第七十三話:カチコミだあ!
なお、ついて行っても役に立たない主人公
ぼくは借金なんてした事ない。というか借金するヤツはだらしない、自分の管理すら出来てないやつだと思ってる。あ、事業資金借りるのはちょっと違うと思う。そうしないと起業すら出来ないだろうし。
だけど、レナさんは、孤児院の院長さんを救おうとして、そして院長さんも病気になり薬代すら払えなかったのは身銭を削って孤児院に投げうったから。そんな優しさの連鎖を、不幸の連鎖を「だらしない」なんて呼べない。
というか、フォルトゥーナさん、あんたの教会の人間が困ってんだから助けてやれよって思ったけど、そう簡単には介入出来ないんだろうな。
「だ、大丈夫、任せて」
「ありがとうございます。これで思い残す事はありません」
レナさんがぼくの言葉に深深と頭を下げる。勘違いしているようだが今は訂正しない。なぜならぼくだと上手く説明出来ないからね!
「アリス、アスカ、あいつらの居場所分かる?」
「ご主人様のご命令とあれば。《魔力探査》」
アスカが名乗りを上げて何やら呪文を唱えた。すると目の前になんかデカい液晶画面みたいなのが映った。これはどこだ?
「この辺りの地図です。私たちはこの辺り」
そう言ってアスカは指を指す。いくつかの塊が密集している。
「そして奴らはこの点です」
見るとここから遠ざかっていく点が五つあった。スピードはそれほどでもない。まあ、怪我人を背負ってるからかなあ。
「止まりましたね。アジトでしょうか」
「あの、そこは金貸しさんの事務所だと思います」
「……つまり、最初から隠してもなかった訳か」
「そういう事になりますね」
魔力探査とか使わなくても場所がわかったんだ。うん、いや、もしかしたら金貸しを貶めるための陰謀だったかもしれないから追跡したのは意味がなかった訳じゃない!
「よし、行こう」
「はい、主様」
「いっくぽーん」
アスカはどこの魔女からその口癖習ったんだ?
「あの、まさか金貸しのところへ?」
「はい」
「そんな、危険です! 私の為にそんな事は……」
「勘違いしないで、主様はあなたの為じゃなくて子どもたちの為に行くの。あなたは関係ない。分かってる?」
「アリス姉様、黒い、黒い、オーラが黒いです!」
いやまあ確かにシスターレナの為というよりかは子どもたちの為だけど、レナさんの為でもあるからそこまで言わなくてもいいんじゃないかな?
「ご主人様、何やら仰りたいご様子ですが姉様が手がつけられなくなりますのでおやめ下さい」
「? ん? まあ、今はそれどころじゃないか」
そしてぼくらは金貸しの事務所に向かった。
「あのぉ」
「あん? 何だ、てめぇは!」
「ひっ」
よ、よく考えたら一旦帰って分身体で来ればよかったんだ。しまったなあ。勢いで来てしまった。
「主様に何するんだ!」
アリスがぼくを睨みつけた男の鳩尾に拳をめり込ませて男を膝から崩れさせた。
「アリス、その、いきなり暴力は……」
「だって、主様に危害を加えようとしてましたから!」
「あー、うん、そうだね。とりあえず中に入ろうか」
「それじゃあ、私が祝砲? 開戦の狼煙? をあげますね!」
次の瞬間、事務所の入口が魔法で吹っ飛んだ。
「な、なんだァ!?」
中でザワザワした感じがする。まあそりゃあいきなり襲撃に来たとしか思われんよなあ。
「誰だ!」
「ぼっ、ぼっ、ぼっ、ぼくっ、ぼくっらは、その、あの、こじ、孤児院の」
「あ、こいつら孤児院の前でアニキをぶっ飛ばした」
「なんだと!? よし、お前らやっちまえ!」
あれぇ? 話し合いは? いや、ぼくがしっかり会話出来ないのが悪いんだけど。あー、やっぱり失敗したなあ。
「どっせーい!」
アリスが向かってくる先頭の男を引っつかむと片手で持ち上げて、後続のヤツらにぶん投げた。技でもなんでもない純粋なるパワー。なまじ体格が良かったお陰で数人を巻き込めた。
アスカは風の魔法で近付いて来る奴らを弾き返している。横から来られると困るからね。ぼく? ぼくは何にもしないでポカーンと見てるよ。というかぼくが殴りかかっても返り討ちに合うだけで何の戦力にもならないからね。
そんな感じでアリスがちぎっては投げちぎっては投げしてると金貸し屋のボスだけになった。風の結界をアスカが張ったので中にはぼくたちとボスしかいない。
「きょ、教会の借金、ひ、酷くないか?」
「はあ? そんな事お前らに関係が……ひいっ、いえ、すいません。そうですね。酷いと思います」
「チャラにしてくれませんか?」
「はあ? あの女を手に入れるためにどんだけ苦労したと……いえ、すいません、で、ですが、あの女が手に入らないと俺たちが貴族様に」
どうやら裏には貴族が居るらしい。なんだか面倒くさい話になってきたぞ?




