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第七十二話:借りた金は返すのが当然です

借りた分だけ返せばいいなら簡単なんですけどね

 ぼくは一体何の為にお金を稼ぐのか。うん、理由が無くなってしまった。もう一体くらいならパペット作ってもいいかなとは思うけど。


 「立ち直れますか?」

 「ええ、まあ。そう言われたらそうだなとしか」


 ショックではあるが奴隷も買ったし、店も動き出しちゃったから途中で止まるのもどうかと思うんだよね。まあなんならトーマスさん一家に店の権利譲り渡しても良いんだし。


 「腹は決まりましたか?」

 「ええ、まあ、そんなに決まってませんけど、それなりにやろうかなと」

 「そうですか。あなたに幸運の守護があらんことを」

 「ところでフォルトゥーナさん」

 「なんですか?」

 「ちょっとあの像は盛りすぎじゃないですか?」

 「ほっといてください!」


 そんなやり取りを最後に神界から追い出された。だって不自然だもん、あの造形は。気になるよねえ。


 「あの、大丈夫なのですか?」

 「え? 何がですか?」

 「その、あなたが祈り始めると身体が光って」


 え? そんな事になってたの!?


 「主様神々しくて素敵でした」

 「ピカピカ光ってましたよ。ウケる」


 フォルトゥーナ! 何の影響もないんじゃなかったのかよ!


 「やめて、やめてよ!」


 その時に表の方から少女の悲痛な叫びが聞こえた。状況誤魔化せられるし、女の子の悲鳴を放ってはおけない。


 「とっとと立ち去れって言ってんだろ! ぶっ殺すぞ!」


 表に行くと五人ぐらいの強面の集団が孤児院の入口に(たむろ)していた。


 「あなたたち……」

 「おお、シスターレナ。ご機嫌麗しゅう。いつまでこんな孤児院に居座るおつもりですか?」

 「そんな事あなたがたに関係ないでしょう!」

 「いえいえ、関係はありますなあ」


 そう言ってリーダー格の白スーツの男が懐から紙を取りだした。その紙を見た瞬間、レナさん?の顔が曇る。


 「そ、それは……」

 「お分かりでしょう? 先代の孤児院長が借りたお金ですよ。金貨二百枚、耳を揃えて返してもらいましょうか?」


 それは随分借りたなあ。一体何の為に……ギャンブルてもやったのか?


 「院長先生が借りたのは金貨十枚も無かったじゃないですか! それなのにあなた方が」

 「人聞きの悪いことを。我々も慈善事業ではないんですから」

 「暴利にも程があります。それに最初の頃に返すと言っても受け取らずに……」


 なるほど。お金を長く貸すことで利息を積み重ねさせ、手遅れになったところでここの土地なりレナさんなりをどうこうしようというところかな。


 いや、ぼくには関係ないんだけど。ほら、今あったばかりだし? 可哀想と言えば貸したお金が戻ってこないこの人たちも可哀想ですよね。


 「ま、待ちたまえ!」

 「なんだァ?」

 「ひっ!?」


 勇気をだして止めようとしたが、口から出てきた制止の言葉を跳ね除けられてぼくは生きた心地がしなかった。


 「おい、てめー、部外者の分際で関わろうってか?」

 「それなら内臓とか切り刻んで売ったら金になるかもな」

 「いやいや、誰も食わんだろ」


 そう言うと彼らは笑い出した。頑張って声を掛けたんだけど……奴らは……


 「主様に何をするつもりだ!」


 そこに教会の屋根からひとつの影が舞い降り……いや、イナズマキックばりな降り方で降りてきた。


 「ななななな、何の真似だ!」

 「主様に危害を加えようとするやつは許せない」


 アリスがそのまま一番身体が大きい男のそばに行くと、発勁、とでも言うのだろうか、手からとんでもない力を発揮して、一番大きな大男を吹っ飛ばした。


 「なあ!? お、覚えてろよ!」


 そんな捨て台詞を吐いてチンピラ共は逃げていった。


 「ありがとう、助かったよ、アリス」

 「主様の為ならこれくらい平気平気」

 「すいません、私どものせいで」

 「いいんですよ。良ければ事情をきかせてもらえないでしょうか?」


 レナさんは素直に頷くと口を開いた。


 レナさんもこの孤児院の出身者である。前任の司祭様は元貴族で温厚な人だった。孤児院の運営にお金が足りなくなると自分の資産を崩してそれに充てた。


 ある日、司祭様が流行病に倒れた。司祭様は心配ないと言うけど薬も高価で手が出ず、このままだとまずい事がわかった。そこで闇金にレナさんたちがお金を借りたのだが、売り飛ばされそうになったところで司祭様が自分の借金にして返してくれていたのだそうな。


 そんな司祭様も亡くなりしばらく経ったある日、奴らがやってきて金を返せと脅されたらしい。警備兵に通報してみたが、借金によるトラブルは介入出来ないとのこと。


 「その、護様にお願いが」

 「え? なっ、なんです?」

 「この子たちの面倒を見てもらう場所を探してもらうことって出来ないでしょうか?」

 「えっ、こ、ここは?」

 「借金を返さないといけませんから……」


 そう言ってレナさんは顔を俯かせた。

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