第八十三話:ゴーレム起動
EMETH(真理)のEを取ったらMETH、死です。
お風呂指導は女性はアインに。男性はぼくがって思ったけど、やりたくないのでトーマスを呼んできて任せた。いやだって多少見目は良いとはいえ、冒険者が大半なんだもん。古傷があったり、眼光が鋭かったりでモニター越しでも身体がもたないよ。
そして接客のマナー。あいさつは全ての基本。いらっしゃいませ、ありがとうございます、かしこまりました、申し訳ございません、恐れ入ります、少々お待ちください、お待たせいたしましたの接客七大用語は勿論、丁寧なお辞儀の仕方なども教えた。
そして客が無茶を押し付けて来た時には裏にいる責任者を呼ぶようにと言ってある。呼ぶ用のボタンも着けた。これはぼくのところに直通で連絡が来る。えっとやっぱりぼくが管理するの?
んで、三階にはぼくの分身体をもう一体置いておいて不測の事態に備えるんだとか。いや確かに作れるけどな。ええと、今度はぼくにそっくりじゃなくてもっと強そうな見た目? じゃあセ〇ールかなあ。なんで不評なの? 最強の男じゃん!
一通り訓練が終わったら賄いとして唐揚げ、チキンステーキ、チキンカツ、照り焼きチキンを試食して貰う。いやまあチキンというかロックバードな訳だけど。おっ、みんなすごい勢いで食べるね。あー、皆さんにはこれを作って貰います。大丈夫、難しくない難しくない。
冒険者ギルドのギルドマスターと商業ギルドのハゲ……じゃない責任者にも試食をしてもらった。みんな美味い美味いって食べてた。ところでなんでアヤさんまで居るんですか?
「皇帝陛下が見て来いって」
あーまあ命令なら仕方ないですね。でもちょっと食べ過ぎじゃないですか?
「食い溜めしとかないと次はいつになるかわかんないもん」
どうやら腹がはち切れるくらいまで食べるらしい。こっちの家に来ればいつでも食べさせて……あー、アインが居ないか。アスカが居ればいつでも帰って来れるけど。
さて、店が軌道に乗るまではメンバーをあっちから戻すのは得策では無い。一応こっちにはアミタが居るけど、肉体労働はさせるのがしのびない。色々作らせてるしね。
という訳で労働力となるパペットを作ろうと思ったら、パペットみたいな人間の姿じゃないけど労働力に使える「ゴーレム」を作り出すことが出来るらしい。ある程度簡単な命令なら聞くそうだ。
値段もパペットの二十分の一だから大丈夫そう。なので五体ほど作る事に。外面はのっぺらぼうな感じで少しゴツゴツしてる。一応硬いから戦闘とかも出来るし、身を守れるらしい。
とりあえず作って動かしてみる。ふむ、多少ぎこちない動きだけど仕事をするのは問題なさそう。やってもらうのは畑仕事と狩りだな。ついでに素材採取。まあアリスがやってたのをやってもらう形に……あれ? アリスいつ戻ってきてたの?
「主様、私を捨てないで!」
「いやいやいやいや、なんでそうなるんだ?!」
「だってこの子達って私の役目をやらせるんでしょ? ほら、私が要らなくなったんだあ!」
「違う違う、違うから。ほら、アリスには向こうを任せてるからこっちでの仕事を任せるのが困難だからね」
「捨てない?」
「頼りにしてるよ」
「主様!」
あ、うん、飛びついてくるのはいいけど、そんなに締め付けたら中身出ちゃうからね。ほら、向こうに帰って孤児たちを守ってあげて。アスカ、アスカー! いや耳塞いでるフリとかしなくていいから。頭の中に直接語りかけるんだから耳は意味ないんだって。
アリスを帰したあと、ゴーレムたちに晩御飯を作らせてみる。……うん、料理は別にいいや。いやいや、そんなに不味くはないよ? でもね、身体が邪魔で台所が荒れるからね。アインが見たら不機嫌になってしまう。まあぼくのご飯はカップ麺でいいから。
戦闘訓練もやらせてみた。ヤマイノシシくらいなら普通に退治できるみたい。ヤマイノシシの突進を数体で止めて、その間にゴツゴツした手や足で殴る蹴る。何体か壊れたけど。いやまあ修理もそんなに金かからないで出来そうだから問題ないか。
表のゴーレムを見て、ぼくの家が侵略されてると思った嵐の運び手の皆さんが剣を抜いて戦っていた。と言ってもボコボコにされて森に放り出される寸前に気づいたんだけど。
「酷い目に合わされました」
「いや、ごめんね」
家の中用にも分身体を設置。ゴーレムの設置ついでに作った。ゴーレムの指揮官個体でもある。というか作っといてよかった。
「なんか食わせてください」
「アインは留守だから大したものは出来ないよ?」
「……そうですか」
あからさまにガッカリした顔された。いやまあアインほどの腕は無いけどこのゴーレムたちもなかなか……あ、台所破壊したくないから外でやろう。さっき捕って血抜きしたヤマイノシシを塩コショウで丸焼きにしましょ。沢山あるから食べて食べて。




