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12 ブリスコーの日常

腰を下ろすと、お茶をすすった。彼は頬に冷たい空気を感じた。朝方の高山地帯は夏でも冷え込んだ。彼の目線の先には、遠くウルゴーン山脈の堂々たる山並みが、刃の崩れた歴戦のつるぎのように刻んでいた。


 アイルがそうしていると、アベルがテントから這い出てきた。彼の長い金髪が朝焼けの横日を受けて美しい橙色に輝いた。

【アイル】「おあよう」アイルは欠伸をしながら声をかけた。

【アベル】「おはよう」アベルは応えた。彼はうんと伸びをすると、アイルの隣りに腰を下ろした。「昨日はよく眠れた?」

【アイル】「まあまあかな。昨日はまあ、とことん疲れたから」

【アベル】「そうだったね」「そういえば、ルー君は見つかったの?」アベルは一息ついていった。

【アイル】「ああ、見つかったよ。先にこっちに来てたんだ。今はテントで寝てるよ」

【アベル】「そりゃよかった。」


 アイルはアベルのためにお茶を注ぐと、朝の市街地を見下ろした。朝方の広場は人がまばらだったが、すでにいくつかの家の煙突からは白い煙が立ち上っていた。きっとそれは、飯屋だろう。


【アイル】 アイルは思いついて言った。「なあ、お前の剣見せてれない?」

【アベル】「いいけど、君のも見してよ」アベルは言い、テントの中から細剣を持ってきた。


 アイルはそれを受け取り、鞘から引き抜き朝の陽光に照らした。細身の刃が朝焼けの茜色の光を反射した。金細工の持ち手はなめらかな曲線で輝いていた。


【アイル】「綺麗な剣だな」アイルは言った。「振ってもいいか?」


 アベルはうなずいた。

 アイルは剣を振るった。細剣はまたたく光の軌跡を描きながら、軽やかにしなった。

 アイルは剣を仕舞い、尋ねた。


【アイル】「アリア達は?」

【アベル】「テントの中で寝てるよ」アベルは応えた。

【アイル】「そいえばさ、あいつら昨日飯一緒に食ってなかったな」

【アベル】「ああ、本当は市街地で宿を取って寝泊まりする予定だったんだ。だけどアリアがそれを断ったんだよ。無駄遣いする金もないしね」

【アイル】「飯は食ってんの?」

【アベル】「軽くは食べたらしいけど」

【アイル】「ふーん。じゃああいつらの分も作ってやるか。パンでいいか?」

【アベル】「いいと思うけど、パンなんて作れるの?」

【アイル】「パンなんか簡単だよ。昨日仕込んでおいたんだ」


 彼はテントの中に戻ると、パン種を乗せた鉄板と、ついでに短剣も持って来た。

 彼は短剣をアベルに手渡すと、焚き火の周囲に石を積み簡単な竈門を作ると、パン種を竈門の上に乗せて焼いた。

 彼はパン種に切れ込みを入れると、干し肉を隙間に挟んだ。肉は熱を受けて、油が段々と染み出し、そのうちじゅうじゅうと音を立てた。

 そのうちにすばらしい香りが漂ってきた。


「いい匂いだね」アベルが言った。

【アイル】「そうだね。そういえばエルフって肉食厳禁なんだっけ?」

【アベル】「一応戒律ではそうなってるけど、もうどうでもいいや」

【アイル】「だよな。昨日も魚食ってたし今更だよな」


やがてパンの表面は黄金色に色づき、そろそろ食べ頃になった時、坂の上からトグマとカイが降りてきた。


【トグマ】「いい匂いだなあああああ!!!」とぐまは大声で呟いた

【アイル】「お前、喉はもう大丈夫なのか?」アイルが訊いた。

【トグマ】「ああだいじょうぶだいじょぶ。それよりうまそうだなああああああ!!!」

【アイル】「じゃあ食ったらいおいんじゃねえ」アイルは苦笑いしながら言った。

【トグマ】「まじかあああサンキュっ」トグマはパンを掴むと、「あっつ、あっつ」と叫びながら、慌てて口に運んだ。

【トグマ】「うんめえええええ」

【アベル】「あ、ほんとに美味しいね、これ」アベルは自分のかじったパンを見つめた。「俺、アリア達起こしてくるわ」彼はそう言い、テントに走っていった。

 アリアはパンを焼いているのを見ると、坂を駆け下りて来て、そのうち一つをひっつかんだ。そして両手でつまんで食べ始めた。

【アリア】「おいしい」彼女はそう言い、一気に口に頬張った。

【テオ】 テオもパンを一つ手にとって、口に入れた。

【テオ】「ん!」テオは一瞬目を丸くして声を上げた。どうやらお気に召したらしい。

【テオ】「ありがとうね。私達、お金持って無かったから」テオが言った。

【アリア】「そうそう。だから商店で、持ってるもの物々交換してるんだけど……」アリアが言った。

【アイル】「いま物々交換なんてしてもぼったくられるだけだよ。金がないなら夜警の仕事でも受けたらどうだ?」

【アリア】「でも。もし戦闘になったら、休めっていう命令に背くことにならない?」アリアが聞いた。

【アイル】「大丈夫だよそれは。夜警なんてめったに何も起こらないものだし。もしブリスコーに敵が侵入してくるなら、どっちみち戦うことになるし」

【アリア】「なるほど」

【アイル】「まあほとんどの場合夜警なんて突っ立てるだけだよ」

【アリア】「そうなんだ。じゃあやってみようかしら」

 こうしてたわいもない話をしていると、斜面の下から女が登ってきた。彼女はまっすぐアイルたちに向かって歩いてきた。彼女は背が高く、黒い髪をした女性だった。

 彼女がだいぶ近づいてきて、ようやくアイルたちはそれが団長だと気づいた

 甲冑を着ないその姿は、華奢だった。とてもあの大剣を振り回していたと人間とは思えなかった。彼女は焚き火のそばまで寄ると、言った。

【ダイアナ】「ほかのやつらはいるか?」

【アリア】「呼んできます」アリアはそう言うと、三軒上の建物に駆けていった。

【ダイアナ】「家があるのにテントで寝てるのか」団長は言った。

【アイル】「家の修繕が終わるまでは、テント暮らしですね」アイルは答えた。

【ダイアナ】「別に他の難民はそのまま住んでるし大丈夫だと思うがな……」


団長はぼそりと言った。

 しばらく待っていると、アリアは魔法学校の連中を連れて、家から出てきた。


【ダイアナ】「全員揃ったか」ダイアナは話し始めた。「まず義勇兵団についてだが、9月14日までは活動はしない。訓練はまとまった人数が揃った後に始めるから、それまでは体を休めておけ」


 義勇兵たちはうなずいた。


【ダイアナ】「昨日あまり体を動かすなと通達したが、それは撤回する。冒険者の仕事も受けたければ受けていい」

【トグマ】「いまどんな仕事があるんですか?」トグマが訊いた。

【ダイアナ】「さあな。よくあるゴブリン討伐とか、堀の溝浚いとか、夜警とか。まあそんなもんだろう」

【トグマ】「なんだ。ちょうど俺たちにおあつらえ向きじゃねえか」

【ダイアナ】「アイル。お前は怪我明けだからブリスコーの外の仕事は受けるな」

【アイル】「わかりました。」アイルは答えた。「もう名前知ってるんですね」

【ダイアナ】「ああ、お前は特別に目をかけられているんだよ。翁からな」

【アイル】「翁?」

【ダイアナ】「中洲にカエルみたいな爺さんがいたろ。そいつだ。とにかく義勇兵団は二週間後に活動を開始する。それまでは自由に体を休めておけ」


ダイアナはそう言うと、彼らに背を向けて斜面を下って行った。


「……すんすんすん。みなさん素晴らしい香りがするのですけれど、私達のパンはありませんこと?」


セーラが言った。

 アイルは残りのパン種を持ってくると、全部焼いた。女生徒達は、おいしいおいしいと言いながら食べた。

 そのうちにテントで寝ていた村人たちもちらほらと起きだした。アイルは手持無沙汰でやることもないので、村仕事の手伝いを申し出たが、怪我の大事を取って断られた。彼は男たちと一緒に釣りに出かけることにした。

 

 彼らは城門を出た。門前には馬車を引いた商人の群れが列をなして並んでいた。荷車の中には果物などの食料品のほか、剣や黒光りする甲冑を載せた荷馬車もあった。昨日戦闘があったばかりなのに、前線基地までやって来て商売する彼らの商魂には恐れ入った。アイルはその場で果物商と交渉し、りんごを3つ買った。

アイル達が城門を出ると、歩哨の兵士ら声がかけられた。


「お~い釣りかあっ!?」

【アイル】「釣りです!!!」アイルは棹を頭上に掲げて応えた。

「俺も行きてえぞっ」兵は笑いながら大声で言った。


 門を出てすぐ眼前に、ラインベルクの鷹揚とした流れが広がっていた。人間界の争いごとなどは露知らず、自然はあるがままの姿で何万年も変わらぬその営みを続けていた。土手の草むらは日差しを浴びて美しい緑を一面にたたえていた。しかし風が吹くと、鼻をつく刺激臭が漂ってきた。

 土手の上流でオークの死体が一箇所に積み上げられ燃やされていた。煙とともに、肉の焼ける甘ったるい匂いが漂ってきた。オークたちの爬虫類めいた硬質の肌が熱で裂け、焼きすぎた腸詰めの様に破れた皮膚からはピンク色の肉がむき出しに見えていた。

 積み上げられたオークたちの死体の中心で、木組みの火葬塔が燃えていた。


【アベル】「あの塔はなんなの?」アベルが訊いた

【アイル】「あれはバデっていうんだよ。ここらの土着の言い伝えでは、俺たちは死んだ後に焼かれて煙になってまたどこかの土地で生まれ変わるんだと。だからなるべく高く煙を上げれるように、高い塔と一緒に燃やすんだよ」アイルが答えた。

【アベル】「へえ。オークも生まれ変わるの?」

【アイル】「そうだよ。オークが人間に生まれ変わるかもしれないし、人間もオークに生まれ変わるかもしれない」

【アベル】「へえ。じゃあ君も生まれ変わってオークになるかもしれないってこと?」

【アイル】「これからそうなるかもしれないし、前世ではオークだったかもしれない」

【アベル】「ここらの人って、普通オークも弔うものなのか?」

【アイル】「普通はしないよ。まあ誰か博愛主義者でもいるんじゃね?」アイルはそう言うと下流へ歩き出した。

 アイルは歩きながら餌を探した。アイルは道ばたの草むらのふくらみに目をつけた。霜をつけた土のようにこんもりと盛り上がり、穴の空いた茶色い土くれの塊があった。アイルは足で地面をトントンと踏み鳴らした。すると穴から大量のドバミミズが這い出し、大地の上でうねうねとうねっていた。

【アイル】「お~」アイルはひとりにやにやした。アイルは持ってきた木箱に大量のミミズを確保すると、土手の下に降りていった。


 土手の草むらはまだ朝露に湿っていた。彼らは小さな流れ込みまで歩いていった。

【アイル】「岸にあんまり近づくなよ。魚から姿をみられちゃだめだ」アイルが言った。彼は草むらにかがんで、針にミミズをつけた。硬質な感触で手の中で暴れまわるミミズにアイルは期待を膨らませた。これは”いいミミズ”だ。彼は水面を目視できない位置から餌を川面に投入した。竿先にすぐに反応があった。

【アイル】「よっ」アイルが勢いよく竿を立てた。ぬっとりとした荷重に竿はしなり、小気味よい振動がアイルの腕から肩に伝わった。彼の心臓が高鳴った。「ナマズかな?」アイルは言った。

 水中から魚を引きずり出すと、果たしてそれはナマズだった。ピチピチと爆ぜるような音を立てて草の上で転がり回り、身をくねらせると葦の間をかき分け逃げようとした。アイルはスカリにナマズを入れると、それを水中に放った。

「よくどの魚かわかったね」アベルは言った。

【アイル】「まあ感覚かな。釣りは得意だからね」アイルは応えた。

「一発で釣れたな」ジェイが言った。

【アイル】「餌がいい。かなり生きのいいドバミミズだよ。四日前に雨降ったばっかだから。これなんか太くていいんじゃないか」アイルはアベルのために、大きなミミズを選んで針に付けた。

 アベルはアイルの指示で流れ込みの奥へ移動した。そしてアイルのやったように岸から離れて池の淀みに餌を入れた。しかし反応はなかった。アベルが立ち上がって水面を見ようとすると、アイルが手振りで待てと静止させた。

『せっかちすぎ。一分ぐらい待てって』アイルは小声でそう言った。

 そうして一分間茂みに座っていると、突然竿先に強烈な荷重がかかり竿のされた。

【アイル】「竿を立てて思いっきり引け」アイルは叫んだ。

 はたして言うとおりにアベルは立ち上がり全力で竿を立てた。すると、全長二フィートはある巨大なレンギョが水面を割ってごぼう抜きになった。

【アイル】「ハクレンだ」アイルは言った。「今夜は土鍋だなあ」

 

 彼らはそれから三時間ほど釣りをして二十匹のナマズを釣った。アイルはホクホク顔で足を踊らせながら家路についた。あまりの喜びように他の二人までつられて笑った。


 昼飯は昨日と同じく家の外で作られた。ドワーフたちが運んできた大きな鍋に火がくべられ、煮炊きの雑炊が振る舞われた。ネネたちは市場でシソの葉を買ってきた。あいかわらず具の少ない雑炊だったがシソの香りに食がすすんだ。ナマズはまたぶつ切りにされスープにされた。女衆が下町の店から使われない鶏ガラをたくさん確保してきた。鶏の脂が浮くナマズのスープは滋養たっぷりで身体に染み渡った。

 昼飯の後、アイルたち四人はブリスコー全体を回ってみることにした。


 彼らは村の中央を流れる小川を遡って水源を見に行った。川は山間に入るとすぐに細くなり、礫石の地下に隠れた。更に進むと、か細く流れる水源の最上流に水源を示す石柱が立っていた。彼らはもう少し奥へ歩いたが、急峻な崖にぶつかったので引き返した。


 彼らは谷を下りアイル達の住居とは反対側の西側の斜面の尾根伝いに歩いた。街の西側には古くから住人が住んでいるのだろうか、屋根は補修され赤く統一された瓦で覆われていた。家と家との間に、紐にくくられた洗濯物が風にぱたぱたとはためいていた。

【アイル】「そういや風呂入ってないな。お前着替え持ってんの?」アイルはアベルに訊いた。

【アベル】「まったく持ってない」アベルが応えた。

【アイル】「ていうかさ、お前ら金持ってんの?」

【アベル】「いやまったく持ってないんだ……だからこれからどうしようかって話てるとこ」

【アイル】「市場に質屋とかあるけどいまはまだ金に変えないほうがいいよ。足元見られるから。しばらくは仕事で稼ごうぜ」


 彼らがさらに尾根を下ると職人街があった。レンガ造りの屋根の煙突からは、もうもうと白い煙があがっていた。日干し煉瓦が広場一面に干してあり、焼いた屋根瓦がその横にきれいに並べられていた。アイル達の耳に鉄を打つ金属音が聞こえた。工場の入り口を覗くと、赤く光る金属を叩いている鍛冶屋の作業場が見えた。


 かれらはさらに尾根を降りて、職人区と市場の間のスラム街にたどり着いた。飲んだくれのおっさんどもが昼から石畳に寝そべって豪快にいびきをかいていた。ここは見習い職人や流れ者が住み着く日陰の街だった。金のない新参冒険者や傭兵稼業の荒くれ者もこういう界隈に好んで住んだ。血と喧騒が渦巻く下っ端区域はどんな都市にも存在した。

 アイルは峰の上からスラムの路地を眺めていると、壁に寄りかかって煙管をくわえている髭面の浮浪者に目を留めた。彼は小道へ降りると、男に声をかけた。

【アイル】「おっちゃん、葉っぱどこで買えんの?」

 彼はうつむいたまま薄暗い路地を指差さした。

 アイルたちが路地をぶらぶらと進んでいると、道の奥から少年が走ってきた。

 少年は漢に追いかけられていた。漢は「待て!!」と何度も叫んでいた。

 少年はアイルたちの手前で、男に後ろから肩を掴まれ、地面に引き倒された。少年は両手にたくさんのりんごを抱えて走っていた。そのりんごが、引き倒された拍子に腕から転げ落ちた。少年は男に馬乗りにされ、顔面をタコ殴りにされた。

 アイル達が割って入り、男を少年から引き離した。

「なんだてめぇら!!見ねえ顔だな。新参もんか!?」男は叫んだ。「この餓鬼が悪ぃんだよ、人の売りもんかっぱらいやがってよ」

【アイル】 アイルはポケットをまさぐり銭を取り出し、言った。「いくら?」

「5カパーだよ。いっとっけどな、こんなことやってもキリねえぞ」男は言って、金を受け取りその場を去った。

 アイル達は少年を助け起こした。少年の体は痩せ細り、腹がへこみ頬は痩せこけ汚れていた。アイルたちは、少年と一緒にりんごを拾ってやった。

【アイル】「君は難民か?」アイルが訊いた。

 少年はうなずいた。

【アイル】「僕らもそうだ。これでなんか食いな」アイルは少年に5カパーを渡し、その手に握らせた、

 少年の足取りはふらふらとおぼつかなかったので、アイル達は彼を家まで送り届けた。

  

 アイル達は、入り組んだ路地裏の暗い店で、大麻の小袋を買った。そしてその足で市場をぶらぶらと廻った。活気に溢れた街の通りは屋台や売り子が立ち並び、とても昨日戦争があったばかりとは思えないほどだった。アイルは昨日見た屋台で串焼きを買い二人におごった。彼らは城壁へと続く階段を見つけ、そこに立ってみたが誰も咎めなかったので、そのまま上へ登った。そして城門の上から外を眺めた。

 ラインベルクの対岸には、果てしない平原が広がっていた。この平原では、ラインベルクの豊かな水量を生かした大規模な農耕が何度か試みられてきたが、その度に火竜の襲撃を受け、やがて土地は放棄された。地平線の奥にはロードラン南部の都市ヴェリザードの高い城壁がうっすらと見えた。

 アイルは小袋に手を突っ込み、大麻をひとつまみ取り出しもみほぐした。

【アベル】「ここで吸うのか?」アベルが訊いた。

【アイル】「別にだいじょぶだろ」アイルは言った。そして紙を取り出し大麻を巻いて棒状にすると、櫓の炎に突っ込んで火をつけた。

 アイルは大きく煙を吸い込んだ。そして肺でしばらく味わったあと、長々と煙を吐いた。

【アイル】「はい、アベルも吸って」彼はそう言いアベルに紙巻きを差し出した。

 アベルは燃えさしばらくじろじろと眺めた後、それを咥えて息を吸い込んだ。

【ジェイ】「衛兵さーん、ここで悪い事してる人いますよ~」ジェイが両手を口に当て、衛兵に向かって大声で叫んだ。

 アベルは口から紙巻きを放しむせこんだ。二人はそれを見て大笑いした。ジェイはアイルの手から紙巻きを摘み取ると、慣れた様で口に咥え、深々と煙を吸いながら城壁の向こうの遠くを眺めた。

 彼らがそうしていると、櫓の兵士たちの動きが騒がしくなった。川の上流を見ると、道の遠くに騎馬兵の隊列が見えた。

 南部連隊の兵士たちが帰還したのだ。

 

 街の広場では町人総出で帰還兵たちの大歓迎会が行われた。兵士達には酒が振る舞われ、彼らの腕を引っ張り甘い声をかける女の子たちがいた。

  広場ではお祭り騒ぎが始まった。屋台の肉や、店から料理が運ばれて、酒盛りが始まった。とうとう酒によった兵士たちが乱痴気騒ぎを始めたのを見て、アイルは段々と気分が悪くなってきた。

 もちろんブリスコーの住人が兵を歓迎するのは当然だ。しかし、スホルトもアロンゾも敵に占領されたままだった。スホルトの住人たちは殺されるか拉致されたかだろう。

 アイルたちはその場を離れた。


 アイルが家に戻ると、ネネが家にいた。彼女は家の壁に鏡を立てかけ、見慣れないスカーフを頭にかぶせてポーズを取っていた。よそ行きだろうか。

【アイル】「どこかに出かけるのか?」アイルが訊いた。

【ネネ】「うん、仕事始めたの」ネネが応えた。

【アイル】「もう?どんな仕事?」

【ネネ】「『キッピス亭』っていう冒険者ギルドの隣の酒場で、ウェイターの仕事よ」

【アイル】「へえ。でも大丈夫なの?酔っ払いに絡まれたりしない?」

【ネネ】「心配しないで大丈夫。あたしはそんなにか弱い女の子じゃないから」

【アイル】「ふうん……」

【ネネ】「今日は初仕事だから。遅刻しないよう早めに出かけなきゃ」ネネはそういうと、荷袋を肩に下げて家を出た。

 

 アイルはアベルとジェイを連れて酒場『キッピス亭』へやってきた。アベル曰く、どこかの国の言葉で”乾杯”という意味らしい。

 中は南部連隊の帰還兵でごった返していた。すでに何人もの酔っ払いが顔を真っ赤にして床に倒れ、油吸いのおが屑まみれになって床でいびきをかいていた。

 「席とれるかな」アイルは言った。

 女性のウェイターは、兵士たちには愛想の良い笑顔を向けていたが、アイルたちを見ると笑顔は消え、彼らの身なりを上から下までじろじろと見ると、鼻を鳴らして部屋の一番奥を親指で指した。難民は貧乏人だからここに来るなということだろうか。アイル達は、便所の隣のカビ臭い小さなカウンターへ案内された。

【アイル】「なんか便所臭えな」アイルが言った。

【ジェイ】「ま、今日はしょうがねえよ。兵士にゆずってやろうぜ」ジェイが言った。

【アベル】「まあもともと兵士御用達しの酒場っぽいけどね。兵舎の隣だし」アベルが言った。

【ジェイ】「そうかね」ジェイは言い、手を上げて大声でウェイターを呼んだ。

 ネネが注文を取りに来た。胸の大きく空いた黒いブラウスに白いフリルの付いた、子供っぽいデザインのエプロンを着ていた。短いスカートにの下にはハイソックスに締めつけられた肉厚の白い太ももが弾けていた。

 ネネはウインクしながらメニューを手渡すと、猫なで声で言った。

【ネネ】「ご注文はいかがですかあ?」

【アイル】「……ビール」アイルが頬杖を付きながらぶっきらぼうに言った。

【アベル】「俺もビールで」アベルが言った。

【ジェイ】「じゃあ俺も」ジェイが笑った。「お前不機嫌すぎだろう」

 ネネはビールを運ぶと、すぐに他の注文を取りに戻った。店は満員でてんてこ舞いだ。立ち飲みをしている兵士も沢山いた。

 ネネはカウンターの奥から出てきて大皿を運んできた。表面に塗られた油がジュウジュウと音を立てている小豚の丸焼きが、玉ねぎや青菜などの上に鎮座していた。酒の匂いが充満している酒場でさえその香ばしい匂いがアイル達の席まで届いてきた。

【ネネ】「これはお店のおごりで~す」ネネは言った。

 彼女は皿をテーブルに下ろし、ナイフを手に取り豚の皮に切り込みを入れた。黄金色の皮がはじけ、熱々の脂が肉汁とともに滴り落ちた。

 おーっ、と歓声が上がった。

 アイル達にはもちろんそんなものを買う金はないので、ただよだれを垂らして肉を眺めているだけだった。

【冒険者】「お姉ちゃん新入りか?いいけつしてんなぁぐへへ」鼻を真っ赤にしたハゲた兵士が目尻を垂らしながらネネの欠をぽんと叩いた。「俺の母ちゃんよりでけえケツ!ぐへへへ」

【アイル】「あの野郎……」アイルがテーブルから立ち上がろうとしたが、ジェイがその袖を掴んで引っ張った。

【ジェイ】「まあまあ。今日ぐらいいいじゃん、大目に見ようぜ」

【アイル】「……ああ」

 しかしネネは大テーブルの兵士達に袖を掴まれると、長々とちょっかいをかけられた。

【冒険者】「姉ちゃんすっげー美人だなあ。おれっちの嫁にならないか」

【冒険者】「姉ちゃん胸でかいね~、そのデカメロンはいくらで買えんのよ。グヘヘ」

【冒険者】「お姉ちゃんのそのピチピチタイツ売ってくださいぃぃ家でシコシコして家宝にしますうううっ」

 彼女は次から次へと浴びせらる卑猥な言葉を、軽く笑って受け流していた。

【ジェイ】「美人って大変だな」ジェイは言った。

 ネネがようやく開放された直後に、となりのテーブルの若い兵士がさらに調子に乗って話しかけてきた。

【冒険者】「お姉ちゃ~ん次は俺と遊ばな~い?このでっかいおしりに俺の」

 若造はそう言いながら、テーブルから身を乗り出してネネの尻を指先でつーっと撫でた。ネネは「きゃっ」と叫び声を上げ、愛想笑いしながら若造に振り返った。若造が椅子に座りなおすと、そばに誰かが立っていることに気づいた。

 若造が顔をあげると、アイルがそばに立って見下ろしていた。

 アイルは兵士の顔面をぶん殴った。

 兵士は倒れ、食器がガチャりと音を立てた。他の兵士達は目を丸くし、店は静まり返った。

【冒険者】「てんめぇ」

 男はアイルの顔面を殴り返した。そうして取っ組み合いの喧嘩が始まった 。 

 アベルとジェイは、他の兵士が加勢するかと思い、立ち上がった。しかしそうはならなかった。

【冒険者】「やれぇ!やれぇ!

【冒険者】「殺せええええ!」

【冒険者】「いてまええええ!!!」

【冒険者】「勝手に俺の女の尻、触るんじゃねええええ!!!!」

 周りの兵士たちは兵士達が乗っかり、大声で囃し立てた。

 若造の仲間が二人の間に割って入った。

【冒険者】「おいおい、やめろやめろ」彼はそういい強い腕っ節で二人を引き離したが、若造は仲間の後ろから手を伸ばしアイルのアゴをぶん殴った。

 アイルは後ろに倒れ椅子に激突した。しかしすぐに身を起こし、その仲間ごとテーブルに突き飛ばした。

 若造はつんのめって食器の上に倒れた。スープが飛び散り男の顔にこびりついた。

 若造は皿をつかむと、上手投げでアイルに投げつけた。

 アイルは頭を逸して避けた。

 皿そのままテーブルの間を飛んでいき、喧騒を無視して飯を食っていた兵士の後頭部にぶち当たった。

【冒険者】「ってめ何すんだクソ野郎!!!」

 彼は目の前にあったサラダボウルを手に取りアイル達に向かって投げた。

 しかしそれは山なりの放物線を描きアイルたちの頭上を飛んでいった。そして部屋の反対側の兵士たちにぶつかった

【冒険者】「テンメェこの野郎!!!」

 兵士はお返しに手持ちのビールジョッキを放り投げた。

 そしてテーブルの上を跨いで 走り出し、さらにはアイルたちを通り過ぎてサラダを投げた兵士をぶん殴った。

 仲間の兵士がそれに応戦した。

 そこからはもう大混乱だった。

 方方で大立ち回りの喧嘩が始まった。皿が空中を飛び、テーブルが倒され、幾多もの拳が舞った。

 アイルと若造は互いに腕を絡め組み合っていたが、ふたりとも後ろから羽交い締めにされて引き剥がされた。

 アイルはそのまま店の外に連れ出された。

【アイル】「触んじゃねえ」アイルは腕を振りほどいた。彼が振り返ると、それはデインだった。

【デイン】「お前、しばらくここ近づくなよ」デインがアイルに言った。

【アイル】「うっせぇ!指図すんな」まだ興奮状態が残るアイルは叫んだ。

【デイン】「お前正体バレたら弁償させられるぞ。犯人が見つかんなきゃ騎士団が代わりに弁償するんだから、しばらくすっこんどけ」ルドルフ

【アイル】「チッ」アイルはそう吐き捨てて店の前から去った。


【デイン】「いや~若いやつは熱気がすごいね」デインが言った。

【ルドルフ】「若いね。案外熱いやつだったな」ルドルフが言った。二人はネーヴェに出向しているだけで本来は南部連隊に所属しているため、補充要員として南部連隊にすぐに招集がかかり、守備隊として歩哨任務についていたのだ。

【デイン】「まあ嫌なことあってもさ、こうやってどんちゃん騒ぎでもして、スカっとして英気を養う。それがいいんじゃないの」

「ああ、そうだな……」ルドルフは浮かない顔をして応えた。

【デイン】「どうした、元気ないな」デインはそれを見て言った。「なあ、ちょっと歩かないか」


 二人は陽の落ちた暗い路地裏を歩いた。表通りはまだ祭りの喧騒に騒がしかったが、路地裏はしんと静まり返り虫の音だけが響いていた。

 二人は城壁につながる階段を登り、話しだした。

【デイン】「なあ、俺たちは、この戦争に勝ってると思うか?」デインは訊いた。

【ルドルフ】「どうだかな。今度の闘いで連隊はネーヴェもパルパットも落とした。南東領域は防御が手薄すぎる」ルドルフは応えた。

【デイン】「そういえば、オランドの駐屯兵ニ千人を南に移すそうだよ」

【ルドルフ】「ほんとか?それは心強いな」

【デイン】「だが、今すぐにじゃない。とにかくクワナンの進入経路をみつけないと、的はずれな場所に兵士を配置してもしょうがないしな。クワナンは完璧に補給線を隠匿している。それは補給線を隠す事自体は当然なんだろうが、ここまで完全に補給線の隠匿に成功していることが、逆にやつらの補給線が脆弱であることを示唆してると思う」

【ルドルフ】「隠匿がうまく言っているのは俺たちの内部の国賊のせいもあるだろう」ルドルフが指摘した。

【デイン】 城壁から草原を眺めているデインたちの顔をそよ風がなでた。この高山地帯の砦は晩夏も過ぎたばかりだというのにもう肌寒かった。空気の薄い空には幾万の星の光が瞬いていた。

【デイン】「俺も前線に出たいな」デインは言った。「あれだけ厳しい訓練を積んだのに、ここに残って呑気な守備隊なんてやってられっか」

【ルドルフ】「守備隊も重要だが……」ルドルフ言った。

【デイン】「俺は前線に出たいんだ。親父みたいに魔物と剣を交えてみたい。そして勇敢に戦って、死にたい……」デインはルドルフを振り返った。「俺は英雄になりたいんだよ。なあ、俺たちも義勇兵に参加してみないか」


 デインとルドルフが任務を終えて遺跡に帰宅すると、義勇兵達が昨日と同じ場所で焚き火をやっていた。すると、火の中から肉の焼ける甘い匂いが漂ってきた。

【デイン】「何焼いてるんだ?」デインが訊いた

【トグマ】「なんだと思う?」トグマがニヤつきながら答えた。「正解したら食わしてやんよ」

「正解しなくても食わしてくれよ」ルドルフは言いながら、椅子の一つに座った。昨日の焚き火はみな立ちながら話したが、今日はき火を中心にして円形に椅子代わりの石が並べてあった。

 火には骨のついた大きな肉の塊が鉄串に刺されてくべられていた。巨大な輪切りにされた肉の表面からは、油が浮き出てじゅうじゅうと音を立てながらうまそうな匂いをさせながら弾けていた。

【デイン】「なんだろうな。牛じゃないよな……」デインが腕を組みながら言った。

【トグマ】「味見してみろよ」トグマが言った。

 デインは肉を取ると、巨大な塊にどこから食ったらいいものかと思案しながら、皮のむけている食べやすそうな場所からパクついた。

 途端、油が弾けて彼は口を火傷した。

【デイン】「熱っつ」彼はそう言いつつ、肉を噛み締めた。塩で簡素な味付けをされた肉は、やたらと筋張って甘かったが、美味しかった。

【デイン】「なんだろうな……わからん」デインは答えた。

【トグマ】「それな、オークの肉な」トグマが言った

【デイン】「おえっ!そんなもん食わせんなよ」デインはそう言い、口に含んだ肉を吐き出した。

【トグマ】「けけけけけけけけ!河原で山積みになってたのからひとつ拝借したんだよ。ここらの冒険者連中は魔物を食うのは普通だぜ」

【デイン】「人間食ってたらどうすんだよ」

【トグマ】「俺は気にしないね」トグマはそう言うと串を受け取り、残りの肉にかぶりついた。

「すじ煮込みとかならもっとうまいかもしれない」アイルが言った。

【デイン】「よく人間食ってるかもしれないもん食えるな」デインが引きながら言った。

【トグマ】「そうは言うけどよ、クマだって人里に降りてきたら人間食ってるかも知んないけど食うだろ?」トグマが反論した。

「あたしたちもそう言われて納得させられたわ」ドアンナが言った。

【トグマ】「お前もうまうまいいって食ってたじゃねえか」トグマが言った。

「だっておなかすいてたんだもん」

「そういえば今思い出したんだけど、オークの中に毒飲んでるやついるかも知れない」

 トグマが肉の咀嚼をやめて、口にオーク肉を詰め込んだまま喋った「どふいうふこと?」

 アイルは砦で起こったことを話した。パルパットを襲撃したオークたちは、そのかなりの割合が毒の血を飲んだと。「……まあ大丈夫だと思うけどね。冒険者も普通に食ってる人いたし」

【トグマ】「そういえば冒険者はオーク食うのに抵抗ないみたいだけど、兵士たちは違うのな」トグマがデインに向かっていった。

【デイン】「それは、兵士はずっとオークたちと闘ってきたからね。闘いから帰ってこないやつも多かったし。多分そいつらはオークに食われちゃってるんだよ。仲間の死体を食ってるかもしれないやつをまた食べるってのはね……」

【トグマ】「なるほどなあ……」トグマは骨付き肉をじろじろとな眺めていたが、やはり食うことに決めたらしい、ぱくりと噛み付いた。

 そのとき、遠くの焚き火で歓声が上がった。酒盛りをしている冒険者たちが、一気飲み大会をやっているららしい。二人向き合った男が大きなジョッキを仰ぎ、、周り冒険者達が囃し立てていた。そのうち片方の男が地面にぶっ倒れた。

【トグマ】「おれちょっくら行って酒もらってくらあ」トグマはそう言うと焚き火へ向かった。彼は冒険者達となにか言葉をかわすと、ビールの大樽を渡された。彼は体を反り、ものの三十秒で飲み干した。

 かれは褒美にビールの樽を受け取り、こちらの焚き火へ戻ってきた。

【トグマ】「へっへーもらってきたぜ」彼は言った。そしてビールをデインに手渡した。

デインはぐいと樽を呷ると、それをルドルフに渡した。ルドルフがちびちびと樽を煽ってる最中、トグマはアイルに言った。

【トグマ】「アイル、お前もう酒場で喧嘩なんかすんなよ」

【アイル】「またその話かよ。分かってるっつうの」アイルは答えた。

「あの冒険者たち、お前のこと気付いてるみたいだぞ」

トグマにそう言われて、アイルははっとして酒盛りする冒険者達に目を走らせた。

【トグマ】「子供だから大目に見てもらってるんだと。後でちゃんと謝っとけよ」トグマはそう言った。

ルドルフはジェイに、ジェイはアイルに酒を渡し、結局全員に酒がまわり、みんなが酒に酔っ払ったところで、その日の集まりはお開きとなった。

 

 アイルは家に帰った。家はまだ壁の割れ目を埋める補修しかしていなかった。寝室には、床に直接並べた木の板の上に、藁を敷いただけの簡素なベッドがあった。彼はその上に身を投げだした。彼は興奮して寝れず、何度も何度も寝返りを打った。

 そして幾度目かの寝返りの後、気配を感じドアを見ると、そこにネネが立っていた。彼女は給仕服を脱ぎ、麻のワンピースだけの無防備な格好で立っていた。

 彼女はベッドのそばまで来ると、アイルの顔の真横に尻を置き座った。ワンピースの薄い生地は、彼女の肢体の豊満なラインを隠さなかった。

「お店で助けてくれてありがとね。うれしかったよ」彼女は言った。

【アイル】「ああ」アイルは応えた。

【ネネ】「でも、あたしはああいうのは平気だから」

【アイル】「平気なのか」

【ネネ】「平気っていうか、我慢できる。男の人だけに働かせる訳にはいかないし。男は死んでるのに、女はこんなことで泣き事いうわけにはいかないでしょ」

【アイル】「強いな」

【ネネ】「全然強くないよ、こんなの。村のみんなや、父さんのほうがずっと強い」

【アイル】「まだ話してなかったな、ヤゴーがどう死んだか」

【ネネ】「うん」

【アイル】「詳しく話すよ……」アイルはそう言い、ヤゴーの死に様を語った。彼女は黙って聞き、終わり際では鼻をすすっていた。

【ネネ】「じゃあ、父さんは立派に死んだんだね」

【アイル】「そうだ。王女が生きてるのもヤゴーのおかげだ」

【ネネ】「うん、そうだね」ネネは言った。「……ねえ、今晩一緒に寝ていい?」

【アイル】「え?」アイルが言葉に詰まっていると、彼女は蝋燭に蓋をし明かりを消した。部屋は暗くなった。彼女はアイルの真横に身を横たえた。

 そして彼女はアイルの頭を抱き寄せた。

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