第四十五話:ビニュー特戦隊
隊員1名
焼き鳥となった訳だが、これには理由がある。肉の出処を探られなくて済むという事だ。トレーサビリティとか言うつもりもないが、何の肉だと言われた時にこの辺に生息してる鳥の肉だとなれば何の問題もないだろう。
という事でアスカに鳥を撃ち落としてもらって、アインに試作させてみた。串打ち三年焼き一生と言われるが、パペットのアインだとグラムのコンマ以下で重さが分かるらしいし、精密作業もお手の物。繊維とか火の通りがとかも「見える」らしい。
そんな感じで試作してもらった焼き鳥。鳥の名前はよく分からんけどこの辺で獲れたやつだから大丈夫だろう。ぼくが最初に食べたんだけど美味しかった。普通他の人が味見してからじゃない?って思ったけど
「絶対美味しいのでご主人様に食べていただきたくて」
などとアインが言うものだから。なお、ぼくが食べ終わった後に嵐の運び手のみんなやアヤさんにも食べてもらった。リックは塩が好みで、トム、エル、リンはタレが好みな様だ。多数決だとタレだけど、やはり両方準備したい。
屋台はアミタが七輪を内蔵したやつを作ってくれた。これをひいて街まで移動するのがちょっとなあと思ったら街の近くまで車運転して引っ張るんだって。
誰が運転……ぼく!? む、無理無理無理無理無理無理! いや、運転は営業の時にもそれなりに運転してたし、まだ忘れてないと思うけど、それだと外に出るって事だよね? いや、残念。ぼくはここから出たら死んでしまうんだ。
「そんな設定はありませんが仕方ないです。フォルテ様何とかなりませんか?」
「うーん、一応この部屋から遠隔で操作できるけど?」
レースゲームみたいなやつですね。あ、いや、違う。ドライブシュミレーターだわ。よし、じゃあこれでアインに売り子やってもらってアスカが護衛かな。アミタは手伝い&メンテ要員で。ぼくは分身体で行くよ。
なお、分身体でもストレージは使えるんだよ。それもぼくと共有のやつがね。
「ご主人様はおひとりで大丈夫ですか?」
「おいおい、プロの自宅警備員のぼくを舐めてもらっちゃあ困るね。留守番くらいお茶の子前だよ」
そんな感じで不安そうなアインを送り出して、ぼくはドライブシュミレーターを始めた。うん、なんか森ばかりだな。二回も軍隊が通ったからか道が出来ている。三回だっけ? ともかくこれに沿って行けば王都に辿り着くという寸法だ。
「入場の目的は?」
「サイトシーイング」
「なんだそりゃ」
「ああ、いえ、ちょっと食事の露店を出そうと思いまして」
「なんだ商売か。商業ギルドに話は通しておけよ」
親切な門番に商業ギルドの場所を聞いてそのまま向かう。アインが代表の様に手続きを始めた。
「ご主人様、これでよろしいですか?」
「あ、うん、そうだね」
ぼくの分身体にアインが確認を求める。いや、それくらいは別に確認しなくても……おや? 確認でぼくに見せた途端、ギルドの人の顔つきが和らいだぞ。
後で聞いてみたら、女性が代表だとなめられるんだと。そりゃあそうだよな。この時代にフェミニズムなんてある訳ねえ。だから「面倒くさい事は部下にやらせて実験を握ってるのがぼく(の分身体)」ってな体制にしたんだと。
そんな感じで焼き鳥である。とはいえ新参の上に初見だと見たこともないものだ。おまけにライバルの串肉はデカい。
ここは焼き鳥ならではの作戦、いや、ならではではないか。タレの焼き鳥を焼いて香ばしい匂いをガンガン嗅がせる。鼻は口ほどにものを言う作戦だ!
「いらっしゃいませ」
「こりゃあなんだい?」
「はい、ロックバードの肉を使った焼き鳥でございます」
「ロ、ロロロロ」
ロシアンルーレット?
「ロゥクバードだって!? 誰が狩ったんだい?」
「はい、この子が。こう見えて魔術士なので」
「ぶい」
アスカはVサインの指の間にスパークを生じさせた。魔法の実力を見せた形だがすぐには信じて貰えなかった模様。
「いやだってそんな小さな子が……おっぱいも大きいし……」
「お客様? 胸のサイズは関係ないと存じますが?」
あ、アインのこめかみに青スジが浮いてる。ぼくはスレンダーもいいと思うよ? 長身、スレンダー、感情希薄。最高だと思うんだよ。
「……ご主人様がそう思うなら。ですがアスカとアミタと大きめのが続きましたよね?」
「いやいや、ほら、美乳枠はアイン一人で十分かなって」
「微乳……ええ、辛うじて抉れてはいませんけど」
「微」じゃなくて「美」だからね!?
さて、気を取り直して売ってもらおう。最初はお試しで食べてもらってもいいよ。ほら、試食とか大事だし。
「お客様、良ければ味見を。美味くても不味くてもお金はいただきません」
「おっ、タダかい? それなら食ってやろうじゃないか。ちょうど腹も減ってたしなあ」
そして男が焼き鳥をパクリと口に入れた。




