表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/400

第六十話:実験実験成功失敗

いや、失敗では無いんですけどね。あえて言うなら人選を失敗したと。

 アミタの「出来たで!」の声に敏感に反応したのはアヤさんとリンさんだった。赤くて角でも着いてるの?ってくらいの反応速度だったよ。


「そ、それで豊胸薬は?」

「ハリー、ハリー、ハリー!!」


 そんな事言われても使い魔も出さなければ身体を変化させたり、ちぎれた足を再構築出来るわけでもないかろね。


「まあまあ、落ち着きいや。どの道二人にも試してもらうさかい」


 アミタはニヤリと笑った。いやまあ確かに実験してくれる人は欲しかったんでちょうどいいんだけど。


「こいつはな、細胞分裂を促進して成長を助長するお薬や」

「さいぼう? ぶんれつ?」


 アヤさんもリンさんもキョトンとしてる。まあ前世のぼくらの世界の生物知識なんてあるわけないもんね。


「まあ、要するに胸だけ成長するっちゅう事や」

「それは……なかなか」


 ゴクリ、と喉をならす二人。


「そんでな、こっちが別バージョン。これは体内の脂肪を塗った所に移動させる薬や」

「それはどうなの?」

「お腹やら二の腕やら太ももやらに肉がタプタプについとったらこっちの方がええかもな」


 ひっと息を呑むのがわかった。いやまあええんやない?


「そんで二人にそれぞれ一本ずつ試してもらいたいんやけど」

「あ、私が成長促進?の方で」

「あ、ちょっと、私の方がそっちよ!」

「いやいや、私冒険者ですから余分な脂肪とかないですし」

「そ、それを言ったら私だって軍人ですから余分な脂肪なんて」


 アヤさんとリンさんが醜い争いを始めた。いや、どっちがどっちでもいいと思うんですよね。客観的に見てどっちが脂肪多いかと言えば……


「あ、では家主権限で決めますね。リンさんが成長促進でアヤさんが余分な脂肪で」

「そんな、横暴な!?」

「ほら、家主さんは私の方がスマートだって」


 いや、単に成長度合いでリンさんの方が「幼い」かなと思っただけで。あと、アヤさんの方がここで食べる頻度が高いから贅肉ついてるんじゃないかなって。


「ほな、リンさんからいくで。その前に旦那はん」

「なんだ?」

「さすがに女性の胸を見たがるのはどうかと思うんよ、うちは」


 おっ? そ、それは確かに。生身でないとはいえ女性の裸を見るのは失礼だな。責任取って結婚しろって……ないか。いや、アヤさんはそれで迫って来そうではあるな。


「旦那はんが見たい言うなら後でうちらがなんぼでも見せたるさかい」

「部屋の外に出てるわ」


 アミタの裸なんて普通にパペットマスターで見れるんだよなあ。メンテナンスの時しか見ないけど。


 それから部屋の中には三人しか居なくなった。ぼくは部屋の前で分身体を待機させたままにしてポテチを摘む。


 しばらく待ってると悲鳴のような叫びが聞こえた。これはリンさんかな? こっそりカメラで覗いても良いんだけど、さすがに気がひけたので部屋の前の分身体を起動する。


「どうしたんですか?」

「あ、旦那はん、ちょい入ってもらってええ?」


 アミタが入れと言うので中に入る。そこには腰の辺りがスマートにくびれて胸がそこそこ大きくなってるアヤさんの姿と、胸が異常なまでに膨らんで立てなくなってるリンさんの姿があった。


「えーと、これは?」

「ほら、見てください。私のこのスタイルを。いやー、こんなに素敵な薬とは思いませんでしたよ!」


 満面の笑みを浮かべるアヤさん。一方のリンさんは涙目だ。


「最初は少し膨らんで、そんでだんだん大きくなって、アヤさんよりも大きくなって優越感に浸ってたんだけど……止まらなくてそのまま大きくなって」


 それでこの惨状ということか。ここまで大きいとおっぱいとかボインとか以前に脂肪の塊だよね。セクシーさとか欠けらも無い。いや、確かにそういう同人誌とかエロ本とか読んだことはあるけど、ぼくには受け入れられなかったんだよ。


「な、何とかして貰えませんか?」

「ええと……そうだ、こないだの痩身薬を使おう! アミタ!」

「あ、はい、持ってきます」

「早く、お願い、こんな姿、トムに見られたくない……」


 か細く涙声になりながらリンさんは嘆く。そこに様子を見に来たエルさんが入ってきた。


「リンちゃん、何があっ……」

「エルぅ……」

「なんだ、何の騒ぎだったんだ?!」


 エルさんに続いて入ってこようとするトムさんとリックさんを締め出した。


「男どもは入るな!」


 普段はおっとりな感じのエルさんの荒らげた声が掛けられ、ドアの外の二人はビクリと身体を揺らした。


「エル、私、私……」

「リンちゃん……あの、これ、何とかならないんですか?」

「旦那はん、持ってきたで」


 アミタが痩身薬を持ってきてリンさんに飲ませた。白い煙というか水蒸気?が出てみるみるうちにリンさんの身体が元に戻った。


「はあ、良かったわ。でも汗が凄いことになっとるから風呂で汗流してな」


 アミタに言われてバスタオルに包んでエルさんがリンさんを風呂場に連れて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ