに書き始めた。「つまり、SNSはただの広報ツールじゃない。顧客と対話するための——」
威風が言葉を継いだ。「コミュニケーションチャネルだ」
疾駆が興奮してきた。「これ、マーケティング戦略として使えるんじゃないか?インペリアルスカイにも提案できる。『俺たちは、SNSを通じて顧客とリアルタイムで対話できます。市場の変化にも、すぐに対応できます』ってな」
新々が笑った。「一方的な宣伝やプレゼンじゃなく、一緒に考える。それが対話だ」
威風が静かに言った。「よし、このアイディアを纏めて、賢さんに報告しよう」
【シナジーチーム:牛田、和奏、昇天】
会議室の一角で、三人が向き合った。
和奏がため息をついた。「技術シナジーの説明、完璧だったと思ったんですけど……」
昇天が首を振った。「天野さんは、数字やデータよりも——『本当に一緒にやっていけるのか』を見ていた気がします」
牛田がゆっくり話し始めた。「信頼関係、ですかね。技術や実績も大事だけど、パートナーとして信頼できるかどうか」
和奏が頷いた。「そうですね。でも、どうやって信頼を築けばいいんでしょう?一回のプレゼンだけじゃ……」
昇天が考え込んだ。「もっと深く、お互いを知る機会が必要なのかもしれません」
牛田が何かを思い出したように言った。「そういえば、豹崎商事さんとの案件、すごくうまくいってますよね」
和奏が顔を上げた。「ああ、あのプロジェクト!お陰様で社員満足度95%、完遂率100%ですよ」
昇天が興味深そうに聞いた。「あれ、なんでそんなにうまくいったんでしたっけ?」
和奏が説明し始めた。「豹崎商事さん、従業員満足度を上げる目的で、社員向けにワークショップを開催したんです。『私たちは、なぜこの仕事をしているのか』『お客様に何を届けたいのか』——そういうビジョンを、豹崎商事の社員全員で話し合ってもらいました」
牛田が頷いた。「ああ、あれですね。人事システムのワークショップから発展したものですね。評判すごく良かったって聞きました」
昇天が前のめりになった。「それって……もっと幅を広げられませんか?」
牛田が不思議そうに聞いた。「幅を広げる?」
昇天が続けた。「豹崎商事さんでは、豹崎商事内でワークショップをやった。でも、同じ取り組みを——インペリアルスカイと、わが社、両社共同でやってみたら面白くないですか?」
和奏が目を輝かせた。「それいいです!両社の社員が参加して、『パートナーとして一緒に何を作りたいか』『どんな未来を目指すか』——対話を通じて、お互いを知る」
牛田が頷いた。「豹崎商事のワークショップの枠組みを応用すればいい。やり方はもうわかってる。実績もある」
昇天が興奮してきた。「そうです。それなら、相乗効果も自然に生まれる。シナジーを、誰かが描いた絵を見るのではなく、実際に社員同士で交流して体感してもらう」
和奏が笑顔で言った。「説得力もあります。『こういうやり方で、実際に成功しました』って言える」
牛田が拍手した。「これです!賢さんに提案しましょう」
【リスク評価チーム:鳴子、静香、理子、潜在】
四人とも真剣に考えており、しばらく沈黙が続いていた。
静香が冷静に言った。「青天さんは、『リスク』を懸念していました。既存サプライヤーとの関係性、新規サプライヤーの信頼性……」
鳴子が頷いた。「私たちは中小企業です。実績はあっても、インペリアルスカイほどの大企業にとっては、やはりリスクが大きい」
理子がため息をついた。「どうすれば、そのリスクを下げられるんでしょう……」
潜在が聞いた。「そもそもですが、リスクって、何がそんなに怖いんでしょうかね?」
静香が考え込んだ。「新規サプライヤーと契約して、もし失敗したら——インペリアルスカイが全部責任を負うことになる」
鳴子が続けた。「金銭的な損失もそうですし、既存サプライヤーとの関係も悪化するかもしれない」
理子が頷いた。「つまり、リスクを『一人で背負う』ことが、怖いんですね」
潜在がゆっくり話し始めた。「なるほど。それなら……一人じゃなくて、二人で背負ったら?」
三人が振り返った。
静香が聞いた。「二人で?」
潜在が続けた。「私たちとインペリアルスカイが、一緒にリスクを負うんです。例えば——」
理子が目を輝かせた。「共同出資!」
鳴子が前のめりになった。「ジョイントベンチャー、ですか?」
静香が計算し始めた。「例えば、50:50の出資比率なら……リスクも利益も、完全に平等」
理子が興奮してきた。「そうです。インペリアルスカイは、新規サプライヤーのリスクを懸念している。でも、JVなら『一緒に挑戦するパートナー』になる」
鳴子がホワイトボードに向かった。「でも、何に挑戦するんでしょう?既存事業だと、あまり意味がない気がします」
静香が考え込んだ。「新しい市場……成長性があって、でもリスクが高いから、今まで誰も挑戦できなかった市場」
理子がハッとした表情を浮かべた。「賢さんが以前言ってました。『アジアリゾート市場は成長著しいが、成功例がない。でもうちには専任の担当がいる』って」
潜在が頷いた。「インペリアルスカイも、きっとその市場を狙ってますよね」
鳴子が続けた。「でも、単独では失敗するリスクが高すぎて、踏み出せなかった」
静香が計算しながら言った。「もし、50億円ずつ出資して、100億円のJVを設立したら——」
理子が続けた。「リスクは半分。でも、二社でやる分、チャンスは倍増する」
潜在が整理した。「二人三脚でアジアリゾート市場に挑戦する。失敗しても、損失は半分。成功すれば、両社が大きく成長する」
理子が目を輝かせた。「いいですね、これで賢さんに報告してみましょう」
—— 十二支プロジェクト会議室に三つのチームが集まった。それぞれが、興奮した表情で報告を始めた。
威風が立ち上がった。「戦略チームから報告します。SNSマーケティング——会社紹介で築いたSNS基盤を、マーケティング戦略に活用します。顧客とオンラインでタイムリーに対話し、市場の変化にもいち早く対応できます」
牛田が続いた。「シナジーチームです。社員参加型ワークショップ——豹崎商事で実施したワークショップの枠組みを、両社合同に拡大します。一緒にビジョンを作ることで、パートナーシップを体感してもらいます。実績もあります。社員満足度95%、完遂率100%です」
理子が最後に発表した。「リスク評価チームです。50:50ジョイントベンチャー——アジアリゾート市場に、両社が各50億円を出資して共同進出します。リスクを二人で背負えば半分に。でも、チャンスは倍増します」
賢が驚きながら深く頷いた。そして、ホワイトボードに三つの提案を書き出した。
「素晴らしいです。三つの提案どれも興味深いですね」
「SNSマーケティングで、顧客と対話する。市場の変化に、リアルタイムで対応できる」
「社員参加型ワークショップで、パートナーシップを築く。実績があるから、説得力がある」
「50:50ジョイントベンチャーで、リスクを分散する。アジアリゾート市場という新しい挑戦を、二人三脚で実現する」
賢が言った「これは、ただのサプライヤー契約じゃない。『成長のパートナーシップ』ですね」
賢が続けた。「実は、社長にインペリアルスカイへの再挑戦を伝え、投資枠50億円を確保していました」
全員が驚いた表情を浮かべた。
「当初、私が考えていたのは——単独でのオンライン販売事業の立ち上げとか、既存事業での協業とか、そういう提案でした。正直、それで精一杯だと思っていた」
賢が全員を見渡した。「でも、皆さんのアイデアは、私の想像を遥かに超えていた。それにアジアリゾート開発のJV——これは、わが社でずっと取り組んでいる分野でもあり説得力がある」
賢が力強く頷いた。「皆さんのアイデアで行きましょう。SNSマーケティング、社員参加型ワークショップ、そして50:50ジョイントベンチャー——この三つを、インペリアルスカイに提案します」
賢が全員に向かって叫んだ。「三日後、再プレゼンです。十二支プロジェクトチームの全力を——インペリアルスカイに届けましょう!」
—— インペリアルスカイグループ本社。
澄香とのアポの前日、賢は事前に新提案の資料を送付した。その内容に興味を持った青天澄香は、すぐに社長に報告した。
「社長、この提案——一度ご覧になってください」
社長は資料を読み、深く頷いた。「面白い。私も同席しよう」
お読みいただきありがとうございました。
次回はいよいよクライマックスです。
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