第六話:パペットで金策しよう
チュートリアル大事。
周りの敵を倒すのがダメ。でも強くなるには敵を倒さなくちゃいけない。でも周りの敵は倒すには……
「詰んでね?」
「私はツンデレではありませんよ?」
「いや、求めてないが?」
「金髪ツインテツンデレヒロインが良かったのでは?」
「お前は金髪でもツインテールでもないからなあ」
「人を外見で判断するのはどうかと」
「そうじゃなくてだな、どうやってパペットを強くするんだよ?」
「ほら、課金すれば」
「資金は?」
「ヤマイノシシの残金があるじゃないですか」
つまりヤマイノシシを倒したお金でパペットを強くしろというのか。いや、それってヤマイノシシが襲ってこなかったら本当に詰んでたんじゃね?
「いや、ほら、なんかチュートリアル的なものないの?」
「その為のガチャだったんですが……最低保証でしたしねえ」
「引いたのはお前だからな」
「ちっちゃいですよ。そんなの気にするなんて!」
「死活問題だからな。そりゃ細かくもなるわ」
「必死ですね。一応手はありますよ」
「なんだ?」
「ガチャを課金するんですよ」
「一回というか十連するのにいくらだ?」
「十連一回で百万ですね」
「無理じゃねえか!」
いや、厳密には百万まるまる残ってはいる。でもこれを使ってしまっては今後の食料事情が苦しくなる。引きこもるのにも金は要るのだ。
「あとは……外に出て自分で魔物を狩るとか」
「いや、無理だし。そもそもぼくにはなんの能力もない」
「ですよね。なんですか引きこもりって能力……」
「そう、引きこもりって能力……そうだよ、この能力だよ」
その時、ぼくに電流が走った。そうぼくは家から出なくても全てを賄えるように能力を設定したのだ。それを使う時が来た。
「金づるを引っ張ってくる能力、まねきねこだ!」
「カラオケボックスですか?」
「本来の意味だよ! 人は招いて要らんけど金だけ招きたい」
「割と最低な事言ってますよね?」
「うるせえ、やっぱり世の中金なんだよ」
しかし、よく考えてみると金だけ招くというのはどういう事なのだろうか? 商売とかなら客が沢山来るなんだろうけど、商売してる訳でもないし、そもそも商品がない。なんかクラフトで作るとかの能力もない。
とはいえ、使ってみなければ分かるまい。招き猫セットオン! ええと右前脚を上げてるやつが金運を招くんだったな。これで良し。ん? なんか外に反応があるってぼくの愛機からメッセージが。
ええと、採掘? ここ掘れわんわん? えーと、それはどういう……お宝が眠ってる? いや、肉体労働はちょっと……パペットを使えばいい? いや、ドレス汚れるし掘る道具も……あ、それぐらいなら確かに。とりあえずパペットにやらせてみよう。
「アリス」
「ゴメイレイヲドウゾ」
「外に出て穴を掘れ。掘れるだけでいい」
「カシコマリマシタ」
そしてパペットは外に出て穴を掘り始めた。何が出てくるのかは分からんがここ掘れわんわんとなれば掘ってみるのが正解なんだろう。
「でもいいんですか?」
「? 何がだ?」
「ここの動物に襲われたら多分破壊されちゃいますよ?」
「そうだった!」
そもそも外で戦えないからパワーアップする為の資金の為に金策として藁をもすがる思いで穴を掘らせているんだよなあ。
「あ、ソナーに感あり……これは、クマですかね?」
「デカいのか?」
「大きさは二メートルくらいのものですよ。ただまあ……」
「ただ?」
「団体さんでお越しです。五体くらい居ますよ?」
「パペット、家に戻れ!」
慌ててパペットを回収する。間一髪で家の中に入れることが出来た。そしてパペットの入ったドアをクマが襲い始める。
「こいつら……」
「困りましたね。ここまで近いと戦車砲が撃てません」
「家には大丈夫なんだろうな?」
「そこは問題ありません。ちゃんと引きこもり結界がありますので」
「諦めて去っていくまで待てばいいか」
持久戦には慣れてる。外に出そうとしてきたやつも引きこもっていたらます。いつの間にか来なくなってたからなあ。
「それまで食料が尽きなければの話ですが」
「そんなに居座るつもりなの? いや、それならいっその事今のうちに迎撃した方が……」
「機銃掃射しましょう!」
フォルテに教わりながら機銃掃射の準備。扉はまだガンガン叩かれている。家の敷地内ならどこでも機銃を設置して撃てるらしい。なんという四次元殺法。と、ともかく一掃だ! クマを囲む様に機銃を設置して引き金を引いた。
「撃て!」
ドドドドドと音がして弾丸の雨がクマたちに降り注いだ。クマたちは動けなくなって蠢いている。
「ほら、今ですよ。パペットでトドメをさせばレベルアップするし、金も手に入りますよ」
「なるほど、弱らせてからトドメをささせればよかったのか」
そしてアリスを外に出して剣でトドメをさした。五体倒した辺りでアリスの体が光に包まれた。