第六十七話:奴隷面談(トーマス一家)
トーマス、エレン、サラ……あ、私のメインはハリードです。
粗方の改装が終わったので店を見て回る。一階が店舗スペースで飲食の為のテーブルもある。いや、狭いスペースではあるけど。
二階は奴隷の生活空間。その中の一室をぼくの転移用の扉を置いた部屋にしている。いつでも来れるように。いや、来ないけど。せっかくだからベッドも置いておく。布団はちゃんと羽毛布団を購入したから寝心地は良い。鍵を持ってる人しか扉を開けられない様になってるので勝手に入られる事も無い。中からは押せば簡単に開くけど。
それで家族の奴隷に関しては近くに一軒家を新しく調達した。木造平屋のこぢんまりとした家だが、3人が住むには十分だ。流石に幼子をしょっちゅう働かせてたらブラック企業だもんな。たまにお手伝いしてくれるだけでいいんだよ。
さて、給金なんだけど、アインたちは必要無い、衣食住だけ保証しとけばいいって。そりゃあまあ奴隷だからそういうの必要無いかもしれないけど、奴隷と言ったって買いたいものとかあるじゃない?
と、まあそんな事を言ったら「そんな奴隷は存在しない」って言われた。でもまあ給金はそれでもちゃんと出すよ。特に子供が居ると急にお金が必要になる事もあるから。
そう、子供と言えば教育ですよ。これでも教育にはうるさいんだよ。大学時代にアルバイトで塾講師やってたからね。もっとも、ぼくは人気なかったんだけど。いや、キラキラしてる同僚見てたらそれもそうかって諦めもついたよ。
んで、このくらいの子供ならぼくが教えるのもやぶさかでもないんだけど、アスカが「そんな羨ま、いえ、雑事にご主人様の手を煩わせる訳には」ってアスカが教える事になった。ついでに魔法も覚えられるようなら頼む。
さて、改めて個々の奴隷を見ていこう。まずは一家の大黒柱、唯一の男性のトーマス。緑一点? 黒一点? 女性の場合は紅一点なんだけど男性の場合はなんて言うんだろうね。紅一点の元ネタが「万緑叢中紅一点」だから緑なのかな? それとも「草」?
「ご主人様、この度は妻と娘だけでなく私まで買っていただきありがとうございました。粉骨砕身頑張ります」
「ああ、うん、まあ家族が離れ離れになるのは偲びないからね。お店の責任者として頑張ってください」
「ありがとうございます! ……それであのう、妻はご主人様の夜伽とかをしなければならないんでしょうか?」
「しなくていいから!」
「ま、まさか娘の方ですか?!」
「そんな趣味も無い! ええと、なるべくなら取次や報告はトーマスがしてくれると助かる」
三次元の女性に接するよりは男性に接してた方が幾分も気が楽だ。ほら、今もちゃんと喋れてる。そのままトーマスには下がってもらった。なんでも元は猟師で、山で散策をしていた貴族の息子を撃ち殺したらしい。それで奴隷落ち。普通は縛り首だということだけど、息子さんが山中で人には言えない事をしていたらしく、明るみに出るのを恐れたらしい。
それなら余計に口を塞げばと思ったんだけど、その領地が敵対している貴族のものだったらしく、追及されるとまずい事になると思われたそうだ。貴族の息子を殺して賠償金が払えず一家揃って奴隷落ちくらいならまだ誤魔化せると踏んだらしい。
その貴族、機会があれば調べてやってもいいかな。まあ、今はそれどころじゃないんだけど。とまあ後は少しばかり話して面接は終わり。さて、次の方。
「失礼します。夫の次は私どもと聞きまして」
「あ、うん、えっと、その、どうぞ」
トーマスの奥さん、エレンと娘のサラだ。
「この度は夫、娘と一緒に救っていただき、ありがとうございます」
「ありじゃしたー」
深深と頭を下げられた。いやまあそんな大したことはしてないよ? うん、あ、サラちゃんが居るからまだ何とかなるかなあ。エレンとは目線を合わせられない。
「仕事、難しく、ない、から、その、頑張れ」
「え? はい、頑張ります」
「おにーたん、ありがとー」
「ああ、うん、そうだね。頑張れ」
仕事に関してはあとからアインにでもしてもらおう。こんなの説明出来るわけないじゃん! いや、仕事は普通に調理と接客なんだけどね。あ、そうだ。これだけは説明しておかないと。
「無茶言う、やつ、通報、いい?」
「あ、はい、分かりました」
「サラ、は、勉強、も、頑張れ」
「はーい」
よし、伝える事はだいたい伝えた。これでいい? 良いよね? というかぼくの方がもう限界。という事でエレンとサラを下がらせる。そしてアインを呼んだ。
「あの二人に仕事の説明を頼む」
「夜伽の順番はどちらが先にしますか?」
「そのネタいつまで引っ張るつもりだ?」
「冗談です。では、失礼」
「おい、アイン」
「なんでしょうか」
「……残りの3人とも面談しないとダメか?」
「はい、ダメです」
「ダメかぁ〜」
ぼくの悲痛な叫びは誰にも届かない。いや、隣にアインが居ても届いてないよ!




