第三十七話:どうする、処す?処す?
オリバーポーズにしようと思ったんですがフロントダブルバイセップスに。
バカどもの前にアスカが家から進み出た。
「なんだ貴様? 随分とおっぱいが大きいのう。そうか、この娘が詫びの品という事か?」
貴族には平民はモノと同じなのだろう。お前の感覚で物事考えるなよ。いや、パペットだからあながちモノでも間違いないのか? いや、それでもパペットはモノ扱いしたくない。
「今立ち去るならさっきの火炎球は不問にしてやる。そうじゃなきゃ皆殺しだ」
「この小娘が偉そうに! お前ら! こいつを捕らえて陵辱してやれ!」
「私を陵辱していいのはご主人様だけです」
しないからね!? 貴族の合図で数人の騎士が襲いかかってきた。危ないな。多分何とか出来るんだろうけどいざとなったらぼく……だとアレだな。分身体のぼくならまだマシかも。そうして見てるとアスカはボソッと何かを呟いた。
「揉ませろー!」
野獣の様な声を上げてアスカに飛びかかって行く。いや、剣は抜かないの?
「あばばばばば」
先頭で飛びついた奴が空中で静止するとそのまま地面に落っこちた。
「電磁網。当たると痺れて動けなくなる」
なるほど。つまりトラップカード発動!みたいな状態なのか。
「な、なんだと!? これでは近付けん……ならば魔道士部隊よ、こやつに火炎球を打ち込め!」
「はっ!」
今度は後ろの魔法兵達が次々と詠唱して火炎球を撃ち出した。スタンネットには干渉しないようでそのままアスカに着弾した。おいおい!?
「バカね。この程度の火炎球が効くわけないでしょ」
煙が晴れたあとには無傷のアスカが立っていた。原理はよく分からんがどうやら無事だったらしい。というか効かないって分かってたんだろう。
「さあて、じゃあこちらの番ね。攻撃されたんだから反撃するのは構わないわよね?」
アスカはニヤリと笑って詠唱を始めた。
「炎獄の使徒、炎獣の牙、炎鳥の翼、深淵なる炎を以て我が敵を焼き尽くさん。そは腕、炎神の腕! 烈火豪炎波!」
周囲の温度が幾らか上がった気がした。いや、外から熱風が吹き付けて来るからね。家の中は快適な温度に保たれたままです。
アスカの背後から二本の炎に包まれた腕が伸びてきてその腕がフロントダブルバイセップスからモストマスキュラーに移行する感じで……ああ、うん、上に振り上げた腕を前で組むように下ろしたんだけどね。すると両腕の間に熱気の波が生まれて、騎士も魔道士も貴族も呑み込んだ。
「ぐはぁ!?」
「熱い、熱いいいいい!」
「息が息が出来ん、助け……て」
熱波と温度とそれに伴う呼吸困難。一粒で三度美味しい。特に騎士なんかはフルプレートだから余計に熱気が、ねえ? あ、貴族が気絶してる。
「やってられるかあ!」
「死ぬ、死んでしまう!」
騎士も魔道士も這う這うの体で逃げ出した。貴族を取り残して。
「これ、どうしよう?」
アスカが途方に暮れていたところにアリスが戻って来た。
「アスカ、急に居なくなって戻ってこないから迎えに来たわよ」
「お姉様、ちょうど良かった。こいつ家に運んでください」
「えーと、どうしますかご主人様?」
「あー、うん、家に運んで。尋問しよう」
アリスはひょいとかつぎあげるとそのまま家に戻って来た。今日はアヤさんが居なくて良かったよ。
さて、では尋問といこう。まあ尋問するのはぼくじゃないんだけど。
「起きなさい、ブタ」
「だ、誰がブタだ!」
「ブタの方が食べられるからマシなのよ、このクズ!」
「なんだと!? おい、貴様らこの縄を解け、今ならそこの筋肉以外をワシの妾として差し出すだけで許してやる!」
「私以外ってのはどういう意味だ? あぁん?」
「お断りします。まだご主人様に奉仕もしてないのに」
「私の身体を好きにしていいのはご主人様だけ」
「せやなあ。ウチも旦那様以外は嫌やなあ」
君たち、そんな事言ってる場合でもなくてね? 今は尋問のお時間ですよ?
「あ、せやせや。ちょお試したいクスリがあんねんけどな?」
「それは最終手段にしましょう」
「喋らせる魔法は持ってない」
「はっ、もしかしてご主人様が私を抱いてくれないのは筋肉だから!? でも筋肉がなくなったら私が役立たずに……どうすれば」
アリスだけなんか思考があさっての方向に行っちゃってるのは分かる。まあアリスに関してはお金溜まったらもっと可愛い外見に変更してやるから。
「でしたらまずは指を一本一本落としていきましょうか。二十本あるから二三本は大丈夫でしょう」
「アイン姉さん、麻酔薬出そか?」
「それでは拷問……尋問になりません」
そしてアインが口元だけ歪めた笑みを浮かべて貴族に近付くと貴族はなんでも喋るから許してくれと命乞いを始めたのでした。




