はかせの実験
科学技術が高度に発展したどこかの国の善良な博士はロボットを作った。
博士は人のために生きる、そんなロボットを作りたかった。
願いを込めて5体のロボットを作り上げた。
博士は「人間らしさ」を目指し、性格をプログラムして感情を作り上げた。
そして、見事なまでに性格の違うロボットたちが誕生した。
勇敢なモノ、怠惰なモノ、お調子モノ、穏やかなモノ、粗雑なモノ。
また、彼らが人を守れるよう、博士はロボットにさまざまな力を与えた。
適応力や堪能な言語能力、武器の扱いなどなど、多くの機能を備えてあげた。
一方で博士はそれらが災いに転じることも恐れた。
そこでロボットに制限を与えた。
人から感謝されることでレベルが上がり、次々機能が解放されるようにした。
そしてそこにちょこっとスパイスを加えて完成したのが
「育成型勇者ロボット」
博士は彼らを大層大切にしました。
博士はずっと彼らと一緒にいたかったけど、人のためになっていないことに気づきました。
せっかく作ったこの子達。
もっと多くの人に知ってもらいたい。
博士は彼らの旅立ちを決意しました。
各ロボットは博士の発明品である空間移動装置で別々の世界へ送られるのでした。
勇敢なモノは赤の世界へ。
怠惰なモノは青の世界へ。
お調子モノは緑の世界へ。
穏やかなモノは白の世界へ。
粗雑なモノは黒の世界へ。
最後のロボットを送り届けようとした時、博士はコードにひっかかり花瓶の水を機械にこぼしてしまいました。
機械は縦に横に荒々しく動いた後、煙を出して止まってしまいました。
「おおなんてことだ可哀想に。今すぐ直してやるからね」
しかし、移動装置の中にロボットの姿はもう見当たりません。
すでにどこかの世界は転送されてしまったのでしょうか。
いったい、最後のロボットはどこに行ってしまったのか。
博士には見当もつきません。
博士は途方に暮れました。
申し訳ない申し訳ないと呟いて眠りにつきました。
博士の枕元には落として割れた花瓶が、繋ぎ合わせになって置いてありました。
最後にミスして送ってしまったロボット「粗雑なモノ」を忘れぬように、と。