第21話 インペリアルスカイグループへの挑戦①
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登場人物紹介
子田賢 - ネズミ。プロジェクトリーダー。
全体を俯瞰し優れた分析力と観察力を持つ。
牛田継続 - ウシ
着実に前進する実行力と信念を持つ。
虎山威風 - トラ
力強い実行力を持つ戦略家。
兎野理子 - ウサギ
慎重なリスク分析の専門家。
龍雲昇天 - タツ
圧倒的なカリスマと人を魅了する力を持つスター。
蛇原静香 - ヘビ
人の観察に優れ本質を見抜く洞察力の持ち主。
馬場疾駆 - ウマ
自由を愛し新しい風を吹き込む風雲児。
羊谷和奏 - ヒツジ
優しく人々を調和させ、団結させる力を持つ。
猿田新々(さるた・しんしん) - サル
機転と発想力に優れるがあきっぽい。
鶏鳥鳴子 - トリ
厳格な管理能力を持ち、組織の秩序を守る。
犬塚潜在 - イヌ
次期リーダー候補と言われた若手エース。
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前半
十一月下旬。冬の訪れを告げる冷たい風が吹き始めていた。街ではイルミネーションの準備が始まり、デパートのショーウィンドウにはクリスマスの飾りが並ぶ。しかし、十二支チームの業績は閑散としていた。
プロジェクト開始から150日。残り30日。
会議室に映し出される数字を見て、全員が息を呑んだ。
十二支チーム:50億円
目標100億円の、ちょうど半分。
静香が報告する。「過去60日間の推移です」スクリーンにグラフが表示される。横ばいの線——数字は全く動いていない。
一方で、全社では100億円の目標対し、85億円まで来ていた。このまあでは十二支プロジェクトチームが未達で倒産というシナリオにもなりかねない
理子が深刻な表情で続けた。「この60日間の我々の新規契約の獲得は、わずか5件。いずれも小規模案件です」
疾駆が悔しげに声を絞る。「俺たち、頑張っているのに……」
威風が拳を握りしめた。「競合が激しい。どこも必死だ」
昇天が状況を説明する。「業界全体が縮小傾向にあります。新規顧客の獲得は、想像以上に困難です」
牛田が付け加えた。「既存の取引先は、簡単には切り替えません。長年の信頼関係がありますから」
和奏が不安そうに尋ねる。「あと30日で、50億円……本当に可能なんでしょうか……」
潜在は俯いたまま言った。「他の部署がコストカットや資産売却などで必死になって成果をだしているのに……」
重い空気が会議室を支配する。
その時、賢が静かに立ち上がった。
「皆さん、一つ提案があります」
スクリーンに、ある企業名が映し出される。
『インペリアルスカイグループ 』
昇天が驚きの声を上げた。「業界最大手の……あのインペリアルスカイ?」
理子が財務データを素早く確認する。「年間売上3兆円、業界シェア35%……航空、物流、ホテル事業を展開する巨大コングロマリットです」
静香が分析結果を示した。「もしインペリアルスカイグループとの契約が成立すれば、一件で50億円以上の利益が見込めます」
鳴子が冷静に指摘する。「しかし……インペリアルスカイグループは、私たちのような中小企業にとって、雲の上の存在です」
威風が苦い表情で頷いた。「業界では有名な話だ。過去10年間、新規サプライヤーとの契約はゼロ。コンタクトを取ることさえ、極めて困難だと聞いている」
牛田が付け加えた。「実は、三年前に一度アプローチを試みました。しかし、担当部門にすら辿り着けず……提案書さえ受け取ってもらえませんでした」
新々が食い気味に言った。「だからって諦めるんですか!?」
賢が微笑んだ。「諦めません。実は、突破口があります」
静香がSNS分析の結果を報告する。「興味深いデータがあります」
スクリーンに映し出されたのは、インペリアルスカイグループの調達部門責任者、天野翔太(あまの ・ しょうた)のSNSアカウント。
和奏が小さく声を上げた。「あ、この人……私たちの会社紹介動画に『いいね』してます……」
疾駆が興奮して画面を覗き込む。「本当だ!しかも、コメントもしてる!『こういう技術力のある企業、もっと知りたい』って!」
賢が静かに言った。「ここです。ここが、我々の突破口です」
昇天が頷く。「なるほど……彼は興味を持っている」
新々が前のめりになる。「じゃあ、すぐにコンタクトを!」
鳴子が制止した。「待ってください。先ず相手を調べた上で戦略的にアプローチしましょう」
静香が天野翔太の詳細プロフィールを分析する。「東京大学航空宇宙工学科卒、スタンフォードでマスターを取得。論文多数、技術志向の方です」
理子が補足した。「最近のインタビューで『コスト削減よりも技術革新を重視したい』と発言しています」
賢が戦略を組み立てる。「では、技術力を前面に出したアプローチで」
和奏がSNSで丁寧なDMを作成し、推敲を重ねる。全員が見守る中、賢が「送信ボタン」を押した。
全員が固唾を飲んで待つ。
三日後——返信が来た。
「興味があります。一度お話を伺いたい」
会議室に歓声が上がった。新々と威風がハイタッチし、和奏が涙ぐみ、潜在が小さくガッツポーズをする。
しかし、賢の表情は真剣なままだった。
「皆さん、ここからが本番です」
後半
賢がホワイトボードに図を描いた。「三つのチームに分かれます。私は全体の取りまとめを行います」
【戦略チーム】威風、新々、疾駆
インペリアルスカイグループの現状分析、競合との差別化戦略、提案の全体シナリオ構築を担当する。
【シナジーチーム】牛田、和奏、昇天
技術的シナジーの具体化、共同開発の可能性、長期的パートナーシップのビジョンを担当する。
【リスク評価チーム】理子、静香、鳴子、潜在
リスクの洗い出し、財務的実現可能性、コンプライアンスチェックを担当する。
深夜まで続く作業。コーヒーカップが山積みになり、目の下にクマができても、誰も諦めなかった。
賢が各チームを回り、進捗を確認する。和奏が差し入れを持ってくる。疾駆が疲れた顔で笑う。「みんな、頑張ってるな……」
10日後。プレゼン資料が完成した。
インペリアルスカイグループ本社、12支プロジェクトチームが集結した。
重厚な会議室。天野翔太とその上司、執行役員の青天澄香が同席している。
賢がプレゼンを開始する。威風が技術力、実績、差別化戦略——全てを丁寧に説明した。
牛田が具体的な技術シナジーを説明する。理子が財務的メリットを提示する。
しかし——青天澄香の表情が硬い。
「興味深いですが……」青天が口を開く。「既存サプライヤーとの関係もありますし、リスクを考えると……」
天野も困った表情だ。「もう少し、具体的な差別化要素が必要かと……」
プレゼンは、不発に終わった。
重い足取りで会社に戻るチーム。
新々が壁を殴る。「くそっ……!」
威風も悔しげに呟く。「まだ何か足りない……」
静香が冷静に分析する。「相手の心に刺さらなかった……」
理子がため息をつく。「やはり、業界最大手には無理だったのかもしれません……」
鳴子が涙ぐむ。「私たち、もう……」
和奏が慰めるが、自身も涙を堪えている。
賢が静かに言った。
「まだ、終わっていません」
残り10日間で50億円。達成しなければ倒産する。
その危機感をひしひしと感じながら、賢の言葉と目には冷静さが宿っていた。
そして先ほど貰った青天澄香の名刺を片手に、会議室の外に出た。
お読みいただきありがとうございました。
果たして逆転はできるのか?
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