第八話:二体目のパペット
やはりハウスキーパー的なのは必要ですよね。
「この家の中で護さんがする行為は全て補正が付きますよ?」
事も無げにフォルテは言った。台所使ってツノウサギを解体したら簡単だったから聞いてみたのだ。
「その代わり、家から離れたらマイナス補正入りますけど」
「家から離れる気なんてないからいいよ」
ぼくは引きこもりだから人が土を離れては生きていけないようにぼくは家を離れては生きていけないんだ。
「さて、それじゃあアリスには周りの動物狩りわ続けて貰って、ぼくは部屋で新しいパペットを作りたいんだけど」
「あ、課金するんですか?」
「課金?」
「ほら、新しいパペット作るって」
「課金、要るの?」
「一体一千万くらいですかね?」
高いよ! そんなお金どこにも……あれ? なんか残高が一千万超えてる? 仮確定状態?
【ヘルグリズリーを売却したら以下の金額になりますが売却しますか?】
ヘルグリズリーが一体二百万!? なんというウハウハな。もちろんイエスだ!
瞬時に一千万が手に入った訳ですが、さて、じゃあ限定版のフィギュアでも……
「パペット作るんじゃなかったんですか!?」
「いや、だってアリスが居るから問題ないだろ?」
「愛玩用の作るんじゃなかったんですか?」
「よく考えると愛玩用とかでもぼくが緊張しちゃうからなあ」
「私には普通ですよね?」
「まあサイズ的に大丈夫だから」
フォルテのサイズがぼくと同じくらいだったらきっとぼくはテンパっていただろう。今のサイズで良かったよ。
まあ、初志貫徹って事で新しいパペットを作る事にした。まあまずはハリガネタイプの素体だけだけど。ガチャは引けないから前に引いた槍を持たせてやった。
「お前の名前は……アイン、アインだ。これなら男型でも女型でも大丈夫だろう」
「了解。私は個体名アインです」
とりあえずこのパペットには家の中の事をやらせたい。バトルをやって成長させるのは手っ取り早いけど、それとは違う成長のさせ方もあるはずだ。
「よし、アイン。まずはこの部屋の掃除をしてくれ」
「いやでーす」
は? なんか今嫌って聞こえたが?
「なんでだ? 部屋の掃除よりも戦闘がいいのか?」
「面倒なんでどっちもいやでーす」
パペットに面倒って言われた!? 一体これはどういう……
「あー、パペットって作った本人に似るんですよね、最初は。だからこういう感じになるのも難しくないかと」
つまり、このパペットはぼくに似てるから面倒な事を投げ出すんだな。なんか言ってて涙出てきそうだよ。
「アイン、君にも仕事をしてもらわないと困るんだよ」
「私は寝て暮らしたいです」
「美味しいご飯を作れるようになって欲しい」
今のところ美味しいご飯を食べるには通販の出前を使うか自分で作るしかない。いや、ぼくとてスキルがあるから出来ないことはないんだけど。
「わかりました。少々お待ちを」
なんだかんだ言ってもやはりぼくのパペットだからな。マスターであるぼくの意見は絶対……
「おまたせしました。どうぞ」
ぽくの目の前に出させたのは謎肉が入ってるカッ○ヌードルだった。それもシーフードとかカレーとかじゃなくてドノーマルのやつだ。
「アイン、これは?」
「手作り料理です」
蓋開けてお湯注いで三分待つのが料理だと?
「ダメだ。仕方ない。見ていろ」
ぼくは台所に行くとそこに出しておいた数々の野菜を手に取った。うーん、料理とか特にやった事ないんだけどな。よし、煮たり焼いたりすればいいか。まずはツノウサギの肉。これを焼こう。
そう思って台所に行くと塩コショウが光って見える。これを使えというのか? ぼくは塩コショウをふりかけ始めた。ある程度ふったら頭の中にストップと声が響いた気がした。
次に焼き料理。火力の調節も焼き加減も、全部ナビされた様にやり方がわかった。これも引きこもりの効果だろうか?
などと言ってたら料理が出来た。ちょっと味見……我ながら美味い。
「護ひゃん、こえおいひーでふね」
フォルテが肉を頬張っていた。何やってんだお前。それを見ていたアインはウンウンと頷いた。
「なるほど。作り方は覚えました。これなら出来そうです」
ん? つまり、パペットは学習してなくて料理が出来なかったと? 学習してたのはぼくがやってたカップ麺の作り方だったという訳か。パペットを育てるのは楽じゃないんだな。
「よし、じゃあ次は味噌汁を作ってだな……」
それからご飯の炊き方というか炊飯器の使い方と味噌汁の作り方を教えた。するとアインは見てやらせたら出来るようになっていた。これならしばらくは料理任せてもいいかな?
「アイン、じゃあ晩御飯は頼んだぞ」
「かしこまりました」
やり方を知ってたら怠けずやるんだな。まあ出来もしないことをやれって言われるのは辛かったもんな。よし、晩御飯が楽しみだ。




