第三百七十七話:しぬのはこちらだ!
トラウマ直撃
向こうの魔法師団の連中の火炎竜巻。凄まじい大きさだ。知ってる、この後に烈風正拳突きが、って魔法師団だからそれは無いか。やるなら是非見たいところだが。
そしてその迫り来る火炎竜巻にアスカが魔法を放つ。ダークウォーリアーの影すら焼き付けてしまった脅威の熱波が襲い掛かる。熱波は火炎竜巻を呑み込んで、消えた。あ、魔法師団に撃った訳じゃなかったのね。
って、結界にヒビ入ってないか? ほら、あれ、どう済んだ、アスカ?
「問題ない。結界発生装置が貧弱なだけ。あと一、二発ぶっぱなしたら完全に崩壊完了」
「崩壊させるんじゃねえ!」
自信満々に親指立てながら言うな! いや、もう、本当にどうすれば。
「むう、直すならアミタに言って新しいの作ってもらえばいい。付与はすぐ出来る」
あー、アミタがやるのね。まあいいや。それだとこのシーファイフの責任者にも話を通さないといけないんだけど。
ふと、アイゼンガルドの方を見ると、魔法師団は震えており、デオルは腰を抜かしているようだ。
「まだやりますか?」
こう聞いたら凄い勢いで首を横に振られた。まあこれで向かってくるような根性があるなら帝国傘下に入ってないか。
「ではすいません。ここの結界を治したいのでシーファイフの責任者に会わせていただけますか?」
赤べこみたいに首をぶんぶんさせた。ちょっと脅かし過ぎた? よし、じゃあ交渉かな。えっ? 他のメンツ? うん、会いに行くのは明日だね。今日はアインの作った料理を……ってそういやアイゼンガルドの料理じゃん! しまったなあ。このまま有耶無耶にしてしまえば良かった。
帝国傘下の国々にアイゼンガルドとの顛末を説明したら全員が服従を誓ってきた。いや、君らが服従するの帝国でしょ? 横盗りしたら皇帝陛下に何言われるか。
翌日、デオルがぼくたちの部屋の前に迎えに来てくれた。この後、シーファイフの代表と会うのだ。んで、連れて行かれた先は議会場だった。そこには何人もの人が座ってこっちを見ていた。なんか注目されてる? ううっ、居心地悪いというか気持ち悪い……ゴーグル越しでも糾弾するようなこの雰囲気は苦手だ。
「アン、ヌ」
「はいなんでしょうか……チーフ?」
「すまんが戻って……ううっ」
ぼくの意識があったのはそこまでだった。次に目覚めた時、ぼくはアンヌの部屋のベッドに寝かされていた。ぼくの部屋ですらないだと? ちなみになんでわかるのかと言うと、アンヌの部屋のベッドは病院のベッドだからだ。つまりはそういう事。高さや姿勢の調整できる医療用ベッドなのだ。
「ここは」
「私の部屋です、チーフ。バイタルは正常ですがご気分はいかがですか?」
「そうか、すまんな」
「戻りましたら部屋で泡吹いて気絶していらっしゃいまして、女神の分身体がうるさく喚いておりました。五寸に刻むところでしたが」
あいつあれでも女神だから恐らく刻んでも平気だと思う。多分本体がどうにかならん限りは復活するものと思われる。
「皆を呼んでまいります」
「ああ」
パタン、とドアが閉まった。あの、横開きなのになんでパタンって音がするんだ? まあその辺は疑問点ではあるがどうでもいい。
「主様、主様、主様ぁ!」
真っ先に駆け込んできたのはアリス。おい、部屋の主のアンヌは一緒じゃないのか?
「うるさい。聞こえている」
「主様……良かった。じゃあちょっとあの街灰燼にしてくるね」
「おいおい待て待て。そんなことするんじゃない」
「え? だって主様が倒れたんだよ? 私たちパペット全員で滅ぼすべきでしょ?」
平然と宣言するアリス。こりゃどうしようも……いや、待てよ。
「それはいいからこっちに来い」
「なんですか?」
ぼくは一か八かと近寄って来たアリスを抱きしめた。
「ひゃう!?」
「心配掛けて済まなかった。もう大丈夫だ。ありがとな」
「主様、かひゅう」
今度はアリスが倒れたぞ? こういう場合はアンヌなのかアミタなのか、どっちなんだ?
「チーフ、そろそろ姉様は大丈夫……お邪魔しました」
「おい、ちょっと待て、アリスが倒れて」
「寝てる間でも本懐を遂げたら姉様も本望だと思われます。避妊は必要ないので御存分に」
「人の話を聞け!」
結局、必死にアンヌを引き留めて、診察してもらったら尊死とか言いやがった。単なる気絶だと。
んで、ぼくが倒れた後のことを聞いた。アインがぼくの分身体を支えて、アンヌに渡し、こっちの家に戻ってくる。アインは懐から銃を取りだし、アスカは詠唱を始め、アミタが武器を取り出し始め、アカネが殺気を撒き散らした。止めたのはアリス。
「待って、みんな。後で主様が怒るかもだかは手は出しちゃダメ!」
その一言で議会は壊滅を免れた様だ。いや、さっき灰燼にするって言ってたアリスと同一人物とは思えないな。




