第五十三話:王子様の登場
「私の身体が全盛期の頃の様に!」
「良かったですねハーミルトン伯爵」
「おお、公爵令嬢、礼を言いますぞ。罪を減じてくださるだけでなく、この様な。もしかして、私の身体が目当てですかな?」
言うに事欠いてなんて事を。ほら、ラケシス様の顔がひきつっておいでですよ。
「ハーミルトン伯爵、約束通り罪一等を減じましょう。国家反逆罪として族滅の予定でしたが一等を減じてあなた一人の罪ということにしましょう」
「国家反逆罪ですと!?」
ラケシス様はその笑みを崩さないで続ける。目は笑ってないんだよなあ。
「ええ、次期国王の婚約者、つまり、将来の王妃を妾として扱うなどと国家に対する罪と言っても過言ではありませんよね?」
いやいや、さすがに過言だと思いますよ。
「ひぃ……命ばかりは、命ばかりはお助けを!」
「連れて行きなさい」
そして連行されていくハーミルトン伯爵。ラケシス様は「適当に脅して余罪を追及して。それで最終的には爵位の返上辺りで落とせばいいわ」とか指示を出してた。女帝かな?
「お待たせしました。それでは王妃様の寝室に向かいましょう。あの、申し訳ないのですが、ご主人を王妃様の寝室にお通しする訳にもいきませんのでこちらでお待ちください」
アインが「こいつ殺りますか?」みたいなジェスチャーをこっそりしてきたからやめるように指示はした。まあぼくは待ってるだけでいいよ。
アインとアスカが薬を持ってラケシス様と扉の向こうに消えた。ぼくは待ってる間に部屋の中を眺める。応接室なんだろう。王妃様に面会予定がある人が待たされる部屋。しかしなんもないな。まあぼくは家に居るからなんかゲームでもして待ってようかな。
とか思ってたらガチャっと扉が開いて一人のイケメンが入って来た。ん? 誰かと約束してたのかな?
「すまないがあなたはどなたでしょうか?」
「いえ、こちらのセリフなんですが。あなたこそどなたですか?」
「私の顔を知らない? どんな辺境に住んでいるんですか?」
どうやら顔を知らないとおかしいレベルの人らしい。
「あー、ぼくは商人でして」
「何を売り付けに来た? 母上の病気につけ込んで効きもしない薬をまた売り付けるのか?」
えっ、「母上」!? って事はもしかしてこの人が王子様? 確かに造形が神に贔屓されてるようなイケメンですけども。
「殿下、来られていたんですか?」
扉が開いてラケシス様が顔を見せた。その後ろにアインもアスカも居る。そして誰かもう一人いる感じ。あれが王妃様かな?
「ラケシス、私の事はオズワルドで構わないよ」
「いいえ、婚姻に至るまではちゃんと上下の関係を分けるべきです」
あーあ、なんかオズワルド王子がしょぼんとしちゃったよ。
「そんな事より殿下はこちらに何の御用で?」
「いや、その、ラケシスがこっちに遊びに来たというので」
「全く。そんなことをしているお暇があるのですか? それならば一刻も早く良い国王になれますように勉強を」
あ、王子様涙目。というか王子の方が年上なんだと思うんだよな?
「こっ、こいつらはいいのか?!」
「殿下、その方々は私が王妃様の為にお招きしたのです」
「わざわざラケシスが!?」
私が愛想笑いを浮かべると王子殿下は私をきっと睨みつけた。いやこれ、生身の身体だったら漏らしてたよ!
「まあまあ殿下も見てください」
そう言ってラケシス様が道を空けるとすらっとした身体の美魔女と言ってしまいそうな女性がいた。
「随分と気分がいいわ。何年ぶりかしら。あっ、そこに居るのはオズワルドかしら?」
「そ、その声は母上!?」
オズワルド王子がびっくりしてました。そりゃそうだろ。ぼくだってびっくりしたんだもん。
「そうよ、久しぶりに踊り出したくなるくらいにはしゃいでいるわ」
その言葉通りに踊り出す王妃様。確かに長身気味の体格にすらっと伸びた手足が迫力を醸し出している。なお、胸部装甲は軽量化してる模様。
「どうしてその様な身体に……いえ、身体は体調は大丈夫なのですか?」
「ええ、すこぶる調子がいいわ。余計なものがこそげ落ちたみたい」
このまま家族団欒しておくのがよかろう。よし、アイン、アスカ、ぼくたちは帰るよ。
「お待ちください!」
ラケシス様が帰ろうとしたぼくらを見つけて声を掛けてきた。バレないと思ったんだけど。
「このままお帰り頂く訳にはいきません、ぜひ、国王陛下に謁見を願います」
ラケシス様のたっての願いで今日は王城に泊まることになった。ということで、ぼくは部屋でカップラーメン。ほら、スーパーカップにレトルトカレー入れるやつ。アインには悪いんだけどたまにはこういうジャンクフードも栄養なんだよ。
翌日、改めて国王陛下の前に朝から引っ張り出された。壇上の席には国王陛下、王妃様、オズワルド王子が鎮座していた。




