第三百八十話:選手(参加国)、入場
一日は寝正月してました。初詣どうしようかなあ。
セントラルタワー内の真ん中よりも少し上に位置する大会議場。ここにぼくらはやって来た。入場には順番があって、帝国が一番らしい。三大国の中で唯一現存してるからなんだと。なお、版図は小さくなってるらしい。なので、一緒には来たものの、アーニャたちが先に入場して行った。ぼくらは扉の前で待つ。
次に来たのはどう見ても中国っぽいやつ。いや、今の人民服とかじゃなくて、隋とか唐とかそんな辺りの格好。女性の服はチャイナドレスじゃないのかと少し残念に思う。チャイナドレスはそもそもモンゴルのデールって衣服が元になったっていうからね。
「見慣れん顔じゃな」
行列の中程を輿に乗って運ばれていた少年がぼくらに声を掛けて来た。ううん、これは挨拶した方がいいのか?
「おい、貴様ら、我が華国の使節団に礼のひとつも無しか? 無礼なことよの」
やっぱり華国か。そんなことだろうと思ったよ。こっちも一国の君主である以上、媚びたりする気はない。
「ぼくたちはこの度加入する、メイデンのものだ。華国というのは初めて聞いた。まあよろしく頼む」
「貴様ら、どこまで無礼な。新参者といにしえよりある我が華国と、どちらが上か分かっておらんのか?」
「さあ、どちらが上かなんてあまり興味無いね」
「ふん、覚えておけよ。会議が終わったあとに
存分に相手をしてやる」
どうやらこの場では許されるみたいだ。ふうやれやれ。あ、メイデン? ええ、そうですとも。昨日の晩に徹夜する勢いで考えたぼくたちの名称ですよ! ほら、アイアンメイデンってあるじゃん。鉄の処女。なんか良いよね、響きが。いや、元はドイツだからアイゼルネ・ユングフラウっていうらしいんだけど。ヴァルハラとどっちにするか迷ったんだけど、ヴァルハラだとワルキューレの人数分パペット作りたくなっちゃうし。
とか言ってたら今度はちょんまげこそしてないが、腰に刀を差してる集団が来た。今度は輿じゃなくて籠だね。これは桜国かな?
「止まるでおじゃる」
おじゃる!?
「はっ!」
籠を担いでいた男たちが籠を台のようなものの上に置くと、そこからお公家様が現れた。いや、お公家様なんだよ。おしろい塗りたくってて、眉はいわゆる殿上眉。雛人形を思い出してもらいたい。
「そちたちが帝国と王国の推薦するという国かの?」
「ええ、まあそうですね。メイデン、と申します。そちらは?」
「ふむ、これはしたり。身共らが先に名乗るのが礼儀であったでおじゃるな。桜国の使節団である。そして我が代表たる安夏宮成行親王でおじゃる」
身分は高いはずなのに低姿勢な人だ。って親王? 日本だと天皇家の一族じゃないか。この世界にいるのが天皇家なのかは分からないけど。
「そ、それはご丁寧にどうも。籠沢護と申します」
「ほほう? 名前の響きが我が国のものに似ておるが……はて、籠沢などという氏族は聞いたことがないでおじゃる」
「まあ、繋がりは分かりません。ぼくは桜国に行ったこともありませんので」
「そうか。まあよい。そのうち遊びに来てたもれ」
そう言うと殿上眉さんは籠にのりこみ、会場へと入っていった。はあ、疲れた。なんかこんな感じで続くのかね?
「あら、護さんではありませんか」
声を掛けてきたのはラケシス様。お隣では歩美さんが居心地悪そうにしている。あ、小さく手を挙げてくれた。
「護!」
後ろの方からユーリが走ってきて飛びついてきた。こらこら、お行儀が悪い。頭は撫でてあげよう。
「では、歩美さんたちはこちらで。護さんも後ほど」
そのままアニマランドの面々を残して去っていった。歩美さんはぼくの隣に立った。
「あの、こんにちは、いい天気、ですね」
塔の中だから天気とか割とどうでもいいんじゃないかと思うけど、いい天気には違いない。
「そうですね」
「私、決めました。ちゃんとやりきります」
「そうですか」
何をやりきるかは分からないけど、国の力を見せる時なんだろう。ぼくらはどうするかな。会議場を蹂躙? あ、さすがにそういうのはなしかな。
「おやおや、皇女殿下には振られたのですかな? 新しい女を連れていますね」
デゼルである。という事は話してる間にアイゼンガルドまで来たらしい。ティリス? もう通り過ぎたってさ。
「あの、護さん、このイケメンは?」
こしょこしょと歩美さんが耳打ちで聞いてくる。耳打ちし返したら、ひゃうっとか声をあげられた。ぼくなにも悪いことしてないのに。
「帝国の属国でアイゼンガルドの人です」
「そう、ですか。それで、護さん、との、関係は?」
「え? 帝国で繋がってるとしか」
「繋がってる!? あ、あの、あの、護さん、その、どちらが「前」なんでしょうか! 私的には強気のスカしたキャラは受けに回りやすいって思うんですけど!」
「え? 前? ううーん、どうなんだろう。ぼくらが新参者だからあちらが前なんじゃないですか?」
なんかとてもガッカリされた雰囲気だ。ええっ、ぼくの方が前なの?




