第五十四話:謁見、越権、越権行為許しません!
男として譲れないことはある!
「我が妻の身体をスッキリさせてくれたのはお主らか?」
「はい、左様でございます」
国王の下問に答えるのはアイン。というかアインくらいしかこういうことできる人材居ないんだよ。
「そこの男、貴様が主人であろう。私を前にして答えぬのは失礼にあたるとは思わないのか?」
「も、申し訳ありません」
ひぃー、こっちに来た! やめてよやめてよ。圧が強いんだから。たとえ画面越しでも圧を感じるんだよ。いやほら、帝国の皇帝の時はぼくのホームポジションだったからなんとでもなったけど、王城、ロイヤルファミリー、立ち並ぶ近衛兵、どれをとってもアウェイだよ!
「そなた、名前は?」
「マモル、と申します」
「ならばマモルよ。そこの娘は帝国の者ではないのか?」
「ひぃー、バレてる、バレてますよ、マモルさん!?」
バレてなくても今ので完全にバレたよなあ。カマかけてるのかなってすっとぼけようとしたし、なんなら「ぼくも騙されてました!」とかやるつもりだったのに全部ぶち壊された。
「如何にも。彼女は帝国の人間です。我々の同道者ですね」
「ちょっとマモルさん!? 私の事は仲間と思ってなかったんですか?」
「いや、別にぼく帝国臣民とかじゃないし」
あの森は帝国の領土でも王国の領土でも、その他の国の領土でもないので国の戸籍はないも同然。いや、そもそも戸籍とかあるのかすら疑問だけど。
「ほほう? では貴様らは王国民か?」
「いえ、商売の関係で王国に来ましたが王国民ではありません」
「ならば間者として始末されても文句は言えんな?」
いやいや、ちょっと待って欲しい。なんでぼくらが処刑されないといけないわけ? 疑わしきは罰せずが基本ルールじゃないの? 禍根を断つ為にカコンって首を落とすのはどうかと思うよ?
「あなた、いい加減にしてください。私の恩人なのですよ」
「しかし……」
「なんですか、あなた。私の身体が昔みたいに綺麗になったのがそんなに気に食わないんですか?」
「そうでは無いんだがな」
あの、痴話喧嘩なら他所でやってくれません?って言いたいんだけど、どうやらこの痴話喧嘩にぼくらの命運が掛かって居そうなんだよなあ。
「じゃあなんだと言うんですか!」
「だってその、胸がな」
「胸?」
「昔はムチムチボイーンな感じだったのにすっかりスマートになってしもうたでは無いか!」
うわあ、この国王おっぱい星人だ! いや、痩身薬って結局余分な脂肪を燃焼させるんだからおっぱいなんて脂肪の塊は当然燃焼するんだよね。
「命には代えられません」
「しかし……」
「父上、気持ちはわかります。私とてラケシスのボインがペターンになってしまったら悲嘆に昏れると思います」
「王子はそのように思っておられたのですね。最低です」
「も、もちろん胸だけの話では無い!」
慌てて口を滑らせた王子が弁解するも、ラケシス様の怒りは治まらない様子。
「王妃様、この際国王陛下と王子様にはご退場いただきましょう」
「そうですね。恩人の皆様に失礼に当たります」
「そ、そんな、わしらはただ……」
「ただも何もありません。下がってください」
「母上、ラケシス、その……」
「今は顔も見たくないですわ、王子?」
すごすごと去っていく二人。なんか凄まじいものを見せられた気がする。
「さて、マモル様」
「ひゃい! えっ? 「様」?」
「そうです。その、ご相談したい事があるのですが」
王妃様のお話はこうだった。痩身薬があるならお肌を綺麗にしたりする薬もあるのではないか、と。もしあるのならそれをいただきたい、と。
そりゃあネットスーパー使えばそれなりのは手に入るけど。
「あなたの従者の女性は皆さん肌が綺麗ですもの。きっとそうに違いないわ」
あー、まあ、それはパペットだからなんだけど、ここでそんな事言っても仕方ないしな。
「分かりました。では少量ではありますが御提供させていただきます」
ぼくはネットスーパーで商品をポチろうとして固まった。えっ、これ化粧水だけで二万以上するやつとかあるよ!? ううん、ここはアミタに作ってもらうしか無いかな。
「えー、まあ作れん事はないですけど、女性の方にパッチテストをお願いしたいとこやなあ」
「アミタじゃダメなのか?」
「旦那はん、忘れとるかもしれんけど、うち、パペットやで?」
そうだった。こいつもパペットだ。という事は嵐の運び手の皆さんとアヤさんかなあ。実験が終わったら直ぐだとの事で一週間もあれば出来るとの事。
「用意もあるので来週また改めて伺わせていただきます」
二人は手を取り合って喜んでいた。それから王妃様のリクエストで胸肉の焼き鳥を焼いたやつを出してあげた。これも好評でした。




