第八十五話:押しかけ許嫁
私はロリコンじゃないのでどっちかって言うと熟れた人妻の方が好きですが、ファンタジー世界の結婚年齢は平均寿命からして低いので低くなりますよね。
アヤさん美人だけどそもそも三次元の女性怖いし、百歩譲って選ぶとしてもアヤさんはない。いや、美人なんだけどね、間違いなく。口開かずに食べ物与えずに座ってにっこりしてたらモテると思います。
「主様、本当になんにもないんですね?」
「ある訳ないだろう。アヤさんとは死んでも勘弁だ」
「ちょっと酷くないですか!?」
アリスをなだめないといけないので黙っててください。アヤさんの口の中にチキンレッグを放り込んだ。
ちなみにアリスの怒りは解けた。それもそうだと説得力抜群なところがさすアヤって感じ。
初日の売上は予定の三倍弱。こんなに売れるとは思ってなかった。いや、そりゃあまあ唐揚げだからなのかもしれないけど。
カレー屋の方もいい感じに売り上げが伸びている。子どもの安全性の問題がなければ孤児院に任せようと思うくらいだ。
待てよ、安全性? 今は転移の御守りを握ると部屋に出るからそこにゴーレムを常駐させておけば。
という訳で追加で五体作成。転移先の部屋に設置した。識別実験しましょ。まずはぼくの分身体……襲わない、良し。次はアリス……襲わない、良し。孤児院の子どもを一人登録して……襲わない、良し。今度は登録しないでアリスと一緒に……作動した、良し! なお、ゴーレムのパンチはアリスが無事受け止めました。
これでカレー屋の安全対策もだいぶ完成してきたかな。アリスやアスカが動ける様になるから良かった。
「ここが噂の唐揚げとかいうものを売ってる店ですか?」
その日、豪奢な馬車から降りてきたのはとんでもない美人のマダム。そして親子なのかそれによく似た女の子。歳の頃は十二、三くらいだろうか。二人とも長い金髪をなびかせて碧眼をくりくりさせている。来ている服は高そうな品。間違いなく貴族だ。
「いらっしゃいませ、こちらにお並びください」
「貴様、このお方を誰だと思っているのだ? 待てと言うのか?」
従業員が声を掛けると護衛の騎士らしき人物がすごい剣幕で文句を言ってきた。これは相談役の出番かな、と思ったらマダムが言った。
「お下がりなさい。ここでは例え皇帝陛下であっても順番は守らねばならないと聞いています。そうなのでしょう?」
「は、はい、その通りで」
「ならば並びましょう」
「いや、しかし……」
「聞こえなかったのですか? 並びます。不服なら帰りなさい」
マダムが従業員に言ってくださった。騎士は粘りそうだったがそれもシャットダウン。なんだ、あの貴族ちゃんと言ってくれてたんじゃないか。
その後マダムとお嬢さんの順番が回ってきて、それぞれ唐揚げを注文していった。さすがに広場で食べてもらう訳にもいくまい。
「あの、よろしければ個室がありますのでそちらで召し上がりませんか?」
「あなたは?」
「私は護と申します。この店の主です」
「あなたが?」
そういうとマダムはぼくのことをジロジロと眺めた。なんだなんだ? ちなみに今のぼくは通常の分身体である。セ〇ールの出番はまだない。
「ふむ、これならいいでしょう。あなたはどうです?」
「はい、問題は無いかと思います、お母様」
やはり親子だった様だ。そうだ、親子丼を出すのもいいな。鶏肉だし。勿論海鮮の親子丼も好きだよ。
そうして二人を個室に案内。騎士たちもついてくるって言ってたのをマダムが止めた。そんな事はしないけど個室でぼくが襲ったらどうするんだ?
「お待ちになってください」
「はい?」
「あなたにお話があります」
「ええと、なんでしょうか?」
「まずは私の身分を。私は帝国第十七皇妃、フレデリカと言います」
「第十七皇……妃!?」
「はい、主人がいつも世話になっております」
つまり、この美人なマダムは皇帝陛下の奥さん? いやまあ三十人以上居るとか言ってたけど。
「そしてこの子は私の娘でアナスタシアです」
「どうぞ、アーニャとお呼びください」
金髪碧眼で名前はアーニャ。ううむ、もっと白っぽかったら納得なんだけど。
「それでフレデリカさんとアーニャさんはぼくに何の御用でしょうか?」
「はい、アーニャをそちら様の、マモォール様の正室に迎えていただきたく」
「なるほど。正室にねえ。正室に、正室……正室って……えっ!? 正室?」
言ってる意味がいまいち分からなかったけど正室と言えばほら大河ドラマとかで出てくる正妻の事だよな? 単なる部屋なら別にあげてもいいけど。
「いやでも、そのアーニャさんはまだ早いのでは?」
「何を仰います。私はもう十三です。ちゃんと結婚できる年齢ですよ」
「ええ……」
後で聞いたら帝国では十歳で結婚出来るらしい。いやいや、早すぎるでしょ! と思ったらほぼ貴族のためのものなのだとか。一般的には十五歳が目安らしい。それでも早いと思うけど。




