第三百九十七話:絵面的には割とスプラッタ?
お食事中の人、すいません。
アリスのストップで二人の争いは終わりを告げた。で、ここでやり合うのもどうかということで、ディーも冒険者ギルドで試験を受けるらしい。
「そういう訳なのでよろしくお願いします」
「何がどういう訳か分からんが、未登録の子どもが銀プレートの試験を受ける事は出来ん!」
「特例措置とかあるんでしょう?」
「あるにはあるが、それだと銀プレートの人間と戦って強さを証明しないといけない」
どうやら戦って勝ったら銀プレートなんだそうな。なんだ簡単じゃないか。
「さすがに、そんな子どもに受けさせるのはやめて欲しいが」
「まあまあ、グガンツさん、ぼくが太鼓判を押しますから」
「いや、お前の太鼓判を押されてもなあ」
「あ、私も! 主様が太鼓判押すなら私も押す!」
「おお、アリス嬢が太鼓判押すなら安心だな。よぉし、銀プレートの冒険者を用意しろ!」
ギルドマスターのグガンツさんが話のわかる人で良かった。でもぼくじゃなくてアリスなんですね。仕方ないけど。
「主様、ところで太鼓判ってなーに?」
うん、黙っておこう。それを人前で言ってはいけない。いいね!
「まずは今日予定していた晶龍の銀プレート昇格だな。これについては試験をするまでもなく合格だ」
えっ? 無試験とかそんな事していいの?
「今、ここに居る銀プレートはガンズたちとのいざこざを見ていたものたちばかりでね、残念ながら戦意喪失してしまい不戦勝となったわけだ」
どうやらあのギルド内で暴れた一件はかなり有名らしい。そこ、晶龍、ドヤ顔するな。
「それで早速ではありますがそこの子どもと彼を戦わせてはどうだろうか」
「賛成!」
「おれだってさんせいだ!」
晶龍もディーもやる気らしい。こりゃ仕方ない。
「アリス」
「私も出るの? 頑張るね!」
「帰ってアンヌと交代してくれ。念の為な」
「そ、そんなぁ」
しょぼんとしながらアンヌが到着。アンヌには二人のバイタルをチェックしてもらって危なそうなら止めてもらう事にした。
「やめるならいまのうちだぜ?」
「それはこっちのセリフだ! 下水メンバーの中ではオレが最強なんだからな!」
てっきりキリエかと思っていた。キリエはふいっと横を向いた。
「バカには付き合っていられない。どっちが強いかとかあの時は関係なかった。生き残るのが全てだったからな」
まあキリエの言い分は分かる。だからまあこの勝負は晶龍が勝つだろうと思う。負けて得るものだってあると思うよ。
「それでは、始め!」
ギルド職員の号令で晶龍が真っ直ぐディーに向かっていく。ディーは懐から何かを出した。あれは豆?
「あらよっ!」
見る間に豆が膨張して、デカいクッションみたいになった。晶龍は避けきれずにそのまま突っ込んで弾き返される。
「てめえ、ひきょうだぞ!」
「実戦では何でも使うなんて当たり前だろ」
「ぐぬぬぬ、まあいいや。ぜんぶぶちぬけばすむんだし」
気を取り直して、再突進。学習しないなって思ったら、今度は膨らんだ豆に拳を叩き込む。
「りゅうじん!」
晶龍が叫ぶと腕のまわりに鱗のようなトゲが出て来た。ああ、神じゃなくて刃なのね。
パァン!
「爆発した!? うわあああ!」
「もらったぜ!」
「ぐっ、ま、まだだ!」
今度は破裂した衝撃で吹っ飛んでるところに後ろに膨らませる。トランポリンの様に弾け返った。
「くらえ、膨張ハンマー!」
「むかえうつぜ、りゅうげき!」
晶龍のパンチとディーのパンチがかち合った。そして二人とも反対側の壁に吹っ飛んでぶつかった。
「ぐうう、こんなことでりゅうおうのむすこがまけるかよ!」
「下水のワニに比べたらこんなやつ!」
共に立ち上がろうとする。もういいんじゃないかな? アイン、そろそろ止めた方が良くない?
「なんでですか? まだ流血もしてないではありませんか。もっともっと血が増えたら、うふふ」
もしかしてご注文は流血沙汰ですか? 血を見ないと治まらないってこういうことか? いや、違うような気がする。
「どらごんろあー!」
「くそ、はじけろ!」
晶龍が口から放ったのは音速の衝撃。まともにディーにヒットした。するとどうなるか。音速の衝撃に人は耐えられないんだよ! 当たったのは左足。まともに吹っ飛んだ。というより吹き飛んだ。原型が残ってない。
一方、ディーの能力だろうか、晶龍の腹が脹れたと思ったらそのままパンッと音がして弾けた。恐らく膨張を内部に使ったんだろう。そんなことも出来たんだ。外皮は龍だから強かったんだろうけど、内側はそうでもなかったみたい。当然ながらお腹から血がドクドク。
「死亡確認!」
いや、アンヌ、ワクワクした顔で死亡確認してないでちゃんと蘇生させろ! アミタ、生命維持装置を二人分頼む! 直ぐに連れて帰るから!




