第四十四話:おでんにしますか、焼き鳥にしますか?
おでんの美味しい季節です。
風呂上がりで放心状態のトムとリックにフルーツ牛乳を渡す。作法も教えた。腰に手を当てて反り返る様に飲むべし!
「ぷはぁ、なんだこりゃ!すげぇ美味いぞ」
「オレもここの家の子になりたい」
あ、そういや女性陣に化粧水出してなかったな。風呂上がりには化粧水をつけるのだと何かで見た気がするからな。ぼくは男だし、パペットたちは必要ないから使ってないんだけど。
「あ、エルさん、リンさん、これ、使われますか?」
「なんですか、これは?」
「ええと、化粧水使いません?」
「化粧水?」
どうやらスキンケアとかそういう意識は低いみたい。
「いえ、使ってないなら別に良いんです」
ぼくがそれを仕舞おうとするとその手をリンさんに掴まれた。いやあの、これ、分身体なのにギリギリって感覚が襲って来るんですが!?
「使い方、教えて」
「はい」
そして二人に使い方をレクチャー。本体であるぼくがインターネットの美容系サイト見ながら喋ってるので間違いは少ないはず。
「うそ、何これ、お肌がツルツル」
「魔法なんです? 魔法なんですか!?」
恍惚とした表情でお肌を触る二人。まあ確かに普段よりも三割増くらいで綺麗なんじゃないでしょうか? トムとリックも呆然としてるし。
「さて、皆様。そろそろ食事にしましょう」
アインが一声掛けるとみんなが食堂に向かう。まあお腹空いてるよね。空いてなくても食べるんだろうなあとは思う。
「今日の食事はすき焼きです」
「スキヤキ? なんだそりゃ?」
ダークウォーリアーに勝ったお祝いの日だからお祭りって事ですき焼きをリクエストした。まあ材料切るだけだし、そこまで手間も掛からないからね。鍋に牛脂をひいて肉を焼いてその上から野菜をドサッと入れるんですよ。砂糖と醤油も遠慮なく入れる。
「なんか甘い匂いがするなあ」
「たまらん」
やはりすき焼きには白米がつきものだと思うのでご飯をよそってやる。箸とか使えないからフォークでどうぞ。生たまごは受け付けない人がいると思うのでお好きに。あ、ちゃんとネットスーパーで買った殺菌済みのたまごだから安全ですよ?
「では、食べさせてもらおう。んんっ、これは……なんという味わい!」
「なんだよこれ、うめーじゃねえか!」
「美味しい……最高」
「手が止まりません。ああ、なんと罪深い」
四人とも一心不乱に食べている。ぼくの分は後で構わないよ。そこまでお腹空いてないし。いや、コーラの飲みすぎでもポテチの食べすぎでもないですよ?
あらかたすき焼きを食べきって、〆のうどんまで。うどんは箸じゃないから食べづらそうにしてたけど、フォークでパスタみたいに食べてた。
「もう食えん」
「お腹が幸せ」
ふむ、この調子なら店を出しても繁盛しそうだな。でもすき焼き屋ってのはちょっとハードル高いかも。ほら、生たまごがあるから。ちなみに嵐の運び手の皆さんは誰も生たまごを使おうとはしなかった。美味しいのに。
「ご主人様、お店で出すならおでんか焼き鳥かラーメンではないでしょうか?」
あー、店舗借りてやると面倒だよなあ。なら屋台を作って屋台で営業した方が良いのか。
「リックさん、ちょっとお聞きしたいんですが」
「なんでしょうアインさん」
「最寄りの街で屋台を出すのは可能ですか?」
「屋台が何か分かりませんが、露店でしたら商業ギルドに許可を貰えば直ぐにでも出来ますよ。そこまで厳しい審査もないですし」
どうやら店を構えるよりも屋台の方が簡単そうだ。すき焼きだと椅子とか用意しないといけないもんなあ。材料は森で狩った獲物と畑で採れた野菜で何とかなるんだけど。
「アミタ、聞こえてる?」
「あ、旦那はん。どないしたん?」
「いや、街に行って商売するつもりだから屋台を作って欲しくてね」
「なんや、屋台かいな。んで、どんな屋台やるん?」
「そうだな、おでんか焼き鳥かラーメンだろうなあ」
「定番やなあ。うちとしては焼そばとかお好み焼きとかたこ焼きとかでもええと思うけど」
関西系を意識して作ったからか遺伝子に粉モンが刻まれているんだろうか。まあそれらもいずれやるかもしれん。粉モンやるには小麦が大量に必要だからな!
「そっちの鉄板もいずれね。とりあえず、寒いからおでんからやりますか」
「ご主人様石焼き芋とかダメですか?」
アスカは石焼き芋がお好みらしい。あれはね、さつまいもを植えなきゃだからなあ。うん、まあ育ててもいいんだけど。しかし、念話に割り込んでくるぐらい気になったのか?
とにかく一番最初はおでんに決めました。まあ季節限定だろうけど。夏場におでんはちょっとなあ。と、決まればおでんの具である。牛スジ、大根、こんにゃく、たまご、しらたき……あ、これは見覚えのない食べ物が多くて説明したり、食べるまで時間かかるかも。……よし、やっぱり焼き鳥にしよう!




