第三百八十四話:それは初めての愛の始まりでした(誤解)
前半に比べて後半のグダグダさよ……
「な、な、なんだ、これは!?」
「身体が、宙に……うわぁ!」
「バカな、足がつかない……なんなのだ!」
三ギルド長がみっともなく叫ぶ。
「なんじゃなんじゃ! 朕をどうするつもりじゃ! これ、爺、何とかせい!」
あ、一人称が朕なんだ。もしかして皇帝? あ、いや、華国って皇帝って言うのかな? 皇帝って帝国のトップの事だよね。まあ古くは中国の三皇五帝から来てるって話だけど。三皇が神様で五帝が聖人だから皇帝は神であり聖人って事? いや、秦の始皇帝を初めとして聖人ってのは見当たらないよね。
「これは……まことに不思議でおじゃるな」
桜国の人たちは呆然と見上げている。うん、あの人たちは賛成に回ろうとしてたっぽいもんね。
「あ、あの、歩美様、こ、これは一体……」
「ごめんなさい、ラケシス様。せっかく、頑張って、くれたのに。でも、いいんです。私は、大丈夫、ですから」
「何が大丈夫なのか全く分かりません! ええと、このまま地面に叩きつけるおつもりですか?」
ラケシス様の言葉に、宙に浮いている奴らが一斉に息を呑んだ。あー、まあ確かにそうだよね。オフにしたら地面に叩きつけられて、丈夫じゃない人は死んじゃうかも。まあ打ちどころ悪ければだけど。
「安心してください、ラケシス様」
おっ、やっぱり歩美さんはそんな事するつもりは無いみたいだな。うんうん、優しい心の持ち主で
「そんな確実性のない手段、使う訳ないじゃないですか」
そう言ってクスクス笑い始めた。え? え? え? 歩美さん!?
「この無重力っていうのは宇宙と言って、まあ話しても仕方ないですね。ええ、ここを宇宙空間にしてしまえば空気も無くなりますし、生きていけなくなりますよね?」
わー、歩美さんが壊れてる。やばい、やばくない? アルタイルとエイクスュルニルは……あ、ダメだこいつらは。歩美さんの言うことには絶対っぽい。
「歩美お姉ちゃん、落ち着いて!」
ユーリが青い顔をして歩美さんに縋っている。って事は本気で言ってるんだな。脅しじゃないのか。何とかして止めないと。止めないと、止めないと。ええとええと、考えろ、ぼく。
「宇宙空間には空気がないので音も伝わりません。つまり、悲鳴すら聞こえないんですよ。面白いですよね?」
「あ、あ、歩美さん!」
ぼくは声を在らん限り叫んだ。ぼくの大声に歩美さんがびっくりしてるみたい。構うものか。やらなきゃダメなんだ。歩美さんに業を背負わせたくない。
「護さんは待っててくださいね。直ぐにこのゴミを片付けますから」
「ええと、ええと、ええと、えいっ!」
考えたけど何も思いつかなくて、腕を両方前に突き出した。止めたかったんだよ、何とか。で、伸ばした腕なんだけど、手のひらが捉えたのは柔らかな膨らみ。歩美さんの垂れそうなだらしないおっぱいだった。
「えっ? あの、ひやああああああ!」
歩美さんが悲鳴をあげた。会場全体が静まり返った。そして最初に動きだしたのはアルタイル。
「よくも主を。許せん!」
ぼくに向かって掴みかかってくる。あ、これ、死んだかな?
「主様!」
その一撃を受け止めたのはアリス。まあぼくの後ろに控えてたから行動は早かったみたい。
「アリス、アルタイルを止めといて」
「むぅ、なんで歩美のおっぱい揉んでるのかは分からないけど、主様はちゃんと守る!」
「くっ、どけ! 私とお前がやり合ったら主にまで被害が及ぶ」
「退かない。それにあんた一人で室内なら私の勝ちだよ」
「この部屋がダンジョンになってるのを忘れたか。セイバートゥースやレッドメットが来れば……主、二人を呼ん」
そこまで言ってポカーンとするアルタイル。歩美さんはぼくに押し倒されていた。いや、ぼくが押し倒そうと思ったんじゃない。多分、歩美さんがぼくから離れようとして後ろにつまづいただけだ。
そして前のめりにおっぱいを触っていたぼくがどうなるかと言うと、バランスを崩して一緒に倒れ込むのみだ。ぼくもバカじゃない。これ以上歩美さんにセクハラは出来ない。ほら、後で何言われるか分からないし。女って怖いから。だから両手を挙げて倒れ込む。痛い方がマシなんだよ。嫌だけど。
ふにゅう。
顔面に何やら柔らかいものが押し付けられた。なんか「ひゃうっ」って歩美さんの悲鳴が聞こえた気がした。どうやら床ではなく、何か柔らかいものの上に倒れ込んだ様だ。
ここでクイズです。この場にある「柔らかいもの」とは一体なんでしょう。
1.おっぱい
2.バスト
3.ふたつの胸の膨らみ
って全部一緒じゃないか! これは、もう、どうしようもなく、ぼくの、人生が音を立てて崩れていく感じ……ダメだ、早く退かないと。
「はぁん」
いや、そんな色っぽい声出さないでください。ぼくが悪いんですけど。なんか悪いことしてる気分に……あ、してるのか。




