第三百七十六話:メルトダウン、あいてはしぬ
死なない、よね? (震え)
シーファイフの闘技場。日頃はここで見世物の闘技が行われるらしい。剣闘奴隷とかかな?って思ったら普通に武術大会とかそういう催し物らしい。人々は娯楽に飢えているのか。
で、ここを選んだのは魔法障壁があって、でかい魔法を使っても他に被害が及ばないかららしい。なるほど、そういうのもあるのか。これはうちの周りだと出来ないから、歩美さんのダンジョンで出来ないか聞いてみるか。
そして青龍の方角……もとい、東側からはぞろぞろとアイゼンガルドの誇る魔法師団が入場して来た。その数二十人といったところだろうか。どいつもこいつも一様に黒いローブを着ている。なんだよ、制服なのか? スカートひらり翻しちゃうのか? いや、ローブはスカートじゃないか。
対するは白虎の方角……というか西側の入口からはぼくとアスカだ。他のやつ? まあアンヌなら回復魔法は使えるし、アカネも幻惑系ならいけるハズだが、アスカ一人で十分だろう。
「よし、じゃあ頼むぞアスカ」
「ご主人様、勝ったらマヨネーズの新しい料理が欲しい」
「マヨネーズは買ってやるから料理はアインに言え」
「ご主人様の言うことじゃないとアイン姉様は聞いてくれない」
「わかった。アインには言っておこう」
「頑張る!」
留守番してたアスカだが呼び出してしまった。まあ魔法ならアスカだよなあ。
「おやおや、そちらは一人か? 我が魔法師団の相手としては役不足も甚だしいな!」
役不足、というのは役の方が不足しているという意味なので、奇しくも正しい使い方をしているのだが、敢えて指摘することもない。そのまま流そう。
「我はアイゼンガルド魔法師団団長、ロベッツォ! 貴様も名を名乗れ。せめて墓標に刻んでやろう」
殺す気満々かよ。いや、殺すまでやるなよ。アスカには手加減しろって言ってやってんだし。
「私はアスカ。マヨネーズの使徒」
「マヨネーズ? なんだそれは?」
「至高の食べ物。一日三食マヨネーズでも構わない」
いや、さすがに普通の人はそれで飽きるしダメだからな? いや、マヨネーズだけ食べるんじゃないならいけるか?
「ふん、訳の分からん事を言いおって、幻惑しようとしても無駄だぞ?」
「幻惑? そんなことする必要を感じない。はっきり言うと雑魚」
「貴様! 直ぐにあの世で後悔させてやる!」
いやだから腕試しだから殺しちゃダメなんだってば。それを聞いてもデオルは何の注意もしない。やる気かな?
「ご主人様、後ろの方のやつらもう詠唱してる。魔力が揺れてる」
おおう、フライングまでやりますか。アスカは大丈夫なのか?
「問題ない。無詠唱の障壁でなんとでもなるレベル」
そうかそうか。じゃあ特に問題なさそうだし、始めてもらおうかな。ええと、審判は引き続きアーニャさんで。
「いや、皇女殿下はどうやらそちらよりのご様子。他の国のものに頼みましょう」
向こうの人の中から老年に差し掛かる一歩手前くらいの男が出てきた。どうやらどこかの王国の外交官らしい。ってそれは思いっきりそちらの味方では? まあいいや。
「では魔法師団対アスカ、始め!」
号令と共に魔法師団の先頭の奴らが詠唱を始める。と、同時に後ろから火矢が何本も飛んでくる。詐欺た魔技か?
「えれえれなむめいりん……」
それは版権的にまずいからやめろ! というか詠唱必要ないんだろうが!
「ちぇっ。〈反射障壁〉」
アスカが無造作に手を前にやるとそこに見えない壁が生まれて、激突した炎の矢が跳ね返っていく。それは相手の魔法師団の前列に降り注いだ。
「あちっ、あちっ、あちっ」
「うわっ、なんで!?」
「おい、狙うのは向こうだろうが! しっかりしろ!」
最後の奴、跳ね返したの見てないのかな? まあ詠唱中に目を瞑るやつとか居るよね。
魔法師団の奴らの詠唱が途切れた。今が攻撃のチャンスだ! ってあれ? なんでアスカは攻撃しないんだ?
「このままだとアピールが足りない」
いや、ガッツが足りないで行動できないってのは分かるんだが、アピール足りなくて行動しないってなんだよ。プロレスやってんのか?
「舐めやがって! 喰らえ、合体魔法、火蜥蜴旋風!」
凄まじい炎が巻き上がり、竜巻を伴ってこっちに向かってくる。これが戦術級魔法というやつか? 知らんけど。
「全てを焼き尽くす熱量、滅びの風、疾く忍び寄る死の足音、煉獄の業火よりも熱く、氷獄の底より冷たく、悪魔よりも無慈悲に、融かし尽くせ! 核融合爆発!」
アスカも詠唱してる? って、それ、ダークウォーリアーやった時のじゃねえか! おいおい、この辺一帯が焦土と化すぞ? ってまあ防壁あるなら大丈夫かな?




