第五十九話:入浴に行きたいか?
ちなみにワインの劣化はブショネです。原因はコルク臭だそうで。
快気祝いの料理はハンバーグ、唐揚げ、焼き鳥と肉料理をメインに、サラダなどを様々なドレッシングを用意して提供。うちの畑で採れた野菜だから美味しいぞ。
その他にもパスタやチャーハンなど主食となる様なものも用意。お好み焼きは当然具を順番に重ねる正統派。うどんよりそばがいい。
アヤさんはもう来る頻度がすごくて箸まで使える様になった。いや、適応力高すぎだろ。嵐の運び手の皆さんは来てもご飯食べない事があるもんな。必ず食べようとするアヤさんがすごいんだけど。
「この焼き鳥、王国だけなんてズルいですよ。帝国でも売ってくれません?」
「アヤさんは来て食べてるでしょうが」
「いやー、陛下がまた来ちゃうかもしれないので」
どうやらアヤさんが食べたものの自慢を皇帝陛下にしているらしい。余計な事を。
そういえばそろそろ帝国との行き来する道路か何かを作った方が良いのか? いや、基本的に不可侵だもんな。だいたい毎回の様に来てるアヤさんが変なんだよ!
「そんな訳なんで陛下がお越しになったらよろしくお願いしますね」
「……焼き鳥持って帰ってもいいので来ないようにしてください」
持って帰った時には冷えてるかもしれないけど、そこは火で炙り直すなりなんなりしてください。
「それで旦那はん、豊胸薬の話なんやけど……」
ガタガタっとアヤさんとリンさんが食い付いてきた。エルさんはそんな心配はしてないようで特に動かず料理を楽しんでる。
「詳しく」
「アヤはん、なんや目が血走っとるで?」
「いいから、詳しく」
「ええとな、さるやんごとないところからそういう依頼を受けて思案しとるだけや。まだ出来ても居らん」
「そえですか。出来たら教えてください」
まだ出来てないと聞いて落ち着いたらしい。アヤさんは食事に戻った。リンさんの方は自分の膨らみとアミタの方を交互に見ている。
やがて料理を食べ始めたらそんな事を気にしなくなった。ここでアルコールを投入。ぼくもパペットたちも飲まないけど、客は飲むからなあ。安物のワインを出してやる。肉料理多めなので赤ワインだ。
「すげえ、このワイン酸っぱくないぞ!?」
「ええっ? それって高いワインって事?」
いや、それはワインと言うよりワインビネガ
「ああ、それならいいワインね」
それはブチョーだかブスだか分からんがそんな感じの酸化現象だろう。この世界でワインを飲む気がしなくなってきた。いや、確かに王侯貴族達は美味いワインを飲めるのかもしれないけど、ぼくのような庶民じゃ手が届かないだろうね。そもそもぼくはアルコール飲まないんだけど。
へべれけになった一同が動けなくなったので仕方ないから泊める羽目に。家の中にあまり入れたくないけど、一階の大部屋が空いてるからそこに布団を出しておこう。ベッドも? はいはい、分かりました。
男性との部屋を分けた方が良いのかと思ったけど、嵐の運び手の皆さんは野宿で慣れてるらしい。まああれだ。それぞれお相手決まってるみたいだから家の中でサカらなければ大丈夫でしょ。
アヤさん? さすがにそこに恋人が居るのに敢えて貧乳で色気もないアヤさんに手は出さないでしょ。それに朝まで目が覚める元気があるかも疑問。
えっ? ぼくが襲わないのかって? いやいやいやいや、だから三次元は怖いんだってば!
全員を部屋に押し込み、ぼくはシャワーを浴びる。湯船にのんびり浸かるのも好きだけど他の人たちが居るからそれの監視というか世話にパペットの総力を注ぐ必要がある。
「主様、お背中流しに来ました」
「アリス、必要ないから」
「いいえ! 是非とも流させて下さい! この身体の恩を返したいのです」
……まあパペットだし、なんというか作る途中で裸は見てたからどうせ見慣れてるしな。そう思って特別に流す事を許した。
「失礼します」
入ってきたアリスは胸元にタオルを当てて、ほんのりと頬が上気し、透き通るように白い肌をしていた。白い肌なのは頑張って素材の色を調節してくれたからなんだが。
「お背中、お流しします」
「あ? ああ、頼む」
背中に柔らかいものの感触があった。これはおっぱいでは無い。なぜならアリスにはおっぱいが無いからだ。ちなみに正解はスポンジタオルである。
「もうちょい強くてもいいぞ?」
「いえ、あまり強くすると背中の皮どころか肉まで削げ落ちてしまう可能性がありますので」
お色気じゃなくてバイオレンスものだった!?
「主様はあの女性たちの中で誰がお好みですか?」
「いや、誰も好みでもなんでもないが?」
「そうですか。ふふふ」
嬉しそうに笑ってるアリス。なんだか知らんがとりあえずヨシ! ではなく、好感度MAXなのは最初の一体だからって事なんだろうね。
それから一晩経って、翌日、昼過ぎ頃に二日酔いになった嵐の運び手のメンバーが起きてきた頃に、アミタの「出来たで!」と言う叫びが聞こえたのであった。




