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第三百八十五話:槿はムクゲと読みます。どこかの国花ですね。

この物語はフィクションなので、実際の国と類似するものはありますが、あくまで空想の範囲内です。

「あ、あ、あ、歩美さん」

「ひゃい!?」


 ぼくは身体を起こすと手を両肩に置いた。とりあえず正気に戻らなきゃ。ううっ、正面から見るとバストの迫力がすごい。ぼくは今まであれにかおをうずめていたんだなあ。


「あ、あの、無重力、を、止め止め止め止めて、みん、なを、床に戻してくだくだ、さいっ」

「え、え、ええ〜?」

「思い、通りに、なら、ならないっ、からって、ぶち、壊しちゃ、ダメ、です」


 国際会議というのは話し合いの場である。武力を示すのは、話し合いの場に立つ資格がある、みたいなものだろう。口先だけで「仲良くしよう!」って言ってくる人間にろくな奴は居ない。


「え? でも、私、みんなが、ダメって、言うから」

「いや、まままだ、結は、とととって、ないですよね?」

「はい、そう、ですね、まだ、分からない、ですね、ごめん、なさい」

「主!」

「アルタイル、退きなさい。重力を、徐々に、戻し、ます」

「わかりました。おい、聞いただろう。退いてくれ、アリス」

「主様、どうします?」

「退きなさい」

「はぁい」


 アリスとアルタイルの身体が離れた。そして歩美さんはまた何かパネルを操作する様な手つきをした。すると、宙を浮かんでいた奴らの身体が徐々に下に降りて来た。


「ぶっ、ぶっ、無礼な! 貴様の国など、到底この華国が認めん! 余の国もそれで良いな!」

「いいわけないでしょう。いい加減にしなさい! 重桜華内で強権発動するのは自由だけど、我々ペレンノール古王国勢は断固として拒否するわ!」


 顔を真っ赤にして叫ぶ華国の皇太子らしき人物。まあお山の大将なのは間違いない。それに反論したのはラケシス様。他の三人も強く頷いている。ペレンノールは磐石だなあ。まあラケシス様のおっぱいに負けたのかもしれない。男はおっぱいに弱い人が多いって言うし。


「この際故言わせていただくでおじゃる」


 口を挟んできたのは桜国の人。


「重桜華と言えども昔の話。いつまでも盟主ヅラをされては困るのでおじゃる。桜国は華国には従いませぬ」

「なんだと? 貴様ら桜国が我が国にした裏切り、忘れるつもりか?」

「裏切り裏切りと、もう百年以上前の話でおじゃるよ。我が桜国で当時の責任者は既に誰も存命しておらぬ故」

「そ、それは、あれだ。永遠に語り継ぐ原罪というやつよ。のう、槿国きんこく

「全くもって華国の陛下の仰る通りで。桜国のごとき裏切り者の罪は未来永劫に渡って謝罪されるべきですぞ!」


 あ、なんか一国増えた。ええと、誰? 槿国きんこく? なるほど、華国と桜国の間にあった地域が独立した国なのね。で、華国の腰巾着みたいになってんのか。華国とは地続き、桜国とは内海で隔たれている。だから桜国には強気なのか。面倒な国だなあ。


「茶番は帰ってからやってもらいたい。帝国本国は賛成なのですが。アイゼンガルド、説明して貰えますか?」

「そもそもあなたの様な女性に決める権利などある訳が無いのです。我々は女などの下にはつかない。皇太子殿下がお出ましになれば貴様など!」


 どうやらデオルは皇太子殿下と繋がっていたみたいだ。というか男性至上主義? ええと、ぼくはパペットを多数従えている男だからまだ認められたのか。


「……帝国の恥ですから黙っていようと思いましたが。リオン皇太子殿下でしたらもう既に皇太子から廃嫡された頃でしょう」

「はっ!? な、何を馬鹿な……」

「当然でしょう。同盟国たるメイデンにケンカを売ったのですよ? 皇帝陛下の意に背いて。皇太子だからこそ厳しく処断されるに決まっているではありませんか」


 デオルは歯をガタガタ鳴らしながら呆然と呟く。


「信じられん……」

「だいたい、十七皇妃の娘でしかない、継承権で言えば二桁どころか三桁に届きそうな私が派遣されてきたのは何故だと思いますか? 私が、護様の婚約者だからです!」


 あー、なるほど。そういう意図なのか。皇帝陛下としては暗殺がリオンの独断専行だと強調して、ぼくとの対決を避けたいんだな。


「主様の婚約者とか認めてないから!」

「そうだそうだ、ダーリンはボクのものだ!」


 そこの約二名は話がややこしくなるからちょっと黙ってて。


「いや、待ってくれ。その、この都市の支配権がどうとか言ってなかったか?」

「そ、そうだ。戯言と思っていたがまさか……」

「我々はどうなるのだ?」

「お話を聞いていただけるのでしたら、都市の運営はお任せするのだよ」


 ここまで黙っていたエイクスュルニルが喋った。いや、お前本当に何しに来たのか分からなかったけど、もしかして交渉役だったのか?


「たかが一国ですらない奴らの」

「それを言うならあなたがたこそ、一国どころかこの街の代表ですら無くす事も出来るのだがね?」

「ぐぬぬぬぬ」


 うーん、とりあえずは喧嘩にならずに良かった、のかな? まあ国なれなくても何とかする秘策はある。

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