第六十八話:皇帝陛下のカップ麺
女性相手も偉い人相手もむぅーりぃー
「この度は私を買っていただいてありがとうございました。精一杯御奉仕させていただきますね」
残り三人、カタリナ、モニカ、ミカエルの面接が始まった。口火を切ったのはミカエル。三人のまとめ役っぽくてキリッとした美人。迫力がある。
「それで我々はどのような順番で寝所に赴けばよろしいのでしょうか?」
いやだからなんでそういうの前提なの!?
「独身の男性の方が奴隷を購入する時はそういう場合が極めて多いと教わっておりますので」
確かに独身ではありますが。
「それとも寝所へのお伺いは既存の使用人の方々にお聞きした方が?」
「そうですね。では後ほど順番について御説明を」
おいアイン、調子に乗るんじゃない。寝所も何もお前らもそういうのの対象じゃないんだっつーの。
「ねーねー、ご主人様は不能なの?」
どストレートに聞いてくる……えーと、モニカだっけ? 活発そうな美少女だ。なんというか「わからせ」たくなる。
「うん、まあ(そう思いたかったらそう思ってくれた方が気が楽だしいいな)」
何せ不能だろうと何だろうと三次元に手を出す気はない。モニカは心底ほっとした様な顔を浮かべた。そりゃそうだ。身の危険が無くなったんだもの。
「触るだけでしたら私は別に」
カタリナもギュッとくちびるをかみしめながらぼくが触る事に同意していた。丁寧な子だ。身長はいちばん高いけど当たりは控え目である。
ちなみに今回、三人の面接に関してはぼくだけじゃなくてパペットのみんなも来ている。何故かって、呼吸困難にならないためだよ。
「それでご主人様は誰がお好みですか?」
「主様の好みはわたし!」
何故お前が返事をするんだ、アリス。そもそも誰も夜伽に招かないからな!
そんなこんながありまして、お店を実際に運営するのにあたってアインが指導をしていた。ぼくはその間、せっせと焼き鳥作りに専念していた。いや、こういう時は捗るなあ。
アスカとアリスは鳥を捕まえに、アミタは内装の続きをしてもらっていた。つまり、今のぼくはフリー! いやだからといって街に出たりはしないけど。街怖い。コンビニとかだったら行けるんだけどコンビニこの辺にないからなあ。
部屋に戻ってゲームやりたい。ほら、ゲームの経営なら簡単に出来るんだから。物件が買収にあってるからフル〇ライトさん、演説して!
「ふむ、ここか」
「あ、まだ開店しておりませんのでご入店は御遠慮願います」
「大丈夫だ。我とマモォールとの仲だからなあ」
誰が来たのかとこっそり覗いてみたら、ひょこっと顔を出した皇帝陛下の姿が。いや、予想はしていたけど直接乗り込んでくるか?
「おお、そこにおられたか、マモォールどの。さあ、我は腹が減ったぞ!」
どうやらご飯をたかりに来たようである。だが、残念ながらアインは指導中だからまともなご飯はないぞ?
「それは仕方ない……そなたが用意せよ」
皇帝陛下はぼくに言い放った。いやいやいやいや、ぼくがご飯の用意だなんてそんな……大学時代ぐらいしかやったことないぞ。
それでも皇帝に逆らうのもなんだなあ、と、食事の用意を始める。と言ってもぼくに出来るのはカップラーメンにお湯を注ぐのがせいぜい。なので、せめてぼくの好きなカップラーメンでもてなそうと各種購入した。ポットにお湯も入れてるし、これで万全!
「おお、ここにおったか。水臭いでは無いか。帝都に来たのなら我のところに来て欲しかったのだ」
いきなり謁見? いやいやいや、謁見まで普通は時間が掛かるものだと聞いてる。流石に横紙破りは良くない。いや、でもまあその皇帝陛下自身が橫紙破るって言うか横車押し出してるっていうか。
「それは、失礼、しました」
ぼくはカップラーメンをすすりながら皇帝陛下に返事を返す。
「ふむ、食事中か。それは我も食べる事が出来るのか?」
「……どうぞ」
食べたそうにしているのでポットからお湯を出してカップ麺の容器に注ぎ込んだ。
「ほう、これはお湯か? お湯を自在に出せる魔道具? それともマモォール殿の魔法かな?」
いや、魔法とか出来ないから。言われてみればこの電気ポットっていうのもかなりなオーバーテクノロジーだよなあ。
「三分」
「ほう? 三分待つのか? よかろう」
よし、ちゃんと伝わってるな(パーフェクトコミュニケーション)。まあやる事ないから沈黙するんだけど。
「マモォールよ、そなたは一体何者なのだ?」
何者、その質問の答えは異世界から呼ばれた者である。言っていいものかは分からないけど。
「出来た」
ぼくはカップラーメンの蓋を取り、フォークを渡した。流石に箸は使えまい。そして自分もフォークを出してパスタを食べる時の様に巻き付けながら食べる。
「なるほど、そうして食べるのだな」
皇帝陛下もぼくに習って食べ始めた。なんだか奇妙な空間だ。




