第七十七話：カレーの魔力に抗えません
書いてたらカレー食べたくなってきました(執筆場所はマクド)
「そんな訳だからアミタ、結界付与の御守りを作ってくれないか？」
「なんやいきなりですな」
いつの間にか自分の研究室に戻って何やらいじってるアミタに聞いてみた。
「出来る？」
「そらまあでけん事はないやろうけど、どんくらいの性能のをお望みなん？」
「そうだな……危ないって思ったら発動する様なバリア？」
「旦那はん、そないな無茶言われても」
「やっぱりダメかな？」
「せやなあ、せいぜいが握り締めたら特定の場所に転移するくらいやなあ」
いや待て、そっちの方が難しくない？
「バリア作るんなら個人情報入れて、その人やないと使えんようにせんと悪い奴に見つかった時に取り上げられて悪用されるやろうし、あと、その子の形にバリアが展開するようにせんと、素早く羽交い締めされたらバリアの中に入られるかもしれんしな」
「お、おう」
さすがにそこまで考えてなかった。でもそうか。悪党に渡った時の事を考えんといかんよなあ。
「その点、転移やったら店の一室にでも転移する様にしとったら悪い奴に使われてもみんなで袋叩き出来るからな。もちろんアリス姉様やアスカ姉様にも信号が行くようにしとかなあかんけど」
なるほどなあ。いや、それ以前にそんな魔法を付与する事が出来るかって話なんだが。
「バリアでも転移でもアスカ姉様が使えるから付与には全然問題ないで」
つまり、使える魔法なら付与出来るのか。アミタ、恐ろしい子！
「せやからアスカ姉様呼んできて貰えます？」
「ああ、まあ、作る段になったらな」
今は店のみんなにチキンレッグじゃなくてカレーにする事を伝えないといかん。という事でぼくの分身体を起動。
「えー、この店で売るものを変更しようと思う」
「えっ、何を売るんですか！？」
「今から変えて間に合うんですか？」
「安心して欲しい。売ってもらうのは作り方がそこまで難しくないものだ。これからみんなに食べて貰う。アイン」
「こちらが売っていただく料理、カレーです。ナンという薄焼きのパンにつけて食べてください」
「このナンも私たちが作るんですか？」
「作り方はそんなに難しくありません。大丈夫です」
そしてみんながそれぞれナンを手に取ってカレーにつけてパクリ。
「これは……少し辛いですが、美味しいですね」
「こっちのは辛くない。そして美味しい！」
「これは……かなり辛いですが美味しいです」
一応辛口、中辛、甘口のルーで試して貰った。それぞれ好評な様だ。
「これならいけると思いますよ。ですが色が」
「そうですね、色が食べ物の色してません」
「もうちょっと美味しそうな色なら」
そうか、ぼくらはこの色で慣れてるし、カレー＝美味しいという方程式が出来上がってるから気にしないんだよな。食欲をそそる色ではないか。
「よし、まあ色は仕方ないものとしよう。色を変える為に変なものを入れても困るし」
「そうですね。味が変わってしまいます」
「とりあえず孤児院の子たちにも食べてもらおうか」
という事で鍋を持って孤児院へ。
「お昼ご飯食べたかな？」
「今日はまだだよ。なになに、美味しいものあるの？」
「今日はみんなに味見をして欲しくて」
「うわぁい、やったー！ シスター、ご飯が来たよ！」
ご飯が来た、は、まあ苦笑いするしかないけど、シスターが出てきてくれたから良しとしよう。
「ご飯が来たって……あ、これはこれは」
「どうも。お昼ご飯代わりになるか分かりませんが、うちの店の新作を持ってきました」
「そうですか！ さあ、是非中へ！」
食料を持って来た事が確定したからか満面の笑みを見せてくれたシスターレナさん。いや、いい笑顔だ。守りたい、この笑顔。
「さあ、これが食べてもらうカレーだよ！」
そして鍋を取り出すと子どもたちのお腹が一斉になった。あー、うん、カレーの匂いってお腹空くよね。もう暴力的に。ちなみに孤児院だから甘口しか出してないよ。
「この薄いパン、ナンって言うんだけど、これにつけて食べてね」
「はーい、いただきます！」
「うわぁ、美味しい！」
子どもたちは食べるのに躊躇はしてないみたいだ。色とか見てないのかな？
「色は変だけど美味しそうな匂いがしてるから美味しいに決まってるじゃん！」
「そうなの、美味しいのよ、香りだけでお腹いっぱいになるのよ」
「じゃあお前は食うなよ」
「意地悪なの！ そういうのは女の子から嫌われるのよ！」
「じょ、冗談だよー」
子どもたちが和気あいあいとカレーを食べている。小さいカップにナン二枚もあれば十分。スプーンとか無くても食べられる。カップは土魔法でいくらでも作れるしな。
よし、じゃあ明日からは新装開店だ。気合い入れて売って孤児院を何とかしよう！
